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第149話 あ! 野生の邪神がとびだしてきた!

多分本編に関係ない(女神、ルファスどちらとも全く因縁がない)キャラとしては最強。いあいあ。

 深海というのは同じ惑星の上でありながら謎と神秘に満ちた世界だ。

 それはミズガルズだけではなく、この世界よりも遥かに科学が進んだ瀬衣の故郷、地球においても未だ全貌が解き明かされていない。

 深海に住む生物は人類がよく目にする魚などと異なり、奇妙で独特な進化をしている場合が多い。

 頭部が透明になっている魚。七色に輝くクラゲ。

 蜘蛛に酷似した外見の生物。

 捕食の際に口が割れたかのように大きく開く異形の魚。

 身体が透明になっているイカ。

 絶対零度でも死なず、殆どの生物が死ぬほどの放射線を浴びても動じず、水分のない乾燥状態でも十年は生存し、真空中ですら平然と生き延びる事から宇宙空間でも生存可能とまで言われる生命体。

 これらはミズガルズのマナで変異した生物ではなく、地球にも実在する生物達である。

 そんな元々『こいつ等実は宇宙から来たんじゃないだろうな?』と言いたくなる異形達がマナで変異し魔物化してしまえば、それは控え目に言っても化物にしかならないだろう。

 そんなクリーチャー達が暮らす世界こそがミズガルズの深海であり、そのクリーチャー達の特徴と人間の姿を併せ持つ者こそが『深き者』達であった。

 一言で言えば異形。どう遠慮して言葉を選んでも、少なくとも可愛いや格好いいという言葉は到底出ないだろう。

 目にするだけで正気を削り、相手を恐慌状態に陥らせかねない、相手に恐怖を与える為に悪意を持って変異したとしか思えぬ怪物達。

 しかしそれを前にするのは感情無きゴーレムと地獄の魔王。そして神の子だ。

 相手の外見が怪物染みているからといって一々動揺するような軟弱な精神など持っているはずもなく、鎧袖一触で蹴散らしながら奥へ奥へと進んでいった。


「醜い……何と醜い生物達なのだ。

同じ海で生きる者でありながら、こうまで違うとは嘆かわしい。

余の視界にそのおぞましい姿を晒すな、下郎共めらが」


 戦闘の全てをオルヴァールに任せて自らはひたすら仁王立ちしているだけのピスケスが嫌悪感を隠しもせずに侮蔑の言葉を吐いた。

 深き者達がそれに怒り、解読不能の言語を発しながら一斉に突撃を試みる。

 だがそれに合わせてリーブラがアサルトライフルを掃射し、一匹残らず駆逐してしまった。


「この先2㎞地点に巨大な生体反応を感知しました。レベル……910以上。

数秒後に接触します。準備はよろしいですね?」


 リーブラの『サーチ・アイ』はルファスの『観察眼』と同様の効果を持つスキルだ。

 レベルに倍以上の開きがあれば全ステータスを開示し、自らのレベル以下かつ半分以上ならばレベルとHP、SPだけを読み取れる。

 そして相手のレベルが自らを上回っている場合は何も見る事が出来ない。

 今、リーブラは既にサーチ・アイを発動しているがその眼には敵のレベルもステータスも表示されていない。

 彼女のレベルはレオンを除けば十二星最大の910を誇り、その彼女に見えないという事は即ち、敵のレベルが910を上回っている事を意味していた。


「強敵だな。今の世界にまだそれほどの者が残っていたとは……」

「深海の奥底に潜んでいたからこそ、女神にも魔神王にも、そしてマスターにさえもその存在を感知されなかったのでしょう。マスター不在の二百年の間にこれが地上に進出していれば、あるいはミズガルズの勢力図は今とは全く異なる物となっていたかもしれません」


 レベル910以上、というのは疑いの余地なく災害級の化物だ。

 少なく見積もっても数日あればミズガルズを平らにしてしまえるだけの戦闘力を有しているはずだ。

 それがこれまで一切行動せず、ずっと海で小競り合いだけをしていたというのは陸の者達にとっては幸運以外何者でもないだろう。

 これを抑えていたというだけでも、ある意味ピスケスはこれまで世界を守っていたと言えなくもない。


「ふん、レベルなど所詮は強さを数値化したものに過ぎん。

そのようなもの、余は最初から何の指針にもしておらんわ。

母は何かにかけて細かく決めようとするが、それだから失敗ばかり繰り返すのだ。

物事など単純でいい。強ければ強い、弱ければ弱い。それだけであろうが」


 レベルの上では少なくとも110以上の差が存在する。

 この差は決して小さなものではなく、三対一の優位を覆されかねないほどだ。

 だがピスケスはまるで動じる事なく、不敵に笑った。


「レベルが900だろうが1000だろうが知った事か。

最後に勝つのは余だ。天がそう決めておるわ」

「相変わらず根拠のない自信に満ちていますね」

「根拠ならばある。それは余が偉大なる海の王にして神の子であるという事だ」


 ピスケスは腕を組んだまま上へと視線を向けた。

 それに合わせてリーブラとアイゴケロスも上へ顔を上げ、構える。

 その先にいるのは……山のように巨大な、異形の怪物であった。

 蛸のような頭部からは無数の触手を生やし、鱗に覆われた腕の先には鋭利な鉤爪。

 背中からはアイゴケロスのそれと似た蝙蝠のような羽を生やし、全身は緑色に輝いている。

 口に当たる部分は上下左右に裂け、内部にはギッシリと牙が生え揃っていた。

 数十、あるいは数百もあるだろう目玉は何の規則性もなく顔から飛び出しており、ギョロギョロと周囲を見回す。

 やがてその眼が一斉に、ピスケス達を視界に捉えた。


「……■■■■■■■■■■」


 異形が何か、言葉とも音とも形容出来ぬ、それでもあえて分類するならば恐らくは『声』だろう物を口から発した。

 しかしそれを言語化する事は出来ない。

 少なくとも人類の発声器官では再現出来ぬものであることは間違いなく、文字にする事もまた不可能だ。

 その声を聞き、ピスケスが乗っていたオルヴァールが突如として恐慌状態に陥り、激しく暴れ出す。

 ただ声を聞いただけ。それだけの事でレベル500にも達する魔物が正気を失い、恐怖に支配されてしまったのだ。

 リーブラは即座にオルヴァールに麻酔弾を発射して沈静化させ、銃口をそのまま怪物へと向ける。


「気を付けて下さい。ただの声ですが相手の正気を削る効果があるようです。

アイゴケロスと似た能力のようですね」

「フン、小癪な」


 精神操作ならばアイゴケロスが最も得意とする領分である。

 アイゴケロスは異形に対抗意識を燃やして巨大化し、禍々しい悪魔の姿を顕現させた。

 山羊の眼が輝き、異形の怪物を狂気へ誘うべく精神操作を施す。

 だが怪物はまるで動じず、逆にアイゴケロスに対して精神異常をかけるべく重圧を放った。

 向かい合う魔王と邪神。生息圏こそ陸と海で異なるが、どちらも等しくマナの濃度が高い場所で誕生し、通常とは異なる変異をしてしまった魔の極地だ。

 二体が放つ波動だけで海が黒く染まり、付近数キロに生息していた魚達が正気を失って悲鳴や狂笑をあげながらショック死していく。

 遠くを泳いでいた男人魚二人がゲラゲラと笑いながら互いに武器を突き刺し合って絶命し、蛇のように長い胴体を持つ魚は自らの腸を食い破って息絶えた。

 存在するだけで災禍。自らが手を下さずとも狂気へ誘われた者は自滅へ向かう。それこそが邪神であり、魔王だ。悪意の体現者だ。

 だがその中心にいるアイゴケロスと邪神自身に対しては何の影響も出てはいなかった。


「予想は出来ましたが精神操作は何の効果もないようですね」


 リーブラが腰の砲門からアンカーを射出した。

 狙いは胴体。その中でも特に重要度の高いと判断される器官を内包している部分だ。

 リーブラの眼はまるで物質を透過するように――地球の技術で例えるならばレントゲン写真のように邪神の内部を鮮明に視認し、頑強な皮膚に守られている内部を暴き出す。

 内臓の形状も位置も滅茶苦茶で、地上のどの生物のデータとも一致しないが血流の動きなどからどれが重要な器官なのかくらいはかろうじて判別出来る。

 放たれたアンカーはさしたる妨害も受けずに突き刺さり、超音波を流し込んだ。

 邪神の身体がビクンと反応し、恐らくは悲鳴だろう音を発する。

 しかしダメージにはなっても致命傷には程遠い。

 邪神はリーブラを見ると、頭部から生えている触手を一斉に伸ばして反撃を試みた。

 リーブラの眼は即座に敵の攻撃速度を分析し、回避率を弾き出す。


(推定速度、マッハ4万……回避率30%……)


 触手の一本一本がまるで意思を持つようにリーブラへ殺到する。

 リーブラはそれを回避に専念する事で直撃を避け、更に攻勢へと転じた。

 背中に付けられたアストライアMの翼を切り離し、八枚の翼を刃へと変えて射出したのだ。

 八枚の刃はそれぞれが自らの意思を持つように動き、回転しながら次々と触手を切り裂いていった。

 回避し切れない触手だけを切り裂き、アイゴケロスやピスケスの回避をも助けるが、触手のうちの一つが翼に命中して一枚破損させてしまった。

 翼が一枚欠けた事で防御に隙が生まれ、そこに殺到するように触手が飛び込む。

 だが、それらはリーブラに届く前にアイゴケロスが薙いだ鎌の一撃で悉く切り裂かれた。

 その隙にリーブラは翼を背中へと戻し、今度はピスケスが攻撃へと転じた。


「跪けい、下郎!」


 ピスケスが消えたかと見紛う速度で邪神の上へと移動し、三叉槍を上段から振り下ろす。

 一撃で邪神の頭が割れ、後方の空間すらも切り裂いて海底に一直線の傷を刻んだ。


「フハハハハハ! どうした、その程度か。

手応えがないぞ、下等生物!」


 ピスケスは確かな勝利の予感に高笑いし、しかし次の瞬間その笑みは凍り付く事となった。

 確かに分かれた頭部。切断された頭。

 それが急速に再生し、切断面から肉が一瞬にして盛り上がったのだ。

 それもただの再生ではない。斬られた部分同士が結合するのではなく、切断面から新たな肉が生えて復元した事で頭が二つに増えてしまったのである。

 よく見ればアイゴケロスに切られた触手も同様に枝分かれし、数を増している。


「■■■■■」


 邪神が触手を蠢かせ、三人を同時に弾き飛ばした。

 海底に叩き付けられながら、すぐにリーブラは機関銃を掃射し、アイゴケロスは魔力弾を放つ。

 回避する間も与えずに直撃し、胴体の一部が弾けて細切れとなる。

 だがその傷も瞬く間に修復され、さらに本体から離れた肉片までもが異なる生物へと変異して獰猛な鮫と化した。

 鮫は迷いなくリーブラへと向かい、片側の翼へと喰らい付く。

 これにリーブラも素早く対応し、鋼の拳で鮫の頭を破砕した。


「……アストライア・タイプMの破損度22%……速度、15%低下」


 先程の破損と合わせてこれでアストライアMの翼は既に二枚が砕けてしまっている。

 リーブラ本体は未だ無傷に近いが、機動性を失うというのはかなり痛い。

 特にこの水中戦でアストライアMを失ってしまえばリーブラは自重によって海に沈むしかなくなる。

 これ以上のダメージを受けるのはかなり危険だ。


「■■■■■……」


 邪神が何かを呟き、目がギョロリと蠢いた。

 瞬間、三人を襲ったのは凄まじいまでの圧力だ。

 まるで見えない手に押し潰されているかのように、圧迫される。


「ちいっ、小賢しい。周囲の水を操り、我等の周囲へ密集させているな。

このまま押し潰す気か……!」


 ピスケスが顔を歪め、三叉槍を投擲した。

 だが放たれた槍は邪神に届く事すらなく、途中で圧壊してしまう。

 しかしそちらを破壊している隙にリーブラの肘から分離した拳が邪神を殴り、体勢を崩した所にアイゴケロスの鎌が突き刺さった。

 この鎌には即死効果が付与されているが、残念ながら当然のように通じていない。

 しかし構わぬとばかりにアイゴケロスが鎌を振るい、真一文字の傷を刻んだ。


「再生前に畳み掛けるぞ。続け!」


 アイゴケロスが両手にマナを集め、得意技であるデネブ・アルゲディを放った。

 一撃で邪神の胴体を抉り、それに続くようにリーブラがアンカーを放つ。

 頭部に刺さったアンカーが超音波を発して内部を破壊し、更に畳み掛けるようにピスケスが跳躍した。


「偉大なる海の王たる余の前でお前如き醜悪な化け物がいつまででかい面をしているつもりだ。

身の程を弁えよ……下郎!」


 ピスケスが吠え、口元が大きく裂けた。

 全身からは鱗が生え、秀麗な顔立ちは一瞬にして怪物のそれへと変貌していく。

 頭からは角が生え、その体躯は邪神すらも凌駕してどこまでも伸びていった。

 それは蛇……否、龍であった。

 この世界において神の代行者とされる五体の龍。大きさこそ、それに遥かに及ばないが外観は酷似しており、限りない神聖さすら感じさせる。

 もしもこの時、スヴェルの守護神であるレヴィアを知る者がいればその姿が限りなく似通っている事に気付けた事だろう。

 ピスケスは邪神へ噛み付いて上昇し、余りに長大な身体は海を越えて陸上へと姿を現してそのまま成層圏を抜けて宇宙まで延びる。

 そのまま力任せに月へと邪神を押し付け、大口を開いて口内に破壊の光を集約させた。


「消え失せよッ!」


 発射。

 発射、発射、発射、発射、発射、発射、発射、発射、発射。

 ミズガルズ地表に向けて撃てば、星そのものを破壊するには至らずとも余波で文明を滅ぼしてしまいかねない破壊の光弾を出し惜しみなく、無慈悲に叩き込む。

 着弾するたびに月が抉れ、地形が変わり、円形だったはずの月が歪な形になってしまった所で残骸と成り果てた邪神へ喰らい付き、今度はミズガルズへと降下。

 深海の奥底へと叩き付けて、そこでようやくピスケスは元の人間の姿へと戻った。


「フッ……フハハハハハ! 思い知ったか。

所詮お前如きではこの余の敵になどならんわ!」


 ピスケスが勝ち誇り、勝利の高笑いをあげる。

 しかしリーブラは冷静に敵を観察し、生命反応がまるで衰えていない事を感知していた。


「いいえ、まだです」

「何?」


 油断なく見据えるリーブラの前で、その言葉の正しさを証明するように邪神が起き上がった。

 その全身は焼け爛れ……しかしアイゴケロスに抉られた腹の傷を例外とし、ほぼ全ての傷の修復が既に終わりかけていた。

月「俺が何をしたっていうんだよ……」


【今日のバグ】

異形の神トゥールー

レベル:1000

HP:2800000

SP:66666

属性:水

STR(攻撃力) 6000

DEX(器用度) 2000

VIT(生命力) 6200

INT(知力) 5800

AGI(素早さ) 5000

MND(精神力) 9999

LUK(幸運) 2000

・数秒ごとにランダムで精神干渉発生。耐性がないとそもそもこいつと戦う事すら出来ない。

・睡眠以外の全状態異常無効

・即死無効

・精神操作無効

・HP常時99999回復

・触手本数分だけ通常攻撃を行う(現時点で120回連続攻撃)

・通常攻撃時に発生率90%の精神干渉がランダムで複数発動。対精神攻撃対策をしていないとこれだけで何も出来なくなる。

・再生の度に触手は増える

・全長120m

・固有スキル・『夢見るままに待ちいたり』(HPが0になっても死亡せずに眠りに就く。その後数百年経過すればステータス数割増しで復活を果たす)

・固有スキル・『邪神の呼び声』(テレパシーを全世界規模で発信し、己の夢で現実世界を侵食し、塗り替える。

この『夢の世界』は邪神の法則が適用され、本来絶対のはずのアロヴィナスの決めた法則すら跳ね除ける。ただし大量の海水に遮られて現在は使用不可能。お前それでも水の神か)

・いあ!いあ!


アロヴィナス「…………あ、そうか。夢ですね。早く起きなきゃ」

※女神はガチでこいつの誕生に関与してない模様。


・ちなみにピスケスは龍ではなく、それに似た魔法と思って下さい。

もしくは不出来なプロトタイプ。

つまりレヴィアと同じく龍モドキです。

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― 新着の感想 ―
[一言] いあ!いあ!一応水属性に区分されてるけど元々は陸で生活してたし海に沈められてぐっすり眠ってる大いなるタコさん万歳!!!正気度ロール1d10/1d100→86 永久発狂!
[一言] 月をいじめないでください
[良い点] 睡眠だけ効くの好き
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