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第144話 パルテノスのコスモパワー、パルテノスのてっぺき、パルテノスのわるだくみ、パルテノスの(ry

『私は勿論転生方法を探るチームに入るわ。私がいないと始まらないだろうしね。

……それに気になる事も一つあるわ』


 それはチーム分けの際にポルクスが口にした言葉だ。

 この時ルファスはあえて気にしなかったが、ポルクスには至急調べねばならぬ事があった。

 場合によってはこれは、ルファスの二百年前に立てた予定が根元から崩壊しかねない事だと思ったからだ。

 妖精郷アルフヘイム。

 そこに戻ったポルクスはアバターに関しての話を始める前に一度、皆と距離を取った。

 ルファスがいる時に皆を援護する為に呼びだした複数の英霊……フェニックスやハイドラス、三翼騎士と共にさりげなく復活させておいた『彼女』は空気を読んであの場を素早く離れ、そして今はこの妖精郷に来ているはずだ。

 少し離れれば案の定、ポルクスを待っていたように適当な木に背を預けた幼い姿を見付ける。

 三つ編みにした頭髪は緑色。白い法衣に包まれたその姿は外見年齢十二歳程度の幼いものだ。

 彼女はポルクスの姿を認めると、ニカリと笑った。


「随分と久しいのう、ポルクス」

「ええ、久しぶりね……パルテノス」


 先代『乙女』であるパルテノス。つい一年前にその天寿を全うした彼女は、今再び全盛期の姿となってここに顕現していた。

 見た目こそ幼い少女だが、その実年齢は人間としては破格も破格の二百歳超えであり、老婆というよりは最早化石にも等しい。

 アルゴナウタイは全盛期の姿で呼び出される為、かつて十二星として猛威を振るっていた二百年前の姿で呼び出されている。

 無論ポルクスがその気になれば老婆の状態で呼び出す事も出来たのだが、それをしなかったのは同じ女としての情け故だろう。


「それで何の用じゃ? 久しぶりに若い身体を得たのは喜ばしいが儂には龍の封印を守るという役目がある。出来れば元の場所に戻して欲しいんじゃがの」

「その龍の封印について聞きたい事があるのよ」


 ポルクスは目を細め、パルテノスを鋭く睨む。


「ねえパルテノス。貴女、何故……女神様のアバターを素通りさせたのかしら?」

「……ほう、あの時の一行の中にそんなものが紛れていたとは。これは盲点……」

「誤魔化さないで。ルファス様ならそれで煙に巻けるかもしれないけど私は違うわ。

あまり舐めないでくれるかしら」


 ポルクスの確認したい事。それは以前ルファス一行がヴァナヘイムを訪れた際にディーナがパルテノスの結界を素通りしてしまった件だ。

 ルファスはこれを、『パルテノスはかつて女神の聖域の守護者だったから女神と似た存在であるディーナを通してしまった』と考えた。

 だがそれはおかしい。おかしいのだ。

 何故ならば龍とは女神の代行者であり、それを起こさない為に封印がある。

 なのに肝心の女神と同じ存在を通してしまっては本末転倒。結界の意味がない。

 つまりディーナが素通りしてしまったのはルファスが考えているような理由ではなく……明確な意思を持ってパルテノスが通したという事だ。


「それにもう一つ。貴女は女神様の聖域の管轄者だった。

その貴女が女神様の顔を知らないなんて事は有り得ないのよ。

何かの間違いで通してしまったとしても……あるいは何らかの方法で彼女が結界を素通りしたとしても……顔を見た時点で、貴女は彼女の正体に気付いていなくてはならない」

「……」

「答えなさいパルテノス」


 言い訳や誤魔化しは認めない。

 そう視線で語るポルクスに、やがてパルテノスは両手を挙げて降参の意を示した。

 他はともかく彼女だけはこれ以上欺けない。そう判断したのだ。


「流石じゃな、ポルクス。全てお前さんの言う通りじゃよ。

儂はあやつの正体に気付いておったし、意図的に結界を抜けさせた。

じゃが流石のお前さんもあ奴の『正体の裏の更なる正体』には気付かなかったようじゃな」

「……どういう事?」

「決して他に漏らすでないぞ。特に口の軽い輩にはな」


 そしてパルテノスは語る。

 何故自分がディーナを素通りさせたのか。ディーナとは一体何者で、何を企てて動いているのか。

 そして、何故ルファスがああまで無防備に彼女を信頼してしまったのか。

 何故一度もディーナの事を……騙されていると判明した後ですら敵だと認識しなかったのか。

 そう、あれは決してルファスが考え無しだとか油断していただとか、それだけの理由ではない。

 ルファスには彼女を敵と見なさない理由があるのだ。

 深層心理の奥底で、彼女自身すらも無意識下でかろうじて覚えているに過ぎない儚い記憶だが、それでもルファスはディーナが敵ではないと『知っている』。

 それを聞いたポルクスは最初は信じられないといった顔をし、しかしやがて納得したような表情へと変わった。


「……なるほどね。確かにそれなら辻褄は合う、か。

おかしいとは思ったのよ……いくらルファス様が脳筋だからって、不自然なまでに踊らされ過ぎだと。

けど確かに、それなら納得出来なくはない」

「その割には不満そうじゃの?」

「ええ、不満よ。私はあの方に全てを明かされていたわけではなかった。

それが情けなくってね」

「仕方のない事じゃ。お前さんは最悪、女神様に記憶を読み取られる恐れがあった。

一番重要な情報だけは何があっても伏せておく必要があったからのう」

「分かってるわよ。それも含めて情けないって言ってるの」


 ポルクスが恥じるのは己の意思の弱さだ。

 例えばこれがあの吸血姫ならば、きっと龍のアバターだろうが関係なしにルファスは全てを明かしただろう。

 あの唯我独尊で、女神の干渉すら跳ね除ける規格外ならば万に一つも女神に操られる恐れなどない。記憶を読み取られる心配などしなくてもいい。

 だが自分にそれは出来なかった。抵抗はしたが女神に操られてしまったし、今後も同じ事があればやはり抗えないだろう。

 それが本当に情けなくて、嫌になる。

 精神力のステータス云々ではない。女神相手では例えステータスが無限だろうが抵抗など出来ないだろう。

 ステータスを超えた馬鹿げた意思の強さ。それがなければ女神に抗う事など出来ないのだ。

 

「それでこれから儂はどうする? もう戻っていいかのう?」

「いいえ、念のため待機していて。大丈夫だとは思うけど何かあった時に貴女の力が必要になるかもしれない」

「それはいいが封印の護りはどうする気じゃ」

「貴女の代理として『冠』のボレアリスをヴァナヘイムに向かわせたわ。大丈夫よ」

「……抜かりないのう」


 『冠』のボレアリスはルファスの部下でレベル1000の凄腕グラップラーだ。

 元々はルファス登場以前の人類の治める国としては最も巨大な帝国を支配していた帝王だったのだが、ルファスとの一騎打ちに敗れて惚れ込み、彼女が国を立ち上げた際には真っ先に軍門に下ったという逸話がある。

 その姿は身長220で、上半身裸の上からマントを羽織った変態染みたナイスミドルであり、接近しての殴り合いに限定すればルファスすらも苦戦させると言われている。

 ハッキリ言ってしまうと、単騎での戦闘力ならばパルテノスよりも遥かに上だ。


「そういうわけよ。貴女はこのまま私と一緒に行動してルファス様と合流して貰うわ」

「ふむ、いいじゃろう。久々にルファス様の為に力を振るう事になりそうじゃな」

「ええ、頼りにしてるわよ」


*


「ほう、覇道十二星か」

「元、じゃがの。その名は孫に譲って、今はただのパルテノスじゃ」


 パルテノスは不敵に笑い、スキルを発動した。

 プリーストの高位スキル『ダブル・スター』。習得条件はプリーストレベル100である事。

 更にそこから『フォース・スター』を起動する。その習得条件はプリーストレベル200かつ『ダブル・スター』を習得済みである事だ。更に一度ダブル・スターを発動した後でなければ起動出来ないので使うまでに若干の隙を晒す事になるが、その分効果は絶大だ。

 その効果は一定時間の間のみ中級以下の天法の四重使用。

 パルテノスが指を動かすと彼女の前に四つの五芒星魔法陣が浮かび、その全てが場の全員へと付与された。

 日属性天法――『フォトンウェポン』。味方の攻撃力を上昇。

 日属性天法――『レイ・ブロック』。味方の対物理防御力を上昇。

 日属性天法――『レイ・バリア』。味方の対魔法防御力を上昇。

 日属性天法――『フォトンフィールド』。味方が受けるダメージを肩代わりする領域を形成。


「ほれ、まだじゃ。儂を早う止めんと取返しの付かん事になるぞ?」


 そう言い、再び術を行使する。

 これにはソルも顔色を変え、すぐに攻勢へと移った。

 だが遅い。余裕こいていた分だけ彼は一手遅れている。

 その一手の暇があればパルテノスは四つの補助を行えるのだ。


 日属性天法――『リジェネレイト』。一定時間HPが自動回復。

 日属性天法――『マナ・リジェネレイト』。一定時間SPが自動回復。

 日属性天法――『スピード・オブ・ライト』。味方の速度を倍化させる。

 日属性天法――『オーラバースト』。味方の全ステータスを上昇。他の補助技と併用可能。


 ソルがパルテノスへ切り込もうとするが、それをテラの刃が正面から受け止めた。

 本来ならばソルが勝るはずだが、力比べの結果は互角。

 パルテノスの補助により拮抗してしまっている。

 そしてまた一手。再びパルテノスに術を行使する間を与えてしまった。


「ほれほれ、どんどん行くぞ? もっと急げ急げ」


 日属性天法――『オートリザレクション』。HPが0になった時に一度だけ自動で蘇生。

 日属性天法――『エレメントリフレクター』。指定した属性のダメージを一定時間半減。

 日属性天法――『オーラフェザー』。味方に光の翼を与えて飛行可能とする。

 日属性天法――『レイ・フォース』。味方が敵に与える魔法ダメージを上昇させる。


「馬鹿な……早い!?」


 テラと切り結びながらソルはパルテノスの術の速さに驚愕していた。

 確かに高レベルの術者ともなれば一度に四つの術を使うのは決して不可能ではない。

 だが術を発動するまでには多少なりともタイムラグがあり、四つも使えば発動までにかかる時間は並の術者ならば数分……七英雄クラスでも数秒は要するはずだ。

 それを一切の動作なく、ほぼ一瞬で使うなど有り得ない。

 『フォース・スター』は決して無敵のスキルではない。むしろ使う術が増える分発動までの時間が伸びて速攻性を失い、肝心な場面に肝心な術が発動しないなどの問題を抱えている。

 それならばむしろ、そんなスキルは使わずに速効性を優先して普通に術を使った方がマシ、というのがプリーストの常識だ。

 それにおかしい。この女……先程から高位の術まで当たり前のように混ぜてきている!

 しかしそれを可能とするのがパルテノスであった。

 覇道十二星にはレオンを例外とし、全員がそれぞれの固有スキルを有しており、いずれも反則級の力を誇る。パルテノスも例外ではない。

 彼女の固有スキルである『ザヴィヤヴァ』は他の十二星と比べると、決して派手なものではない。

 少なくとも目に見えて分かりやすいインパクトの大きなスキルではないだろう。

 だがだからといって弱いわけではなく、むしろルファスをしてゲーム時代に『これズルくね?』と心底思ったえげつないものだ。

 その効果は、高位天法の制限解除。

 『一定ランク以上の術は使えない』と制限がかかっているスキルは多数あるが、その全てを無視して高位術や最高位の術までそこに組み込んでしまう。

 一見すると地味だが、これはふざけているまでに反則的なスキルだ。

 何故ならプリーストやソーサラーには『一定ランク以下の魔法の消費SPを激減させる』スキルや『一定ランク以下の天法の発動待機時間をゼロにする』といったものがあるのだ。(もっともこれは本当に下位の術にしか適用されない。故にフォース・スターの主な活用法としては最下級の術を連射して手数で補うといったものになる)。

 だがパルテノスはそれを無視する。本来弱い術にしか適用されないスキルを平然と高位の術に適用させる。

 その結果導き出される結論――即ち、高位術の撃ち放題、待機時間無しという悪夢!

 確かにパルテノスは純粋な戦闘力という意味では十二星最弱候補だ。そこに異論を挿む余地はない。

 ルファス自身も『補助は凄いが戦闘力は微妙』と言っており、彼女を弱いと断言している。

 だが同時に『後ろで術を使っているだけで十分過ぎる程の価値がある』とも言っているのだ。

 そこに居るだけで戦力差を覆す補助のスペシャリスト。それこそが先代『乙女』の力だ。

 ソルがテラの刃に掠りながらも前線を突破し、この場で最も危険な女へと拳を放った。

 だが迂闊。確かにパルテノスは十二星の中では弱い部類だが、ポルクスのようにレベルに合わぬほど弱いわけではない。

 少なくともレベル800相当の力は備えており……補助が充実した今を計算に含むならば、その膂力は前衛の一撃すら受け止めるものまで達するのだ。


「阿呆が」

「っ!」


 ソルの拳を丸太で防いだパルテノスが老猾に目を細めて笑う。

 そのまま相手が驚愕から立ち直る間も与えずに右足を軸に回転。

 遠心力を乗せて丸太の一撃をソルの横面へと叩き込んだ。

ポルクス「積み技を1ターンに4回ですって? インチキ効果もいい加減にしなさい!」

アクアリウス「こんなんチートだチート!」

リーブラ「ゲームならば即大会出禁待ったなしですね」

タウルス「何という反則能力……」

ルファス「ぶっ壊れ性能乙」

ベネト「修正はまだか?」

混沌帝龍「効果を強くすりゃいいってもんじゃねえだろ」

開闢と終焉の支配者「せやせや。バランス大事やで」

ペットショップ「テストプレイの段階でバランス崩壊と気付かないもんかねえ」

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[一言] パルテノス様素敵(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
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