最終決断
「お前さんの父親はこの国の王様さ。」
「……は?」
「嘘じゃない。あんたの目は、王様の血筋の筈なのに色が違うかった。だから、それを隠すために、お前さんの目に魔法を掛けて、捨てたのさ。理由はさっきの通り。後は、お前さん次第。」
グレイが驚きで固まっている間にアナトは言うだけ言って、少し名残惜しそうな雰囲気を持ちながら、背を向けて去って行ってしまった。
「大丈夫よ、あなたは私の子供なんだから。きっとちゃんとした道を歩いて行けるわ。」
最後にグレイと同じような灰色の目をすっと細めながら呟いたアナトの言葉は、グレイには聞こえなかった……。
* * *
なんだかんだと思いながらも、なんとかマルクの家に着いたグレイ。
ノックを三回した後、グレイはそっと家の中に入る。
「こんにちは。マルクおばさん。」
質素な感じを思わせる廊下を歩き、広間へと足を踏み入れた。
「あぁ、おかえり。遅かったじゃないか、グレイ。」
「そうさねぇ……でも、おかえり。」
「ただいま……って、え?どうしてクイナがここにいるの?」
グレイの言葉に二人は悲しそうな、複雑そうな顔つきになる。
「……あぁ、知っていたのね。」
もう既に目は閉じられたしまった目で何かを悟ったようで、グレイはぼそりと呟いた。
そんなグレイを見ながら、二人はそうだねと言いながら頷く。
「そっか。言ってくれればよかったのに。」
「言わないさね。言うわけがない。」
「どうして?」
悲しそうな声でそんな事を言うグレイにクイナがはっきりと答える。
グレイに悲しんで欲しくないと、そう言うように。
「だって、最後まで今までのようにグレイと一緒にいたかったからさ。そうだろ?」
「クイナの言う通りだね。まさかグレイが王様の娘だとは思わなかった!アナトにそう聞いたときは、驚いて、固まっちまったよ。」
しみじみとクイナが言うのに対して、マルクは何時ものように明るい声で、そんな事を言う。
「……ねぇ、二人とも。私は、どこにも行かないよ?」
「「え?」」
二人の素っ頓狂な声が同時に聞こえる。
そんな二人に、一歩近づきながら、グレイはクスリと笑った。
「私の血のつながりは、もしかしたら……いや、本当に王様のものなのかもしれない。でも、私はね?本当の親って、血のつながりだけじゃないと思うの。……そう言っていたじゃない。ね?マルクおばさん。」
「そうだけどねぇ……でも。」
グレイの言葉に戸惑いながらもマルクは言葉を返す。
「でも、じゃない!私は目が見えなくったっていいの。今まで過ごせてきたんだもの。これからも大丈夫。だから、私をここにいさせて?」
我儘でごめんとグレイは困った風に言いながら、二人の顔をしっかりとみる。
そこには、二人の驚いたような嬉しそうな顔があって……。
「どう、して?見える、の?」
王の元に戻らない限り開かれるはずの無い瞼が開き、驚いている二人の顔がはっきりとグレイに見えていた。グレイは、あわあわと何度も目を開けたり閉じたりする。
「……あ、あの時アナトが私の目を塞いだ時?」
きっと、きっと、あの王宮魔術師さんが魔法の本質を変えてくれたのだと、グレイはそう思った。
グレイは、ここにいないアナトの何度も感謝の言葉を言いながら、クイナとマルクと一緒に抱き合って、喜んだのだった……。
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