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虚像―開幕―
人間、目は2つあるものだ。
それが、普通の人間の定義であり常識。
そんな人間達から見て俺の目は、随分と奇怪で―――滑稽だろう。
だって俺の目は左目しかないのだから。
だから、俺の世界は右半分が失われたのも同然。
ぽっかりと空いた空洞は闇よりも深く、それに蓋をするように、黒とは対極の白い眼帯が被さっている。
眼球を失った当初は不便だったが今まではもう、何とも思わない。
逆にこの感じが好きという女が増えて、告白回数が増えた位なんだから。
それが気に入らないから【もう一人の彼女】は、俺を余計束縛しちゃいたくなるんですがね。
そんな時、、
ガラッ――!!
教室の扉が勢いよく開く。
「朱。」
そこには、長い黒髪をサイドで結んだ、気の強そうな少女、霧坂 美桜が立っていた。
「なに、もう部活終わったの?」
「うん。今日、熟あるから……。」
あぁ今日、熟だっけか。
美桜の家は両親が既に他界し、親戚の援助を受け、高校へと通っている。
「んじゃ、帰りますか。」
俺は机の横に提げた鞄を持ち立ち上がる。
そして歩く。その後を追うように美桜も歩き出した。