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ウミガメの雑炊(ショートショート風味)

たった一つだけど冴えてないやり方

作者: ぐるぐる

ウミガメ的にいうと、区切り◆◇の手前までが「問題」、それ以後は「解説」に当たる部分です。


 はじめまして。私が君たちの研修を担当するハートマンだ。

 軍曹? いや、別に私は軍属というわけではないが……一体、君は何を言っているのかね? 宇宙開拓事業団は地球政府から委託されて仕事をしてはいるが民間だぞ。まさか、そんなことも知らずに新人研修を受けているわけではあるまいな?

まあいい。君たちが宇宙の仕事にどのように思っているかは知らないが、詳しいことはこの研修を通して知っていけばいいことだからな。


 簡単に言えば『未知との遭遇』、それが我々宇宙開拓事業団の仕事だ。

 こういう言い方をすると、危険だとか浪漫だとか名誉だとか、まあ、男心をくすぐる何かを感じる奴らが多いのはわかるが、それはゲームのやりすぎだ。もはや宇宙を冒険する時代は終わったんだよ。

 すでに数千以上の種族との交流が行われ、君たちの任務はその数を1つ増やすだけのものに過ぎない。そもそも生命が生存可能な星の気候は地球と変わらんし、政府が新たな交流を望む星は地球より文化レベルが低く友好的な種族に限られる。君たちの宇宙船、装備は最新鋭のものだし、翻訳機は全宇宙の言語を瞬時に訳す。


 おっと、誤解するなよ。この仕事は別に楽な仕事というわけではないからな。地味で苦労が絶えない仕事だ。

 どんな苦労があるかって? 

 そうだな……例えば、これはまだ私が現役だった時の話だ。

星の代表者との初会談で、『その言葉』を聞いたとき、私は翻訳機が故障したんじゃないかって思った。だが、翻訳機は壊れてなかった。

 そう、それが、私の苦労の始まりだったんだ。



◆◇◆◇◆◇



「……私どもナロウ星住民の最も喜びとするところでございます。誠に意義深く、心から歓迎の意を表しますとともに、厚く御礼を申し上げる次第でございます。また……」


(こういう挨拶や式典の退屈さは、どの星でも変わらないんだな)


 代表者の挨拶が続く中、不謹慎にもそんなことを考えていた私だが、ふと部下たちに目をやると、彼らの様子がおかしいことに気付いた。部下たちの1人に話を聞くと、どうやら彼らの挨拶の意味がわからないらしい。翻訳機の故障だろうか? 私の翻訳機に異常が見られないのは不幸中の幸いだが、最新型の翻訳機の一斉故障とは穏やかではない。私は不安を感じながらも、部下の翻訳機を手に取った。しかし、聞こえてくる代表者の挨拶は先ほどと変わらず正しく翻訳されており、機械に異常は見られない。それなのに、私の翻訳機と交換した部下は、依然頭を捻っている。



 そして私は理解した。



 私の部下はこの程度の「日本語」がまともに理解できないゆ○り揃いであることを……。確かに、長期単身赴任になるこの仕事は人気職とはいえない。慢性的な人不足で、訓練期間も短い。宇宙船内の大半をコールドスリープで過ごしたため、部下たちのことを知る機会が少なかったのは確かだが……。







 もうわかっただろう。君たちの前に置いてあるテキストの意味が。さあ、早速講義を始めよう。


 生徒の前に置かれたテキストの表紙には『あたらしいこくご』という文字が輝いていた。


 お暇でしたら、以前書いたものも読んでいっていただけると嬉しいです。

 感想もお待ちしています。

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