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その日、王都の聖イレア教会には五歳になった貴族の子どもたちが集められていた。
魔法適性の儀。この儀を経て貴族の子供は貴族だと認められる大切な儀式だ。満五歳になった子どもが教会に集められ、神官から魔法の素養を授かる、貴族社会では魔法適正は絶対に必要なのだ。
アルシア・ヴェルナは緊張した様子もなく、石造りの礼拝堂を見渡していた。高い天井に色付きガラスの窓から差し込む光。厳かな雰囲気に周りの子どもたちは緊張で表情が強張っているのに、アルシアだけはきょろきょろと興味深そうにめを輝かせていた。
「アリー、落ち着いて」
隣から小声が聞こえた。
エドワード・クレイン。同い年の幼馴染で、ヴェルナ伯爵家で面倒を見ている少年だ。アルシアがよほど危なっかしく見えるのか、気がついたらいつもそこにいて何かと世話を焼いてくる。
「落ち着いてるわ」
「きょろきょろしてるじゃないか、落ち着いてないよ」
「心は落ち着いてるってば」
エドワードは諦めたようにため息をついたが、アルシアは気にしなかった。だって本当に落ち着いていたのだから。
儀式は順当に行われた。高位貴族から順番に神官の前に進み出る。神官が神に祈りを捧げ子どもの頭に手を置き、魔力を流す。すると子どもの周りに、その子が持つ魔法適性の色が現れる仕組みだ。
赤い光に包まれた子どもの親が歓声を上げ、青く輝いた子どもに神官が微笑んだ。緑の光が優しく舞った子どもは嬉しそうに笑った。一人一人儀式が終わるたびに、礼拝堂が少しずつ熱気で温かくなっていくようだ。
やがてアルシアの番が来た。
「怖くない?」
とエドワードが小声で聞いた。
「全然!むしろ楽しみなの」
アルシアは本当に全然怖くなかった。神官の前に立ち、目を閉じる。
神官が魔力を流しても、最初は何も起きなかった。
一瞬の静寂…礼拝堂がしんと静まりかえる。だが次の瞬間だった、白い光がアルシアの全身から溢れ出した。
眩しい。他の子どもの時とは比べ物にならないほどの光が、礼拝堂全体を包んだ。
「なっ」
神官があまりの眩しさに後退り、周りの大人たちも何事かとざわめいた。
その時だった、アルシアの頭の中に何かが流れ込んできた。見たことのない街並み、医学生だった頃の知識、知らない世界の常識、初めて見る文字で書かれた分厚い本達と複雑な装置…それらの大量の情報が洪水のように流れ込んでくる。
(これは……前世?…前世ってなに?知ってるのに知らない…)
さらに聖魔法の知識
(魔法?ゲーム?アニメ??回復魔法、解毒、浄化、解呪)
情報量が多すぎて、頭が割れるように痛み出す。それが何かわからないのに、その知識がこの世界では異質なものだと、なぜがわかった。どこから来たのか。誰の記憶なのか。そう問いかける間もなかった。
光が最高潮に達した瞬間。
「アリー!」
エドワードの心配そうな声が遠くなった。
前世の知識と魔法を授かった眩しい光の中で、アルシアは意識を手放した。
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