タイトル未定2026/01/29 18:14
営業先の店をまわり終えたちはるは、大きく伸びをした。
腕時計を見ると夜の八時をまわっていた。
今日もトラブルもなく、無事に終えたことにホッとしたちはるは、人波を避けて携帯を出した。
ラインを開くと、少し前に馬場からラインが送られていた。
ラインは店の名前と、ここでいいか?と書いてあった。
ちはるは「OK」のスタンプを送り、歩き出した。
馬場が指定をした店は、ファミレスだった。
ちはるがファミレスの中に入ると、テーブル席に既に馬場が座っていた。
馬場は、メニューとにらめっこをしていた。
「何を食べるか決まったの?」
言いながら、ちはるはテーブルを挟んだ馬場の目の前に座った。
「う〜ん、これもいいし、あれもこれもいいし」
「早く、決めなさいよ」
メニューをパラパラめくっていたちはるは、カレーライスに決めた。
「友光、決めるの早いな。カレーでいいのか?」
「お腹が空いているのよ。昼間、馬場がカレーを食べているのを観て、なんだかカレーが食べたくなった」
「そうか。あぁ、何にすっかな。もぉ、このパスタにすっかな。おっ、デザートうまそう。このでっかいチョコレートパフェにすっか」
「女子高生?」
「おう、気持ちは女子高生だ」
「乙女な、おっさん」
ちはるは、笑いながら言った。
やがて料理が来て、馬場とちはるは食べだした。
「ファミレスも、バカにできないな。うまいぞ」
馬場の言葉に、ちはるも言った。
「ホント、このカレー美味しい」
「少し、くれよ」
「いいよ。パスタちょうだい」
馬場とちはるは、シェアをして食べた。
食べ終えた頃、巨大なチョコレートパフェが来た。
馬場は、幸せそうにチョコレートパフェを食べ始めた。
「赤井も大食いだけど、あんたも大食いね」
コーヒーを飲みながら、ちはるは言った。
「一緒にすんな。腹が減っているから、食べているだけだ。ほれ」
馬場はスプーンに乗ったホイップとチョコを、ちはるの口元に運んだ。
「凄い甘いと思ったけど、そんなに甘くないんだ」
「ファミレスも、進化したよな」
「進化しすぎると、営業も大変だ」
「今日の営業、どうだった?」
「ん、いつもと同じ。店長と話をしたり、商品の陳列手伝ったり」
「俺は、商品のロゴを一緒に考えたぞ」
「何でも屋かつうの!ねぇ、アタシが店をのぞくと店長たちはじめ、みんな直立不動になるのよ」
「友光、無意識に威圧感を与えているって、わかっているのか?」
「威圧感?そんなつもりはないけど、ビビるなんて肝っ玉が小さいわね」
「おいおい、もう少し柔らかにいけよ」
馬場は、苦笑をして言った。
「そろそろ、出ようか。ここは、私が払う」
「いいのか?」
「お昼おごってもらったし、たまにはね」
「じゃあ、ゴチになります」
「よか、よか」
ファミレスを出た馬場とちはるは、夜の繁華街を歩いた。
「最近、マスターの店に行っているか?」
不意に言った馬場の言葉に、酔っぱらったちはるを、背負って歩いたマスターを思い出していた。
ちはる自身、わかっていた。
ちはるが酔っ払っていたからマスターはちはるを背負って歩いただけだった。
ちはるは、立ち止まっていた。
立ち止まったちはるに気づきもせず、馬場は歩きながら言った。
「マスターの店に、行っていないんだな」
ちはるは歩いていく馬場の背中を見つめ突然走り出し、思いきり馬場の背中に飛びつき、馬場がちはるを背負うかたちになった。
「なんだよ?」
「疲れた!」
「ったく。しょうがねぇな。俺のカバン持てよ」
「へい、へい」
ちはるは手を伸ばし馬場のカバンを受け取ると、片手を伸ばした。
「馬場!地下鉄までゴー!」
「なんの、ゲームだよ」
馬場は笑いながら、ちはるを背負って夜の繁華街を歩いた。




