タイトル未定2026/01/29 18:23
自室で講義の復習をしていた若菜は台所に行き、冷蔵庫を開けオレンジジュースを出した。
グラスにオレンジジュースを注ぎオレンジジュースを飲んでいると、浴室から若菜の父親が出てきた。
「まだ、起きていたのか」
「これを、飲んだら寝るよ」
「そうか。そうだ、秘書の北神亮君を覚えているか?」
背が高く、ショートカットでメガネをしていた亮を、若菜は思い出した。
「覚えてる。亮さんが、どうしたの?」
「休暇をとって、一次帰国をしていると聞いた」
「亮さん、帰って来ているの?」
「明日には、また海外の支店に戻るらしい」
「そうなんだ」
部屋に戻った若菜は携帯を出すと、亮に電話をかけた。
若菜は、電話で指定された繁華街にあるカフェの店に入って行った。
既に亮は来ていて、テーブル席に座っていた。
亮の隣には、背が高い外人女性が座っていた。
若菜が近づくと、二人はイスから立ち上がった。
「若菜さん、こちら同僚のマリヤ。一緒に休暇を過ごしていたの」
「初めまして、水田若菜です」
「若菜さんのことは、亮から聞いているわ」
三人は、テーブル席に座った。
飲み物をオーダーすると、若菜が切り出した。
「パパが言ってくれるまで、亮さんが帰国しているなんて知らなかった」
「情報が、遅く入ったんでしょ。特に何も発信をしなかったから。若菜さん元気そう。もう、短大生だったわね。忙しい?」
「講義や、グループディスカッションに追われているわ」
「学生しているわね」
亮は懐かしそうに言い、若菜に聞いた。
「若菜さん、マスターのお店に行ってる?」
「何度か行ったわ」
黙り込む若菜と亮に、それまで黙っていたマリヤが口を開いた。
「若菜さんも、マスターが好きなのね」
若菜はマリヤを、みつめて言った。
「好きだった。凄く好きだった。でも、マスターを追いかけるのはやめる」
「どうして?」
「赤井さんを、傷つけてしまったから」
「赤井さんと、付き合っていたの?」
「友達みたいな付き合いだったけど、私はマスターばかり見ていた。もう、それも終わり」
黙り込んだ時、カフェのスタッフが飲み物を運んできた。
三人静かに飲んでいると、マリヤが切り出した。
「亮は、どうなの?マスターが好きなんでしょ」
「私は、マスターを傷つけてしった」
驚いた若菜は、亮を問いただしていた。
「傷つけたって、何があったの?」
「マスターの過去に、触れようとした。それも、しつこく」
「マスターのこと、あきらめるの?」
マリヤの言葉に、亮は言った。
「それでも、あきらめきれない」
亮の言葉に、若菜とマリヤはしばらく黙り込んだ。
沈黙を破ったのは、若菜だった。
「無理だと思う」
「無理……」
「だってマスターは、シロちゃんしか見ていない」
若菜の言葉に、マリヤが首を傾げた。
「シロちゃん……?」
「高校の時の親友。マスターの店で、バイトをしている」
その言葉で、マリヤは思い出した。
「亮がマスターの店に連れて行ってくれた時、ホールの掃除をしていた彼女ね」
「うん。まだマスターは、白田さんのことを見ているのね」
「シロちゃんの気持ちは、よくわからないけど、シロちゃんだってマスターに想いがあると思う」
「……それでも、マスターをあきらめきれない」
カフェを出ると、繁華街はすっかり日が暮れていた。
「今日は、来てくれてありがとう」
亮が言うと、若菜も言った。
「お見送り、ここまでしかできないけど」
「来てくれて、嬉しいわ。若菜さん、赤井さんとちはるさんと馬場さんとそれから……白田さんに宜しくね」
「はい」
返事をした若菜に、マリヤは軽くハグをした。
キャリーバックを引いて歩く亮とマリヤを、若菜は見えなくなるまで見守っていた。




