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反トスーゴの狼煙①

 第1章  反トスーゴの狼煙


 ――― アンドロメダの激戦から1か月後。宇宙歴500年10月 ―――

 銀河系(天の川銀河)を含む複数の銀河は約1000万光年におよぶ銀河の集まり=“局所銀河群”を形成している。その中でも最大級の銀河がアンドロメダ銀河(M31)である。地球からの距離約250万光年。その直径は約22万光年(銀河系は10.5万光年)におよぶ。

 アンドロメダ銀河内ではトスーゴからの独立を望む反乱軍とトスーゴの再統治を望む第三艦隊残存軍との戦闘が繰り広げられていた。

 惑星ゲマハナ。反乱軍の拠点だ。

 トスーゴ第三艦隊の残存部隊が襲来する。大型戦艦<ガルバス>巡洋艦<イギャロン>を中心とした約50隻だ。 

 銀河連合艦隊が迎撃する。

 交戦。

 防ぎきれず突破される。 

 が、別の部隊の攻撃により敵艦は大破。ロミ達スペースコンドル隊が飛び去る。

 奥のステーションにまだ修理中の<スペースインパルス>が停泊している。

 <スペースインパルス>は銀河連合の超弩級宇宙戦艦。全長555m。両翼下のスーパーノヴァボンバーは惑星破壊可能な超兵器だ。

 艦長室。

 ロイが驚きつつ「インパルス2の艦長に?私が?」

 流啓三艦長が答える。立派な口髭と鋭い眼光を持つ歴戦の戦士だ。

「正確には量産型スペースインパルス2型司令艦の2号艦の艦長だ。副長にサライを推薦した」

「しかし、明の方が適任では?戦果は奴の方が上です」

「あいつは士官教育を受けていない。睡眠教育という手もあるが。いいスポーツ選手がいい指導者になるとは限らない。指揮官というのは、時には味方を犠牲にしなければならない事もある。・・奴では戦闘に勝てても戦争には勝てん。・・やさしすぎるんだよ」

 流は立ち上がり「考えといてくれ」 

「行かれるのですか?」

「うむ」 

「彼らは信用出来るのでしょうか?」

「それを確認する」


 インパルス第二格納庫内の<フロンティア号>。

 明たちがインパルス乗艦前に運び屋として乗っていた宇宙船。全長88mの小型船。

 その船内食堂で二人の男が対峙していた。

 ヨキが真剣な顔で「行くよ」

 あどけない顔をした元ベムハンターの時間制限付きエスパーの少年だ。

「おう!」弓月明が答える。気合が入っている。

 明は過去から来た男。凄腕のパイロット。親友流啓作の死をきっかけにエスパーとして覚醒した。長い前髪はなぜか操縦の邪魔にならない。

 ヨキは明へピンポン玉を投げる。 

 明に当たる前にそれは空中で止まる。

「ダメだ。それサイコキネシスだろ。物体じゃなくて時間を止める感じで」

 明はリインとの対決の終盤、時間を止めた・らしい。その実証実験中。

「あの時は切羽詰まってたからな。もっとあぶない物でやってくれ」

「わかった」 

 くわーん。スパナが明の顔面に命中。

 よろけた明はテーブルに当たる。テーブルから生卵が落ちる。

「あ」

 空中で止まる卵。

「!」 

 卵は上に登り・・時間が戻る!

 くわーん。スパナが明の顔面に命中。

「・・・」


 同コクピット。 

「何か損をしたような・・」

 明はぶつぶつ言いながら山岡麗子の手当てを受けている。

 麗子は美理の親友。短髪の知的美人。それ以上に性格美人。医療班の新人看護師だ。

「どんな特訓してらしたのですか?」麗子が尋ねる。

 明は答えない(答えられない)。

「少しは元気になりました?」 

 明は首を横に振る。「・・慰めてくれる?」 

「いいですよ」

 ぶわっ 明は鼻血を出す。 

「ったく何を想像したんだ?」ヨキが呆れる。

「麗子ちゃん。ワーププログラミングは出来たの?」

「すみません。もう少し・・」作業に戻る。明のせいなのだが。

 麗子はシャーロットの指導でワーププログラミングの練習中だ。

 シャーロット=クイーンは流啓作の未亡人。コンピューターの扱いに優れる。1歳の息子・望がいる。

 外では格納庫内をボッケンが走り回っている(リハビリ中)。

 シェプーラ星の高等生物であるボッケンは体は馬、頭は犬に近い。ヒト並みの知能を持ち、時速300㎞で走り、刀を咥えての戦闘力は高い。

 お客さんに気付いたボッケンは無言で前脚を上げて敬礼する。

 乗船したその人物たちはコクピットに入って来る。

 流艦長が敬礼しながら「ご苦労」 

 明たちは立ち上がり敬礼する。ヨキは席を移る。

 もう一人。3m近い大男が入って来る。

「元トスーゴ第三艦隊所属のジグです。インパルスでアドバイザーになります。よろしく」 

「ああ反乱軍の・・」ヨキとシャーロットは初対面だ。  

 ふたりは席に着く。流は主戦闘兼副操縦席、でかいジグは最後列のソファしか座れなかった。

 シャーロットが流の方を指し「・・そこの席でした」 

「ん?」 

「啓作さんは大抵そこの席に座っていました」 

「・・・」

「マーチンも来ればよかったのに」 

「整備長昇進で忙しいからな」

 マーチンは帯電体質のメタボ青年。メカニックのプロ。亡くなったニコライ機関長兼整備長の後任として整備長に決まった。機関長は別の人物がなる予定だ。

 シャーロットが計器を見ながら「でも整備ちゃんとしてくれてたみたいよ」 

 麗子が「ワーププログラミング出来ました」

 シャーロット教官が素早くチェック。OKサインを出す。

 麗子はほっとする。後ろ手でVサイン。

『ワープブースターチェック完了。異常なし』船外管制室のマーチンから報告。

 <フロンティア号>は船尾に本体と同じ位の長さのメカを装着している。長距離ワープを行うためのワープブースターだ。

 レーダー席に着いたボッケンが「針路クリア」

 ジグはソファ席でシートベルトと格闘していた。短すぎて届かない。

 見かねた麗子が席を立ち、エクステンションベルトを取り付ける。

「ありがとう」

 明は流艦長を見る。流は無言でうなずく。 

「こちらフロンティア号、発進する」

『了解。第4ゲートオープン。グッドラック』 

 軽いGがかかり、<フロンティア号>は艦外へ。宇宙空間へ。

『久しぶりで腕なまってないか?』護衛の<スペースコンドル>リュウからの通信。

「ぬかせ。ワープ行くぞ!」

 <フロンティア号>は護衛機数機と共にワープして行く。


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