ふたりの王女③
再びギガロ防衛戦。
メインブリッジで動けるのは明と麗子とリベラとジグだけだ。
ジグは異星人、リベラは乗艦したばかり、アンドロメダ戦の後に乗艦した者には症状が出ていないようだ。明と麗子が発病しない理由はわからない。
明はジグを主戦闘席にすすめる。グレイを補助席に移して、ジグは着席。
「稼働可能なのは第8・11砲塔だけ。第1砲塔は自分が操作する。残りをフルオートに」
『がってんだ。ホーミングアローもまかされて』
第8砲塔にはラーが、第11砲塔にはハットがいる。キキイ星人の彼らも無事だ。
ジグは第1主砲を操作。ターゲットスコープをにらむ。発射ボタンに手を添える。
第1砲塔は倒れた乗員を乗せたまま勝手に旋回。 主砲発射。
一撃で巡洋艦<イギャロン>数隻を撃破する。
集中砲火が来る。
明はインパルスを旋回させて避ける。避ける。避ける。
麗子は流の腕に針のない注射を打つ。
「解熱剤です。少しは楽になると思います」
流は無言でうなずく。
麗子は他のクルーにも注射をしてまわる。
『こちら“BigJ”、患者の体内より新種のウイルスを発見。現在治療薬を開発中』
サブパネルに奇妙な形状のウイルスの映像が映し出される。
映像と倒れているクルーを見比べてジグが口を開く。
「私の故郷のヴィクダン熱に似ている。たいてい子供の頃に罹るありふれた病気だ」
『それだ』Qの声。『おそらく先の白兵戦で敵が持ち込んだのだろう。意図的なのか偶然なのかはわからんが。今頃になって・・潜伏期が一か月以上もあるとは・・』
「治療法はわかりますか?」麗子はジグに尋ねる。
「確か・・寒さに弱いはず・だ。罹ったら水で体を冷やしていた」
それを聞いた流は起き上がる。倒れかけるが踏みとどまり命令する。
「那由多!艦内を冷やせ!ギンギンに!」
Qは医療班スタッフと“BigJ”に命令する。
「発病者全員に解熱剤を!」
流は自分のスペーススーツの簡易宇宙服機能を切る。こうしないと体が冷えない。
麗子は倒れたグレイたちの簡易宇宙服機能を切ってまわる。
それを横目で見ながら明はふと自分の腕を見る。そこには赤い斑点が!
自動警報が鳴る。那由多が異常をキャッチしたのだ。
ギガロに次から次へと敵艦隊がワープしてくる。
主砲発射!ホーミングアロー!ウィングサーベル!
インパルスは次々に敵艦を沈めていく。
ただ一隻で応戦する<スペースインパルス>であったが、次第に追い詰められていく。
明の操艦で被弾はほとんどない。だがあまりに激しく繊細な操艦のため、那由多ではその予測がつかず武器の狙いがつけられない。その点ジグやハットやラーは初めは外していたものの慣れれば当たるようになるのは流石だ。
そんな明だが、発熱と共に次第に意識が朦朧としてくる。
麗子に解熱剤を打ってもらったが、まだ効いてこない。
「はあはあはあ・・」
トスーゴ無敵艦隊前衛艦隊旗艦<アポロン>。
美理の居室にリナが訪ねて来る。
いつもの笑みはなく思いつめたような表情だ。
「私はこれから休戦の申し出にアンドロメダ銀河へ参ります。美理さんピンニョさん、あなた方を<スペースインパルス>へお連れしたい。一緒に来てください」
「え?」思いがけない申し出だ。「オズマ王子は?」
「私が行くことは了承しましたが、勿論あなた方の同行は内緒です」
美理はしばらく考えて・・・
「私は・・行けません」
無言のピンニョ。
「帰りたくないのですか?こんなチャンスは滅多にありません」
帰りたくないと言ったら嘘になる。帰りたい。明に父にみんなに会いたい。
「・・私は・・まだ何もしていません。戦いを止めるには・・大神王に会いに本星に行かないと・・ピンニョは連れて行ってください」
「やだよ。ボクだけだなんて」
リナは微笑む。
「そうですね、病気のこともありますし・・わかりました。私ひとりで参ります」
「そのかわりお願いがあります」
ふたりはある約束を交わす。
<アポロン>より白い小型宇宙船が発進する。
超高速宇宙船<ペガサス>。
サイズも形も<フロンティア号>に酷似している。プロトン砲と両翼のサブエンジンは無くメインエンジンの形状も違う。
天馬の名の宇宙船は青白い光の軌跡を残して彼方へ消え去る。
「よし、掌握した」
ギガロで作業を続けていたアラン(の装甲兵)はついに基地の復旧に成功する。
ガードロボットの屍の山。
ボッケン(の装甲兵)はたったひとりでコントロールセンターを死守していた。
襲いかかってきたガードロボットの動きが止まる。凍り付いたように動かなくなる。
ギガロ全体が震動する。
“地表”から“砲台”がせり出す。それは上空へ狙いを定め、発射!
トスーゴ艦に命中。爆発!飛散する。
「やったな、副長・・」
インパルスのメインブリッジで明はそうつぶやく。
気を失いかけるが、誰かに支えられる。エヴァンスだ。
「航行長。あとは任せてください。アイハブコントロール!」副操縦席で操縦桿を握る。
明は操縦桿から手を放す。見ると流艦長もグレイも“復活“している。冷却療法が功を奏したようだ。明は発症したばかりなのでもう少し時間がかかるのだろう。
「よかった・・」明は気を失う。




