ふたりの王女②
メインブリッジ。
クリスの息が荒い。目がかすむ。レーダーコンソールに倒れかかる。
麗子が駆け寄る。こういう時のための医療班配置だ。
脈をとり呼吸を確かめる。
「すごい熱・・!」
クリスの首筋に赤い斑点。皮疹。
「何?これ」
麗子から連絡を受けたQだが事態は切迫していた。
医務室に次から次に患者が担ぎ込まれる。
皆高い熱を出し身体には赤い斑点が出ている。
Q自身もふらつく。見ると自身の腕にも赤い斑点が。
「伝染病だ。麻疹に似た発疹だが、違う。未知の病原体だ。医療コンピューター<BigJ>の自動検疫システムをすり抜けるとは」
装甲兵の遠隔操作室。
リュウとガルムを介助しようとしたロミも倒れる。
アランとボッケンには何の問題も起きていない。遠隔操縦を続けている。
機関室では新入り機関員以外ダウン。床に倒れたままマーチンは彼らに指示を出す。偶然ここに来ていたヨキだが、斑点出ているのに元気に手伝っている。
託児室。葵ら保母さんは倒れているが、望たち子供は発疹だらけなのに遊んでいる。
メインブリッジの患者もクリスだけではなかった。
グレイがシャーロットがモカがエヴァンスがアベルが次々と倒れる。
麗子がマイクに叫ぶ。
「明さん!至急もどって!」
明がテレポートで帰還。すぐに異変に気付く。
「!何だ!?何が起こっている?」
明はエヴァンスを補助席に移し主操縦席に座る。ヘルメットを取ろうとして麗子に止められる。空気感染の可能性もあると。納得して操縦桿を握る。
敵艦隊の砲撃をかわす。
「ウィングサーベル!」
インパルスの両翼が光り輝き、迫りくる敵艦を切り裂く。
「那由多!可能な限りオートで応戦しろ!」
そう言うと流艦長も倒れる。
「うそだろ」
トスーゴ無敵艦隊所属超弩級戦艦<アポロン>。
艦内でピンニョは自由に行動できた。ただし昆虫型監視カメラに常に見張られている。トイレ中も水浴び中もだ(ずっと裸だけどね)。
それでもピンニョは情報収集目的で艦内をウロウロしていた。
驚く事に艦橋以外ほとんど乗員がいない。
ここは機関室だろうか?トスーゴ艦の中はどことなく有機的だ。無機質な地球艦と対照的だ。
「!」
突然ピンニョは飛び立つ。監視カメラが後を追う。
空中でピンニョは羽根手裏剣を投げる。
それは前を歩く男の肩に命中。男は倒れる。
「アッシュ!」
ピンニョは猛スピードで男に体当たり。男は数メートル吹っ飛ぶ。
「ピ、ピンニョさん」
「よくも!」ピンニョは羽根手裏剣を投げる。
それは空中で止まる。止めたのは・オズマだ。
「やめろ!アッシュは命令に従っただけだ。アッシュ、お前もなぜESPを使わない」
「・・・(サイコキネシス!オズマ王子もエスパーなのか?そうか“神王”だから?)」
「私は・・美理さまが倒れたと聞いて、私のせいで・・」
ピンニョはアッシュをにらむ。オズマは静かに言う。
「美理の意識がもどった。会いに行かないのか?」
病室で美理は横になっている。あの後ふたたび倒れたのだ。
ピンニョはその枕元に降り立つ。
「どこ行ってたの?」
「散歩」
「そう・・」美理はピンニョの頭をなでる。まだ顔色悪い。
「美・理ちゃん、どう思う?リナ王女って?」
「新しいお友達出来ちゃった。しかも王女さま」
笑うピンニョ。
だがそれは一瞬で、すぐに重い空気が流れる。
「このままではお前は死ぬ」オズマの言葉を思い出す。
「!」美理はドアの所に立っている人物に気付く。
「あなたは!」
アッシュ!自分たちをさらった人物だ。
「美理様、私は・・貴方に謝らなければなりません」
「アッシュさん。確かにあなたを憎みました。でも感謝もしています。トスーゴとの和平のチャンスを得られたのですから」
「え?・・あ、ありがとう・ございます。そんなお言葉をいただけるなんて・・わ私は命を懸けて貴方をお守りいたします」
「あーそんなにかしこまらなくていいから」
病室にオズマとリナが入ってくる。
美理は身を起こし、ぺこりとお辞儀をし、オズマに問う。
「・・これは、私の病気は・・トスーゴと地球の混血児には絶対起こるものなの?」
「前例がないから何とも言えないが、通常<イブ型心臓ミトコンドリア異常>は女しか発症しない」
美理は望の事を思いひとまずホッとする。
「遺伝子治療でトスーゴになる以外に方法は?無いのですか?」
「無いこともないが・・どうした?完全なトスーゴになりたくないのか?」
「私は・・」
「好きな地球人がいるの?」リナが訊く。
美理は真っ赤になる。わかりやすい。
「地球人になりたいのか?それも一つの方法だが、下等星民だぞ」
美理はきっとオズマをにらむ。父も地球人だ。
オズマは息を吐き、「まだ時間はある。よく考えろ」
「は・い・・今はまだこのままにしておいてください」
「ん?」
「私は・・トスーゴと私達の戦いを止めさせたい。そのためには、混血のままの方が、その・・都合がいいんです」
「でもそれでは・・」リナが案ずる。
オズマは微笑みながら腕を組む。
「意外とタフで打算的だな。気に入った」
美理はオズマの方へ向き直り、その目を見ながらきっぱりと言った。
「予定通りトスーゴ本星に連れて行ってください。そして・大神王に会わせてください」
部下が入室して来る。「オズマ司令!」
「何だ?報告なら後で聞く」
「ギガロが落ちました!」
「何っ?」
「第一第四艦隊に出撃命令が出ております」
「出撃する」
トスーゴ第一艦隊司令ガルゴスの号令の下、次々と艦艇が惑星より飛び立って行く。
先頭はガルゴスの乗艦・旗艦<ポセイドン>。
全長600mはインパルスと互角、地球の“船”を思わせるようなフォルムだ。
約2万隻の大艦隊は一斉にワープに入る。
別の銀河でも同規模の艦隊が発進していた。
トスーゴ第四艦隊。司令ユーダは陰のある細身の男。旗艦<クロノス>はステルスのため外観はわからない。
二つの大艦隊はM33銀河ギガロを目指す。




