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第3話勇者登場 最終話

 もう鬼人は目と鼻の先だ、エルフのお姉さんが必死で矢を放つが既に血が滲む程度ではなく、ポタポタと血が滴り落ちている。


「エルフのお姉さん一度退いて手当てを受けて下さい!」


 俺はそう言ってエルフのお姉さんの腕を掴みかけたその時、一体の鬼人がお姉さんをターゲットにしたのか近付いてくる、火事場の馬鹿力とでも言うのか?咄嗟に反応して槍を鬼人の腕に刺した。


 ズブリと、肉を裂き先端が身体に入る感触があった、気持ち悪いとかの騒ぎじゃない、魔物でも人の形をしているのだから。


 少し痛そうな顔をした鬼人がやられた報復か、今度は俺の方に迫ってくる、ヤベェ!こんな奴相手になんて出来ねえ。


 お礼とばかりにエルフのお姉さんが鬼人の右目を射抜いた。


「グオォォォォォ!」


 痛みの為か、片手で目を抑え、鈍器を振り回しているが狙いを付けていないために当たる事はない。



 とは言っても近付けない、近付いて巻き込まれたら即死だあんなの、エルフのお姉さんがまた弓を構えて撃つと、鬼人の額に矢が刺さった、そうしてその鬼人はようやくゆっくりと後ろに倒れた。


 ズズゥゥン。


 大きな木が倒壊したような音を出した鬼人はそのまま動かなくなった。


 まだ2体の鬼人は健在で元気に暴れ回っており、更に後方にも翼が生えた鳥のような化け物とか、豚の顔で人の形をした魔物が前に出てくる。


 今度はハーピーにオークなのか?マジふざけんなよ頼む勇者何とかしてくれよ···。


 願いが通じたのか、空を飛んで前線に出た奴が居た、それが何なのかすぐ分かった、一薙ぎでオークの群れを粉砕し、もう一度剣を振るうとハーピーが皆地面に落ちた、これがチート勇者かよ、助かった。


「遅れてすまない※※※で※※※だ。」


「ふざけんな!良いところで誤字ってんなよな!」


 心の声が、思いっきり漏れて俺は叫んでいた、台無しだ、なんか凄く勿体ない。


 とにかく俺はエルフのお姉さんを連れて退く、エルフのお姉さんには手当てが必要だし、勇者が来たからここも保つはずだ。


 補給所まで戻ってエルフのお姉さんの手に包帯を巻く、そんなのやった事もないから上手く出来ないがそれでも今包帯を巻けるのは俺しか居なかった。


「君、名前は?」


 初めて名前を聞かれた、緊急事態だから当たり前だが、俺は何か認められた気になった。


「直人、滝沢直人ですお姉さん。」


「そう、直人、助けてくれて有難う」


 そう言って目を閉じたエルフのお姉さんの顔が俺に近付いて·····。




 気付くと自分が居た部屋に戻っていた。


 エルフのお姉さんはおろか、魔物も勇者も居ない、見慣れた部屋にパソコンが置かれた机とベッドがある。


 見慣れないのはあの自称文学の神様だけだ。


「どうじゃっ」

「マジふざけんなよテメエ!」


 何か言ってる途中で渾身の怒りをぶつけた、流石に自称神様相手にグーパンチは止めたが、必死で右手を左手で抑えている。


 ヤレヤレという格好をするソイツ。


「これで、良く分かったじゃろ?作品は何も書かれている事が全てではない、書かれてない人にも性格があり、動きがあり、生きているのじゃ。」


「物や街だってそうじゃ、書かれているのはその中でも一握りの物事だけで、実際は違う、書く必要が無いと判断されようが、消された文章だろうが、そんな物は関係ない、何故なら皆物語の中で生きているからじゃ。」


「あぁそれは本当によく分かった、エルフのお姉さんの血も、俺が刺した槍の感触も、もう少しで美しいエルフにキスされそうでドキドキした自分もな、クソが!!」


「名前も聞いてなかったのにぃぃぃ」


 悔しさのあまり床をドンドンと叩いていると


「フォッフォッフォッ」


 と笑いながら自称文学の神様が消えた。


「あぁそうか、俺は多少間違えていたのかも知れない。」


 誤字脱字は実際無い方がいい、あの時の勇者が言葉を台無しにしたのは酷かった。


 矢の補給だって間に合わなかったら、俺もエルフのお姉さんも死んでいたかも知れない。


 だから······。




 今日も俺は誤字脱字を報告している、俺の間違いは正したから今度は絶対に間違えない。


 そう、俺が誤字脱字を報告するのは。


【ラッキースケベのお姉さん達】


【美女ばかりのエルフの国】


【ドキドキ恋愛ちょっとエッチな物語】


【貞操の無い女達】


 そう、俺はジャンルを変えたのだ、さあ準備は整った、報告はしてもリスペクトはしていない、いつでも来い!ていうか来てよ、ねぇ? カモ~ン!!




 文学の神様マジで※※※!




                完

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