09 空想屋係フセンのとんでもないお願い 前編
ある日のこと、大きな樹の切株の中に造られた妖精図書館に向かったビタ。
その樹の内側は幹の形にそって、本棚になっています。
テーブルとイスもあって、そこにうずたかく積まれた本。
その本を城壁に思わせた男の子の妖精、フセン。
何事かをぶつぶつと言いながら、本を読んだり、メモをしたりしています。
ビタは妖精図書館の管理人、通りがかりの書蟲に、フセンはどこかたずねました。
白髪の書蟲は不思議そうに首をかしげました。
「ここにいる、って聞いたんだけど」
「そうですね、今目の前にいる、ぶつぶつ言ってのがフセンです」
「あ、ありがとう」
「いえ、いいですよ」
書、と腕章をしている白服の書蟲が通りすぎ、ビタはフセンに話けます。
「フセン、君、空想屋係のフセンだよね?」
「ああ、なんだい?」
フセンは本を見ながら答えて、ビタを見ていません。
「小人牛のメリコが、いつも楽しいお話ありがとう、って言ってたよ」
「うん、分かった。どうも、ね」
「え?ああ、うん・・・じゃあ、ごきげんよう」
「ああ、ごきげんよう」
フセンはビタの顔を見ることもなく、夢中で物書きをしています。
「いくら夢中になってるからって、顔くらいあげなさいよね」
組んだ腕を腰に当てて、そして妖精図書館の側にある蝶々花畑を思い出すビタ。
そうだ、蝶々花畑を見て機嫌をなおそう、っと、妖精図書館を出ました。
蝶々花畑は、蝶々みたいな花をつける花が咲いている場所のことです。
蝶の羽根を持つビタは、風に揺れている蝶々畑の上を飛んで、楽し気。
そこに、ちょっと待ったぁ、と声がかかります。
ん、なに?と声のほうに振り向くビタ。
そこには、空想屋係のフセン。
「ちょと・・・ちょっと、ちょっと、君ぃ、なにその素敵な羽根っ?
僕、空想屋係のフセン、物書きと語り部の仕事を兼任している。
君はなんで羽根が蝶々なの?」
「素敵な羽根でしょ。信頼できるいい羽根よ」
「素晴らしい。ぜひスケッチをしてみたい。モデルになってくれ」
「イヤよ」
「ルーアンの次に、君は美しいかもしれない」
「ルーアン?私の親友だけど、なに?」
持っていたスケッチブックに勝手にスケッチをしていた手を止め、
口をあんぐり開けて、スケッチブックを落とすフセン。
「大丈夫?」
「君、ルーアンの親友?」
「そう、お届け係のビタ」
「ビタ、君にお願いがあるんだ」
「なにかしら?」
「僕の、ルーアンへの恋心をぜひ届けてくれっ」
しばらくの沈黙ののち、心臓取り出したりしないよね、とぼやくビタ。
スケッチブックを拾って、妖精図書館に戻るふたり。
どうやったらルーアンに恋心を届けられるのか、本を読んでいます。
あまりにも熱心に本を探しているビタに、書蟲に何をお探しなんです?と聞かれる。
「恋心を届けるためにはどんな知識が必要かご存知?」
「それだったら、ラブレターですね」
「恋文?まさか、気持ちを書き出すの?何にに?」
「普通は紙にですね」
「なるほど、お花に書いてみたりしらどうだろうな・・・うーん・・・」
少しぎょっとしている様子の書蟲に気づかす、ビタはフセンのもとへ。
フセンにラブレターのことを告げると、想いの言葉が出てこない、と言い出します。
休憩をはさみ、ストローで飲み物を飲んでいるふたり。
形にしてあらわしてみる、とかは?とビタ。
例えば?とフセン。
お花プレゼント、とビタ。
あんな美人、毎日くらいお花もらってんじゃんよ、とフセン。
え、勘違いされてからは、もらったことないって、言ってたよ、とビタ。
なら、僕にも可能性はあるんだろうか、とフセン。
ルーアンのどこらへんが好きなの?とビタ。
喋り方と見た目のギャップ、とフセン。
いつ頃恋をしたの?とビタ。
最近少し喋るじゃんよ偶然聞こえたんだよ、とフセン。




