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32. 朝香さんからキャシーの生い立ちを聞く

 朝香さんが私に尋ねる。

「キャシーの父親探しの話?」


 私が答える。

「同じギターを使ってるってことで、何かわからないかって聞かれたんですけど・・・」


「アリスがホテルでみんなに聞いていたのよ。あなた達はホテルじゃないから知らなかったのね」


 朝香さんがキャシーの生い立ちについて簡単に話してくれた。


「キャシーはイギリス生まれでイギリス育ち。3歳の時にお母さんが病気で亡くなって孤児院で育てられたので、両親のことや親類のことはよく覚えていないのですって・・・」


 朝香さんの話をまとめると以下のようであった


 母親はキャシーが生まれる前に父親とは別れていて、母親が死んだ時には父親不明で、親族も見つからず、3歳だった彼女は孤児院に引き取られた。

 母親の遺品のギターが残されていて、生前の母親が「これはおとうさんのギター」と言っていた、ということを院長先生から聞いた。

 10歳の時にドリンクウォーター夫妻に一人娘として引き取られる。

 ギターはドリンクウォーター夫妻に勧められて始めた。

 学校の寮でアリスと知り合って、バンドを組む。

 アリスがキミハラって日本語っぽいと言うので日本に興味を持つ。


 話の流れから、どうも藤堂さんがアリスらしい。


「・・・それで、学校を卒業したのとアリスの家族が帰国するので、日本に活動拠点を移そうと今回のコンペに参加したということよ」


 ひと通り話が終わったところで若葉が質問した。

「確か予選の動画ではキャシーはいなかったと思うんですが」


「あら、よく観てるわね。

F-117は地方予選にはキャシー欠席で3人で参加してたのよ。

実は、地方予選の直前にキャシーのご両親、ドリンクウォーター夫妻が事故で急に亡くなられたので、日本に来れなかったという話よ」


 え。


 みんな、ちょっと驚いて、言葉が出ない。


「地方予選ではF-117の演奏は迫力のない凡庸なものだったから、予選落ちって意見もあったんだけれども、応募してきた音源が良かったのとメインギターが不参加の事情を考慮して特別賞で選んだの」


 特別賞は私たちWBSYと同じ枠だ。


「でも、昨日のステージで本来のパフォーマンスを見せてくれたわ。文句なしに二次予選に進んだわよ」


 ギター一本でバンドの評価を上げられるっていうことは、彼女のギターが凄いってことなのだろうが、キミハラってどちらかっていうと安っぽい音が特徴だから、それをいったいどんな風に弾くんだろうか。


 ここで和田っちが朝香さんに尋ねる。

「ギターで人探しなんて可能なものなんですか」


 朝香さんはちょっと考えてから言った。

「うーむ・・・なかなか難しいと思うわ。

でも、F-117の人気が出てキャシーが有名になったら、お父さんが現れることがあるかもしれないわね」


 F-117はキャシーのためにもこのコンペでメジャーデビューを勝ち取りたいわけだ。


 養父母にも死なれ天涯孤独となった美女ギタリストの父親探しっていうことが、バンドが注目される話題性として今回のコンペでは評価されたりするんだろうか。


 私たちも演奏の質ではなしに、曲のユニークさと美少女ってところが評価されていたのだからね。


 朝香さんの話が終わって、みんなで廊下を歩いていると、若葉が私にこそっと言った。

「父さんが生きていれば、何かわかったかもね」


 私も若葉にこそっと言った。

「いや、それはわからないんじゃないか」




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