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27. いよいよライブの開始である


 さて、第一次予選ライブが始まった。


 私たちの出番がだんだんと迫ってくるが、私たちはまだ控室だ。


 控室は防音が良いのか、ステージの演奏はドラムやベースの低音がわずかに響いてくるのみである。


 和田っちを中心に今日のライブについて最後の打ち合わせをする。


 今日演奏するのは天ぷらとカツ丼だ。


 まずはじめに和田っちのMC。

 WBSYの紹介として田舎の高校生+姉のこと。

 学園祭以外でははじめてのライブであること。

 今日演る2曲は予選で歌ったカツ丼と、もう一曲は今日お披露目の新曲であること。


 そして、曲名「天ぷら」を言って演奏を始めるのだ。


「よーし。和田っち、まかせた」

 と若葉。


「まかされた」

 と和田っち。


 紅緒が私にこそっと教えてくれる

「和田っちはこういうの得意なんですよ。彼女が会長選に出てたらは私は負けたと思います」


 へーそうなんだ。期待しよう。


 昔の私のバンドでは、名田のやつがグダグダしゃべって、早くはじめろー、馬鹿野郎ー、とか野次られていたっけ。


 どの曲を演るか、今日までみんなでいろいろ話したのだが、ひとつのポイントは、今回のコンペでは、切符を買ったお客に地方予選の映像がネットで公開されているということだ。


 ライブに来るお客は出場バンドの持ち歌を予習済みで、WBSYというバンドはカツ丼だ、というイメージを持って来るはずなのだ。


 今日は最初のライブだから、お客の期待に応えるかたちで、カツ丼は次回に温存せずに演ることにした。

 カツ丼は、地方予選で評価された曲だし、主催者のMHプロが編集した映像で中位に位置した曲である。これをちゃんと演れば一次予選は突破できるという目論見である。


 もう一曲は無難なところで天ぷらとした。

 海鮮丼はカツ丼とは曲調が似ているので次回にまわす。

 舌平目のバラードはバンド内部の評価が非常に高く、これが決勝に勝ち上がるための勝負曲だとみんな言うのである。だから、当然のように次回まわしである。


 曲順は、まず新曲の天ぷらでお客の様子を見つつ、評価の高いカツ丼で締める、というのが良いだろうということになった。


 他の人の意見も聞きたくて、スタジオの行き帰りに九条さんにこの辺のところを聞いたら、今回のライブはバンドのポテンシャルを見たいので会社関係者からのアドバイスは禁止とのこと。

「暖かく見守ってるから、好きにやっていいわよ」

 九条さんはそう言って、演奏に関するアドバイス的なことは何も言ってくれなかった。


 さて、ひと通りの打ち合わせが済んだ頃である。

 

「WBSYさん。そろそろステージ脇に来てください」


 係の人から声がかかる。


 私は最後にひとつ確認しておきたいことがあったので、みんなに言った。


「ところでみんな、変に緊張とかはしてないよね」


 私が若葉を見ると、ちょっと笑いながら、左手を軽く挙げてにぎにぎしながら言った。

「昔、発表会でショパンのソナタを演奏した時が一番緊張した。あの時に比べたら、楽勝だよ」


「あれは無謀だった・・・」

 とさとみん。


「そういうさとみんは?」


 さとみんは、ニコッと笑って言う。

「親と姉が来てないから大丈夫」


「私は全校生徒を前にしてひとりで演説してますから、平気ですよ」

 紅緒が余裕の笑みを浮かべて言う。

「ところで、先輩は?」


「私は変に興奮はするけど、緊張しないのよね」


 ここで和田っちが不服そうに言った。

「なんで私に聞いてくれないの?」


 和田っちは緊張とは無縁だと思っていたから、みんなわざわざ聞かなかったわけだが、実はそうでもないらしい。


「MCのことをいろいろと考えてて、ちょっと緊張してるんだよ」


 そんな和田っちに紅緒が言う。

「でも大丈夫でしょ」


 続けて若葉が言う。

「まかせたから好きにやって」


 うんうん、とうなずくさとみん。


 和田っちがちょっと苦笑い。

「まあ、全然大丈夫だけどね」


 この人数だとひとりくらいはビビリがいるもんなんだが、頼もしい仲間たちだな、と私は思った。


 さて、いよいよWBSYのライブの開始である。



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