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19. タイガーキャッツのアパート訪問

2025年4月 タイガーキャッツの演奏予定曲目などを小修正しました。

 タイガーキャッツの予選ライブが終わった頃合いに、和田っちの携帯が鳴った。


「もしもし。えっ、やったぁ。それじゃあ、お待ちしてます。場所はわかりますね。はい。それじゃあ、また」


 電話を切った和田っちが、みんなに向かってうれしそうに言う。


「一回戦突破だって」


「よし、じゃあ、祝勝会だ」


 若葉が気合の入った声を上げる。


 実はタイガーキャッツの予選ライブには、BBB(Beatiful Bloody Birds)とスレイリーが居たのである。当確の実力を持つバンドふたつと一緒ということは、タイガーキャッツの予選通過は狭き門となるはずなので、少し心配していたのである。


 そして、祝勝会の準備のために、みんなで手分けして、料理の準備や部屋の片づけをするのであった。


 だいたい準備が整った頃に、玄関の呼び鈴が鳴った。

 

ピンポーン。


「お、来たようだね」


ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。


「ちょおっと、やめなさいよ」と外で声がする。


ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。


 タイガーキャッツが我が家にやってきたのであるが、この呼び鈴はなんなのだ。


 しっかり者のリーダーの蒲生さん、もうひとりのギターの洋子さん、主婦で子持ちでベースの由香さん、胸好きドラムのゆんさんの4人が玄関に並んで頭を下げる。


「ごめんなさいね」

「なんだか興奮しちゃってね」


「では」

 と若葉の掛け声で我々5人みんなでクラッカーのヒモを引くのだ。


 パン、パン、パン、パン、パン。


「予選突破、おめでとうございます」


「わー」

「ありがとう」

「ありがとう」

「きゃー」


 由香さんと洋子さんが瓶や缶が入ったレジ袋を重そうに渡してくれる。

「これはお酒ね。飲めない人達用に『いくつかの果汁をブレンドした、いかした飲み物』も買ってきたわよ」


「わあ、こんなにありがとうございます」

 と、紅緒。


 今日は、私たちの荷物は私と若葉の部屋に押し込んで、ダイニングとCD部屋でパーティーするのである。


「わぁ、すごい料理ね」


 食卓の上に並んだたくさんの料理を見て、蒲生さんが言う。


「それでは、始めましょう。お客さまは座ってください」


 椅子が足りないので、タイガーキャットの4人には座ってもらって、我々は立食である。

 

「みんな飲み物は持ちましたか」


「はーい」


「それでは、乾杯!」


 タイガーキャッツの4人と私はビールで、WBSYのみんなは『いくつかの果汁をブレンドした、いかした飲み物』だ。


 乾杯が終わると、まず、和田っちが訊ねた。


「今日のライブはどんなだったですか」


 タイガーキャッツの全員が笑って、蒲生さんが代表で答えた。


「それでは、みなさんに、今日のライブのお話をしてあげましょう」


 ちょっと芝居がかっているよね。


「今日のライブでは雨が降ったのよ」


 は?雨?


「今日は朝から蒸し暑い快晴でしたよ」


「にわか雨?」


「・・・」


 和田っちが最後に聞く。


「ライブで雨が降るって、いったい何があったんですか」


「ふふふふ、そんなに慌てないで。最初から話すからね」


 タイガーキャッツの全員は笑ったまま、蒲生さんが笑い顔で続けて話す。


「私たちの出番はライブの中盤で、場内はそれなりに盛り上がっていたわ。

 それで、私たちの一曲目は『青空の果てに』。

 これは、どこでもいつも盛り上がる曲だから、ライブのお客は大盛り上がり。結構、乗りの良いお客さん達で、やりやすかったし、まあ、これでお客の心をばっちり掴んだと思ったわ」


 「青空の果てに」は、タイガーキャッツが地元の予選で演奏して2位になった曲で、もらった映像で見たやつだ。

 乗りの良い明るいロックだ。

 お客の盛り上がりが想像できる。


「それで、2曲目は『Love and Peachan』っていう、今までの曲の中で三番人気のちょっとコミカルなラブソングをやる予定だったの。でも、この2曲目が始まる前にそれが起きたのよ」


「うん、それがね」


「突然ね」


「びっくりしちゃったわよ」


「でも、これで、もらった!と思ったんだ」


 タイガーキャッツの4人はみんな得意げな顔をしてニヤニヤするのである。

 

 いったい何が起きたんだ。

 さっき、雨が降ったって言ってたけれども・・・



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