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15. けい君って誰だよ


 深夜の食堂で、私はひとりで、MHプロ提供の音楽番組をなんとなく見てしまっていて、CMではやっぱりカツ丼が変に目立つなぁとか思いながらそのままぼーっとテレビを見ていたら、次に始まったスポーツニュースに突然と母校の名前が登場した。


 夏の甲子園・・・一回戦の明日の対戦・・・?


「おーい、若葉。うちの学校、まさか、甲子園に出てたの?」


 私が声をかけると、寝室の方から若葉が飛び出てきた。

「おお、姉貴。そういや、確か明日一回戦だったはず」


 それを聞いて女子もみんな出てきた。


「あ。ニュースにけい君がでてる」

「わあ、けい君だ。すごいじゃない」

「・・・・・・」


 けい君?・・・どこかで聞いた記憶があるが・・・誰だったっけ?


 テレビの中では、うちの高校の選手がひとり、美人の女性アナウンサーのインタビューに答えていた。


「2年生エースの水戸里くん、調子はどうですか」

「えー普通です」

「明日の対戦相手は強力打線の高知鰹一本釣高校だけれど、作戦とかありますか」

「特にないです」


 大柄でがっちりした体格で、なんだかぼーっとしているけい君であった。


「試合前には音楽を聞いて集中を高めているんですって?」

「試合中もです」

「あ、そうなの・・・それで、どんなのを聴いているのか教えてくれる?」

「WBSYを聴いてます」

「は?」

「ロックバンドです」

「???」


「あ、まずいぞ」

 私と若葉が同時に声を出した。


「さとみん、電話!」「電話!」

 和田っちと紅緒が同時にさとみんに言った。


 さとみんが嫌そうにふたりに答える。

「えー、私がするの?」


 みんな素早い反応だった。


 WBSYの情報が学校関係者から世間に広がると、そこから私たち、特に若葉が男だってことがばれる危険がある。


 けい君がWBSYについてどこまで知っているのか私は知らないんだけれども、彼が私たちのことをあまり外に話さないようにしてもらう必要がある。少なくともこのコンペが終わるまでは。


 でも、私には、なぜ電話をするのがさとみんなのかがわからないのだった。さとみんはなんだか嫌がってるし。


若葉「やっぱり、ここはさとみんでしょ」

和田っち「私がするわけにもいかないし」

紅緒「うん、頼んだわよ」

さとみん「・・・」


 さとみんが携帯電話を出して、連絡をするようだ。


「・・・なんて言う?」

 さとみんがみんなに聞く。


 で、さとみんなのだが、携帯電話ですぐかけてたから、連絡先が登録がされてるみたいだ。


 電話はすぐにつながった。


「あ、けい君、えーと、えーと・・・・・」

 とか、もごもご言っていて、そのうちに和田っちに携帯を渡そうとするさとみんであった。


「しょうがないなあ」

と言って受け取る和田っち。


「あっ、どーも和田でーす・・・さとみんの代わりです・・・ごめんね、実はお願いがあって・・・・・・テレビ見たわよ、もちろんさとみんも見てたわよ・・・・・・うんうん・・・・・・それでね・・・」


 それで、和田っちは、ガールズバンドの大会だからとか、若葉のこととか、女装のこととか、ばれると困るからとか、いろいろとしゃべっている。そして、最後にさとみんに替わった。


「うん・・・明日の試合がんばってね・・・うん・・・無理はしないでね・・・じゃあね」


 紅緒が和田っちに聞く。

「けい君はわかってくれてた?」


 和田っちが指でOKマークを作る。


「本当に大丈夫か?」

 けい君のことをよく知らない私が重ねて聞くと、若葉がもう安心しているように言う。

「けい君だったらうまくごまかしてくれるよ」


 さらに紅緒が私にこそっと小声で言う。

「けい君は、しっかり者だし、さとみんラブだから、大丈夫です」


 は?

 けい君がさとみんラブなの?


 そうすると、もしかして、以前、佐藤さんが言っていた呪われたカップルってこのふたりのことなのかしら?


 確か、さとみんだけが呪われてるって言ってた気がするんだが、いったいどう呪われてるんだろうか?


 気になるんだけれども、ちょっと重そうな話題なので、なかなかこれは聞きにくいことだと思うのであった。




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