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11. つんつんなスレイリーとけらけらなミニミニパフェ


 タイガーキャッツのお姉さんたちと話し込んでしまって、残り時間が少なくなったが、少し練習して5号室から撤収した。


 私たちが廊下に出ると、入口の方から入ってくる一団がいた。


 スレイリーの5人だ。

 ステージではゴシックロリータの衣装で身を固めていた、実力十分の高校生バンドである。

 今日は、普段着なんだけれども、周囲を威圧する雰囲気、というかオーラを見にまとい、その実力から来る自信のためだろう堂々とした態度で、ずいずいとこちらのほうに進んでくるのである。


 私たちに気づくと、全員がこちらを見つめた、というか全員がこちらを睨んだ。


 「えっと・・・」

 和田っちが、雰囲気に押されて挨拶を躊躇していると、スレイリーの一団はこちらを睨んだまま近づいてくる。


「ふっ、カツ丼か・・・」


 すれ違い際に誰かが一言発して、彼女らはそのまま通り過ぎていった。私たちが黙って後ろ姿を見つめていると、スタジオの奥のほうの一室に消えていった。


「なんなんだ。今のは・・・」

 和田っちがつぶやくが、私を含めあとのみんなは呆然として言葉が出ない。


 呆然としていると、背後から声がかかった。


「おほう、カツ丼ちゃんやんか」


 振り向くと、スレイリーに続いて入って来たバンドだった。


「よろしく、私らミニミニパフェや」


 確か関西のバンドだ。よく覚えてないけれども、関西弁で、なんやねん、そうやねん、みたいな曲を歌っていたと思う。


「驚いたやろ。あんたらホテルに居らへんから知らんやろうけど、あいつらずっとああなんねんぞ。ツンツンして、やってられんわ」

「食事の時にも無言やしな」

「ちょっと話しかけたら、慣れ合う気はありません、って言われてもうたんや」

「あれは、なんなんやろうな」

「なんか変な雰囲気なんよねえ」

「いや、ほんまにな」


 言葉がバンバン出てくるので、私らは呆気に取られて、ニコニコと相槌を打つだけだ。


「それより、数少ない高校生バンドや。仲良くやろうな」

「合宿断るっちゅうから、やっぱりツンツンしとるんやないかとか言っとんたんやけど、違うようなんで安心したわ」


 和田っちがやっと話す。

「いや、こちらこそ、よろしく・・・ところで、あなたが『なんやねんちゃん』で・・・」

 若葉が続けた。

「もしやそっちが『そうやねんちゃん』?」


 一瞬、なにをつまらないことを言い出したのかと思ったが、これは、たぶん、和田っちと若葉がかつ丼ちゃんと呼ばれたことに反撃して嫌味を返したのではないだろうか。


「わはは、おもろいな」

「ははは、なんやいったい」

「いやあ、その乗り好きやわ」

「ふはははは」


 でも、ミニミニパフェのメンバーは全員で、そんな嫌味を嫌味とも思わずに、ギャグとして笑い飛ばすのであった。


「かつ丼ちゃんたちとは仲良くなれそうやわ」

「そのギャグ使わせてもろうてかまへんかな」

「おお、いいな、使おう使おう」


 いったいこれをどうやって使うつもりか見当もつかなかったが、ともかく、私もこの子たちとは仲良くなれそうだと思った。




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