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9. はじめてのスタジオ練習

 今日は朝からスタジオで練習である。

 毎日練習できるように、空いてる時間を出来るだけたくさん押さえたら、朝一番の練習が多くなったのである。


 初日ということもあって、九条さんが車で迎えに来てくれた。


「大型のバンって、運転したことないんだけどね。まあね。大丈夫かな?」

 とか言って、不安を煽っていたんだけれども、意外と普通に運転していた。


 スタジオの入り口近くで私たちを降ろすと、九条さんはその車で会社に帰っていった。会議があってお茶を準備しないといけないのだとか。


 スタジオに入るとすぐの所にジュースの自動販売機のある狭い待合があり、その向こうに若い女性がひとりいる受付があった。

 受付の女性が、私たちの方を見ている。


「WBSYです」


 まず和田っちが元気に声をかけ、みんながそれに続く。


「どうも」

「こんにちは」

「よろしくお願いします」

「・・・」


 私たちの挨拶を受けた受付のお姉さんは笑顔で言った。

「あら、おはよう。ダブリューなんとかって・・・あなたたち、カツ丼の子たちね。じゃあ、部屋は5番、時間は2時間よ」


 笑顔でこちらを見続けるお姉さん。説明はそれで終わりのようである。


 私たちみんな練習スタジオってはじめてだから、どうしたらいいかわからないんだよね。


 和田っちが代表で聞く。

「すいません。スタジオって初めてなんで、これからどうしたらいいんですか?」


「はぁ?」


 なんだかあきれ顔のお姉さんであった。


 5号室に連れて行ってもらって、部屋の使い方とか、付属の機器の説明をしてもらって、楽器のセットアップも手伝ってもらって、なんとか練習が始められるようになった。


「じゃあ、これで大丈夫かな?」

 とお姉さん。


「ありがとうございました」

「どうも、すいません」

「・・・」


 去りぎわにお姉さんが笑顔で質問してきた。

「あなたたち、全国大会に出てくるバンドでしょ。今までどんなところで練習してたの?まさか蔵の中とか・・・」


「この子の家のピアノ室」

「私は高校の部室とか・・・」


 そんな私たちの答えを聞いたお姉さんは納得したような感じの顔をします。

「ふむふむ。そういえば、あなたたち数少ない高校生バンドだったわね。いろいろ大変だと思うけど、頑張ってね。あと、わからないことがあったら聞いてね」


 お姉さんが去った後、和田っちが言った。

「はぁ。なんだかあきれられちゃったな」

 若葉が言う。

「やっぱり、予選で勝ち上がってきたバンドってのは、こういうスタジオで練習して、ライブハウスでライブをばりばりやって、地元で人気があったり、自主制作CD作ったり、ネットで曲の配信したりとかしてるバンドばかりなのかな?」

 紅緒も言う。

「初心者なのは私たちだけかも。数少ない高校生バンドだから頑張ってね・・・って言われちゃったし」

 で、さとみん。

「・・・」


 私はお姉さんが最初に言ったことが気になっていた。


「さっき、カツ丼の子たちって言ってたよね」

「ああ言ってた」

「確かに」

「私たちの曲を聞いたんでしょうか」

「・・・」


 たくさんのバンドと曲がある中で、あのお姉さんが私たちの曲を覚えてくれていたことは嬉しいのだが、これから私たちは「カツ丼娘」とか呼ばれちゃうんじゃないだろうか。なんだか心配になってきた私なのである。



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