4. 初日の自炊
初日の夕食の自炊は、初めてのことばかりなので、いろいろとスムーズに運ばない。
まずは買い出し。
「誰が買い物に行く?」と和田っち。
「どこで買ったらいいかわからないです」と紅緒。
「・・・」とさとみん。
「私がいっしょに行くのが一番だけど、この格好であんまり町内をうろつきたくないのよね」と私。
「ふふふふ」
しかし、若葉は不敵に笑うのである。
「どの食材がどこで買えるかはチェック済み。このメモを見ながら行けば、誰でも買い物はコンプリートできるのだよ」
そのメモには、町内の地図と店の位置が細かく書き込まれていた。
「げ、お前、いつこんなこと調べたのさ。」
「最初にここに来た時。姉貴が兄貴で二日酔いで気分悪そうだったから、仕方ないからひとりで調べ上げた。」
あの時から計画していたとは恐るべき弟・・・ではなくて妹だ。
和田っちと紅緒が買い出しに行っている間、若葉が調理器具の確認をする。大学生男子の一人暮らしだったので足りないものがあるかもしれない、とか不安になるが、ひと通りのものは揃っているので大丈夫とのことであった。
フライパンは、趣味で使っている大きな中華鍋があるし、安いアルミ製の巨大な鍋を買っておいたから、それでなんとかなるようだ。
「炊飯器が小さい・・・」
さとみんが気づいたようだが、ひとり用の小さな電気炊飯器しかないのである。5人分の米が炊ける電気炊飯器は重くて持ってこれなかったが、普段私が使っている大きめの鍋で米を炊く予定とのこと。
「鍋で・・・?」
さとみんが不審がる。
「いいか、さとみん。『はじめちょろちょろ、なかぱっぱ、赤子泣いても蓋とるな』だ。」
若葉があたりまえのことを偉そうに言って、米を炊き始める。
興味深そうに見つめるさとみん。
そういえば、料理に興味のないさとみんに料理を教えて欲しいと佐藤さんに頼まれていたっけ。だから、これはなかなかいい兆候だと思った。
「レンジがあればパンも焼けると思ったんだけど、ないから諦めた」
若葉は自宅でひとりでパンを焼いたりとかしてるのかね。
そして、そうこうしているうちに、和田っちと紅緒が買い物を済ませて帰ってきて、その後いろいろと調理がはじまった。
ご飯がちょっと焦げたり、誰かが香辛料の量を間違えたらしくて味がちょっとあれだったりしたが、それなりに満足の自炊の夕食が終わった。
食器の片付けが終わってから、みんなで再び食堂に集まった。
食堂のテレビで、朝香プロデューサーがくれたDVDを見るのである。
朝香さんが「参考にしてね」と言って、渡してくれたDVDには、今回の大会に参加するバンドの地方大会の映像が入っているとのことだった。




