表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/64

21. おたくのお勧めの名曲です

 さて、全員が揃ったところで、みんなが一番気になっている4曲目の進行具合について、さとみんに話を聞くのだが。


「まだ、なんかわからないところがある」

 と、さとみんは言う。いかにも「天才」の言いそうなせりふだと思った。


「・・・」

 それだけ言うと黙ってしまったさとみんを置いておいて、その他の4人で少し話した。


若葉「ボーカルで静かにはじめて、徐々に楽器を加えて盛り上げていくってのはどうだろう?」

千草「じゃかじゃか弾くのは簡単だけど、静かに弾くのは難しい・・・わよ」

紅緒「私、大丈夫かしら。弾けるかしら・・・」

和田っち「私はどう叩いたらいいの?力いっぱい叩いていいの?」


 やりなれない曲想なのか、まとまりが悪い。イメージの共有が必要と思われたので、みんなに聞いてみた。

「ところで、みんなは、静かなバラードでは、どんなのが好き?」


 各人の好きな曲についていろいろと話してみると、みんなそんなにロックンロールを聴いているわけではないようだ。


 そんな話をしていると、紅緒が私に聞いてきた。

「先輩はどのくらい聴いてるんですか?」

「家にCDがいっぱいあるよ」

「この前行った時に見たけど、昔よりますます増えてたね」

 また、若葉は余計なことを言う。

「都会では、中古の投売りでいいのが出ていて・・・ついつい買ってしまうのよ・・・」

「おたくだ」

「おたくですね」

「・・・」

「いや、単なるマニアだから・・・」

 一応、「おたく」は否定しておく。


「じゃあ、おたくのお勧めを教えてもらえますか」

 だから、おたくじゃないから。

「そうだよ、いろいろ持ってきてよ」

「わかった。今度、何か持ってくるけど、なにがいい?」

 いくつかバンド名を挙げる。とりあえずイギリスやベルギーのマニアックなところから・・・


「英語は歌詞とかよくわからないから・・・日本語でお勧めはないかな?」

 和田っちが言う。

「日本語のロック・・・」

 日本のロックは歌謡曲だったりポップスだったりするのが多いので、選択に困るところであるが、いくつかお勧めのバンドはあるにはある。

 とりあえずは・・・


「古いけれどもRRRSなんか良いよ」

「ああ、RRRSね」

 若葉も賛同してくれるようである。


「RRRS?」

「RRRSって、そういえば、前に若葉も言ってましたけど、そんなに良いバンドなんですか?」

「・・・?」

 今の若者は知らないだろうから、ここで少々解説することにした。

「私たちが生まれる前のバンドだけど」


 RRRSとは「ロックン・ロール・ライジング・スター」の略で、これはなんだか今では恥ずかしい名前だと思うのだが、当時はかっこいいと思ったんじゃないかなと思う。当時の日本の音楽界では珍しいことに、ライブハウスのライブとマイナーレーベルから出たレコード盤から急激に人気が出て、その後、本場イギリスでツアーをやって、日本人のバンドでは珍しくイギリスでも人気が出たバンドである。


「どんなバンドなんですか?」

 紅緒が聞く。

「RRRSの曲はうちのレパートリーに入ってるでしょ。この前、弾いた中にあったよ」

「えっ、どれ?」

 みんな知らないんだね。

「『Sunset of Kurima Beach』って、CMで巻六輔が歌ってる曲。もともとはRRRSの曲なんだよ」


 巻六輔は、数々の歌謡曲をヒットさせている誰もが知ってる歌謡界の大御所の男性歌手で、年をとった今でも人気があってワンマンショーを続けている現役歌手だ。コマーシャルとかで良く見かける。

 Sunset of Kurima Beachは、RRRSの曲を彼がカバーしたわけでなく、彼は元々RRRSのボーカルなのである。RRRS解散後に、ロックから離れて、歌謡曲歌手になったのだが、彼のデビューがロックバンドのボーカルだったなんて、今ではみんな忘れてるか知らないんだろうね。


 そんなことや、こんなことを、いろいろと話すうちに、次週には、RRRSも含めていろいろおすすめのCDを、私が選んで持ってくることとなった。


 さて、話をしているばかりではなく、これから徹夜での練習が待っているのである。新しい2曲は、まだそれなりにしか弾けておらず、満足するところまでいってないのだ。みんな必死だ。


 そして、徹夜明けの帰りの列車では、いつも爆睡となるのである。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ