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17. さとみん姉と会って指導を受ける(その2)


 そうこうしていると、活動日じゃないって言っていたのに、部室に人影が見えたから誰かいるかなと思って来てみました、とか言う部員が数人集まってくる。

 佐藤さんからみんなにコスプレ関係の友達ということで紹介されて、まだ誘われたばかりの初心者なので、とかごまかしつつ会話をするが、佐藤さんの後輩という田中さんと向井さんと遠山さんと北野さんは俺のことを、まったく女子と思って話してるようであった。

「じゃあ、私たちこれから行くところがあるからお先に失礼。ちーちゃん、行こう」

 と佐藤さんが話を切るまで、いつ男とばれるかひやひやなのであった。


「で、行くってどこへ?」

「買い物に出るわよ」

 いきなり、女子の格好で町歩きは恥ずかしいというか、困ってしまうのだが。

「大丈夫よ、ちーちゃんは、いつでもどこでも誰が見ても、完璧な女の子よ」

 なんだか、どこかで聞いたせりふだ。

「しゃべるのだって、さっきのを聞いてたら、「私」っていうだけで通用しそうね。

だから、恥ずかしがったり困ったりしないで・・・

ステージにあがって大観衆の前で演奏するんでしょ。

私がこんな熱心にやってるのは・・・それは、そう、『仕事』だからよ。

妹から頼まれた『仕事』だからきちっとやるわよ。

『遊び』じゃないんだから、ちーちゃんも覚悟を決めて、真剣にいきましょう。

あと、それから、百合子・・・池田百合子には内緒よ、言わないから安心して。

妹にきつく言われてますから秘密は厳守です」


 仕方がないので、覚悟を決めて、佐藤さんに従って、電車に乗って佐藤さんの行きつけの店に向かう。周りの人がなんだか、ちらっ、ちらっ、とこちらを見ている気がして、そのたびに、男とばれて変な目で見られているんじゃないかと気になるのである。


 で、服屋に到着。

「えっ、ちーちゃん、なんて言ったの?

サークルの夏の合宿で出し物をするっていう設定って、どういうこと?

女装男が女性の服を買う理由づけ?

ちーちゃんは変なことを気にするのね。

まあ、いいけど」


 佐藤さんは馴染みの店員さんを探しに行く。しばらくすると、若い女の店員さんと二人でなにやら話しながら戻ってくる。


「いらっしゃいませ」

「えーと、今度合宿で・・・」

 全部言い終わらないうちに、笑顔の店員さんが話し始めた。

「夏の合宿で、彼氏がべたぼれするような素敵な服がありますわよ」

 佐藤さんが笑っているのを見ると、何か変なことを店員さんに吹き込んだらしい。

「いえ、彼氏なんていません。実は・・・」

「じゃあ、素敵な彼氏が出来るような服を選びましょうね。

お客様は、きれいだしスタイルもいいし、こんなのはいかがですか?もてもてですよ」

女装男が女性の服を買っているのだが、この店員さんは男だと思っていないようだ。店員さんと佐藤さんにいろいろな服をあてがわれているうちに、なんだか恥ずかしくなってきて、顔がだんだん赤くなってくるのである。


「ちーちゃん、こっちこっち。かわいい下着がいっぱいあるわよ」

 下着売り場に侵入するのは、もっと恥ずかしい。

「これがおすすめ、これが男の子に大人気。これで、彼氏をゲットですよ」

 本当に、のりの良い店員さんである。


 いろいろと試着させられ、時間がかかったが、結局二人の言われるままに、わけもわからず、何着かの服と下着を買うことになったのである。

 バイトやら節約やらで貯めたお金があるのでなんとかなったが、予定外の出費は少々懐が痛む。でも今回はいろいろと事情があるので仕方がない。


 荷物をかかえて店を出ると、佐藤さんが言った。

「ほら、女子だと思われたじゃない。

今のちーちゃんは男じゃないわよ。

女子としての自信を持ちなさい。

では、次の店にいくわよ。

まだいくつか必要なものがあるからね。

あれもこれもこれもあれも・・・

どう、女の子のお買い物って楽しいでしょう。

それでね・・・」


 そのあといろいろな所に引き回されたのだが、佐藤さんは本当に良くしゃべる人で、無口なさとみんとは別人である。いや、姉がこうだと、あまり話さない娘になるのかな。


 佐藤さんと別れて、自分の部屋に帰ってから、買ってきた服をいろいろと着てみた。

 鏡の中の自分の姿を改めてじっくり眺めてみると、やっぱり、私って、女子のこうした服を着ると美少女になっちゃうんだよね、少なくとも見た目はね、と思うのである。

 いろんな服で写真を撮ってWBSYのメンバーにメールで送ったら、当然のことのように、どの写真も大好評であった。




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