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10. 練習でカツ丼をさらにおいしく

 さて、カツ丼ソングの練習は続く。今日はこれから徹夜なのである。


「お姉ちゃん、そこはちょっと変!」

 若葉が演奏を止めて、俺を怒鳴る。

「OKOK。じゃあこんな感じ?」

 俺もちょっと変だと思ったところを、若葉が的確に突いてきたので、怒鳴られようと気にしない。すぐさま弾き直して、若葉と意見の調整をはじめる。

 他の3人は、若葉と俺の遠慮のないやりとりに、ちょっとびっくりしているみたいだ。


 また、曲の別の部分で俺が提案する。

「ここは、こうしたらどうだろう」

「えーと、千草姉ちゃん・・・そこはちょっと・・・」

 と若葉から反対の意見がでる。また、意見が対立する。

「やってみないとわからないから、合わせてみよう」

 和田っちの号令で、皆で弾いてみる。

 一度じゃわからないので、もう一度・・・

「どうしようか迷う時は、もう一度だ」

 和田っちの号令で、さらに、もう一度・・・


 こんな感じで、練習は進んでいった。

 このメンバーは、お互いに好きなことを言い合って、演奏を作っていける仲間であるな、と思った。

 こっちに来る前に、この曲についていろいろと考えていたことはだいたい言い尽くした。それらに対して賛否があったが、どれも、納得するところに落ち着いた。

 個人的には、徐々にカツ丼がいい方向でまとまってきているような気がした。


 ひとくぎりついたところで、紅緒さんが話しかけてくる。

「兄弟で・・・あっと・・・姉妹ですか・・・ふたりで息がばっちり合ってますね」

 そう言われて、血のつながった兄弟というか姉妹というかだからね、とか、長年の付き合いだからね、とか言おうと思ったが・・・

「でも、若葉と一緒に演奏するのは、確か、初めてだよ」

「えっ?」

「若葉は合唱団でピアノでクラシックだったし、俺・・・私はバンドでギターでロックだったし」

 それを聞いて、若葉が言う。

「美登里姉ちゃんと連弾したり一緒に歌ったことはあるけど、千草姉ちゃんとは、そういえばないね」

「姉貴の伴奏をした記憶はあるよ。でも、若葉とはないわ」


 紅緒さんが聞く。

「お姉さんがいるんですか?本物の・・・」

 若葉から聞いてないのかね。でも姉がひとりいるというところまでは、別に隠す必要はないでしょう。

「ひとりいるんだけど、ずいぶん昔に母と意見が合わずに家を出ちゃったんだよ」

 姉貴とは最近話してないので詳しいことはわからないが、元気でやっているということはいろいろなところから聞いている。

 若葉に聞くと、最近いろいろと忙しいらしくて連絡がないとのことであった。

「2人の姉さんだと、すごい美人だったりして・・・」

 と、すぐ突っ込んでくる紅緒さんは、なかなかするどいね。

「そう、すごい美人」

 と若葉は即答するが、若葉は小さい時から大事にされてたから、たぶんよくわかっていないと思うので、俺が多少修正しておくことにした。

「性格がああでなきゃあ、もてもてだろうになぁ・・・ってみんなから言われてたんだよ」




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