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霊感ホスト  作者: かなえ
PR
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9








「なによ・・・」


まだ眠っているようなむくれた顔で玄関から顔を出したパジャマ姿の美雪に鷹矢は腕を組んで上から下まで眺めて

ため息をついた。


「もう14時過ぎてんだぜ、何時間寝るつもりだよ」

「うるさいわねぇ・・・疲れてんだから・・・」

もう少し寝かせてくれといいながらドアを閉めようとすると、強い力で押さえつけられる。


「お前暢気だな、あと8日で俺達死ぬかもしれないんだぞ。寝ている暇などあるか」

「だって、どうすりゃいいのよ」

まだ眠っている顔の美雪に鷹矢は写真をヒラヒラさせる。


「オレのツテを使って、この駅がどこかわかったぜ」

「・・・駅なんてどーでもいいでしょ」


ぼーっとした様子の美雪にため息をついて鷹矢は勝手に部屋に上がりこむ。

止めることもせず、美雪もフラフラと玄関から部屋へと入ってきた。


「きたねぇ部屋だなぁ」


飲みかけのペットボトル、食べかけの弁当が机に置かれている。

ご飯がカチカチになっているところを見ると、時間がかなりたっているようだ。


「だって、片付ける前にあの霊がいるから怖くてなにもできないわよ」


ヤットのことで目を開けている美雪は初めて鷹矢の雰囲気が何か違うことに気づいた。


「スーツじゃないんだ」

「今日は仕事休みだ。そんなことより、顔でも洗って来い。目覚めるだろ」

「ん~」


黒い細身のスーツではなく、色あせたジーンズにピタピタの黒いシャツ、ジーンズには銀のチェーンがつけられている。

首にはなぜか長いストールが巻かれていた。

最近の流行なのだろうか。

どうも流行はわからないと呟きながら、顔を洗うべく洗面所へと向かう。



「で?何?」


スッキリした顔で戻ってきた美雪にやっと話しができると鷹矢は腐りそうな弁当をよけて写真を机に並べた。


「順番に意味を考えたんだ」

そういって、順番通り写真を並べる。


ビル、エレベーター、地下鉄の駅、学校、学校の机に置かれた花、パソコン。


「えーっと、まず、ビルは意味不明。エレベーター意味不明」

そういって写真をはじいていく。


「なんにも解ってないじゃない・・」

ジトッと睨まれて、鷹矢は咳払いをした。


「で、地下鉄の駅なんだけど、これ、幻の駅らしい」

「幻の駅~?」

「そう、作ったけど結局使用されてない駅。東京の地下にはそういうのゴロゴロしているらしいぜ」



「都市伝説の見すぎじゃないの?」

「本当だって」


「ほら、よくあるじゃない。都市伝説で戦時中、物資を運ぶ為にあった路線とか、主要人物が逃げる為に地下に専用の

線路があるとかでしょ?」




「そう、それそれ、都市伝説なんかじゃなくて、実際あるの。

で、ここは多分 東京の地下鉄でとある駅と駅の間にある幻の駅なんじゃないかって言ってた」

「駅の名前をちゃんといいなさいよ」

「ま、それは置いておいて」


鷹矢は適当にごまかして写真をずらした。

「学校の写真は、明子が自分がここに通っていたって知らせたかったからかなぁと・・」

「机の上に置かれた花は?」

「もう、死んでますよ・・・かな?」

不吉なことを言う男の顔をみると自信なさそうに写真を眺めている。



「・・・はぁ、結局何が言いたいのよ」

「この駅に行こうっていいたいの」


写真を持って言う鷹矢に美雪は諦めた様子でうなずいた。


「それしか手がかり無いんじゃしかたないよね」


「じゃ、行くぜ。この家、茶すらでないしな」


小さなキッチンを指差して美雪は鷹矢に冷たく微笑む。


「どうぞ、ご自由に入れてください」

「もてなしの心が足りないな。ったく、オレに茶入れさせる女なんてお前が初めてだよ」

「恵まれすぎてんのよ、今までが」

「オレが茶のみ終わるまでにしたくしろよ」


勝手にテレビをつけて言う鷹矢を見ながら着替える為に寝室の扉を閉めた。



「そのピンクのジャケット派手じゃない?」


助手席でボリボリとお菓子を食べている美雪をチラリと見て言う鷹矢。

昨日も同じジャケットを着てたなと思いながらハンドルを握る。

ジャケットの下は黒いプリーツスカートにブーツという普通の格好なのだが、ピンク色のジャケットはどうなのだろうかと

疑問に思っていたのだ。


「いいじゃん。可愛いでしょ?この色」

「ショッキングな色だよな。目がいてぇよ」

「サングラスしているから痛いはず無いじゃない」

「しかも、オレの車でスナック菓子食うとか・・カスが落ちるだろうが」


嫌そうな顔をしている鷹矢にお構いなしと2袋目”チキンラーメン”の袋をあけた。

またボロボロ落ちそうなものをと思いながらハンドルを握る。


時刻は17時半。

すでに日は落ちている。


ダッシュボードの上に置かれていた鷹矢の携帯電話が着信をしらせる音楽が鳴った。

ピコピコと電気が点滅している。


「聖って人から電話だよ」


スナック菓子を食べていた手で携帯を持ち上げる美雪。


「運転中だから、お前出て」

「えっ?」

「大丈夫、お前のことは聖さんには伝えてあるから」


何を話しているのか多少の不安を抱えつつ、通話ボタンを押して受話器に耳を当てる。


「お待たせしました。鷹矢オーナーの携帯です」

『・・・もしかして、美雪ちゃんかな?』


低くて優しげな声が携帯から聞こえてきた。

「は、はい」

色っぽい声に美雪の顔が赤くなる。


『鷹矢は運転中?』

「は、はい。そうです」

『あとどれぐらいで目的地につきそう?』

「ちょっとお待ちください。ネーどれぐらいでつきそう?」


鷹矢は前を向いたまま短く答えた。


「10分ぐらい」

『もしもし、10分ぐらいだそうです」

「そう、オレたちももう着いたからって伝えておいて」

「は、はい」


顔を赤らめて美雪は携帯電話をきった。


「なぁーに、顔あかくしてんだよ」

「聖さんって、すっごくイケメン声じゃない?」


いつもより高めの声を出している美雪にげんなりしつつハンドルをきった。


「声だけじゃなくて、全部がイケメンだ。王子様って本当にいたんだぁ~ってオレ思ったからな」

「いやーん。すっごく会いたい」


乙女モード全開の美雪は鞄からお化粧道具を取り出して化粧直しを始めている。

今更化粧しても無駄だろうに思いながら、カーナビの音声にしたがってハンドルを切った。



「おら、着いたぜ」


同じ種類のベンツの後ろに車を停めて車のエンジンをきる。

助手席に座っている美雪の顔を何気なく見ると、お化粧直しを一生懸命していたわりにはどこが変わっているのかさっぱりわからなかった。

鷹矢が車をおりると、スーツ姿の男が通りの向こうから手を上げているのが見える。


「あれが聖さん?」


鷹矢の隣に並んで歩き出した美雪に聞かれて鷹矢は首をふる。


「いんや、聖さんの店のNO1ホスト 愛紀だ。聖さんはその隣に居る金髪の人」


歩きながら通りの向こうにはスーツ姿の男が数人立っていた。

スーツ姿といっても、サラリーマンという雰囲気ではない。

夜を生きる男の姿だった。

金髪の人が聖さんといわれても、遠すぎて顔は見えない。


「聖さんもホストなの?」

「オレと同じように裏方。オレの店は聖さんに任されているの。オーナーっても聖さんに雇われているってかんじかな」

「へぇ・・・凄いのね」

「聖さんは、オレより凄いぜ。歌舞伎町では伝説化しているからな」


髪の毛を整え始めた鷹矢を見上げる美雪に緊張気味に言う。


「一応、上司に会うんだしキチンとしておかないとな」


鷹矢にそこまで言われると美雪も自分の格好がおかしいのではないかと不安になって聞いてみる。


「あたしは変じゃない?」


「顔が変。ピンクのジャケットが変」


姿もみないで言ってくる鷹矢の背中を思いっきり叩いてやる。


「酷いじゃない」

「本当のことだろ」


横断歩道を渡ると、一人の男がニヤニヤと笑いながら話しかけてくる。

スーツ姿に茶色い髪の毛はスプレーで固められている。

「仲いいじゃねぇか。鷹矢のホンカノ?」


意味ありげにチラリと見られて美雪は首をかしげた。


「ホンカノ?」

「本当の彼女?って意味」


ご丁寧にニッコリと笑って意味を教えてくれる。

「この人が、NO1ホストの愛紀」


鷹矢が面白くなさそうに、ニコニコと笑っている愛紀を紹介した。

「・・・NO1ホスト・・・ねぇ」


フェロモンを振りまきながら微笑んでくる愛紀を見て美雪は納得して頷く。

このフェロモンと話術があれば通う女もさぞ多かろう。


「こんばんは」


愛紀の後ろから金色の髪の毛の男が微笑んでいる。

アノ人が聖さんかと一目でわかった。声も電話で聞いたのと同じ、低くて男前の声だ。


「こ、こんばんわ。み、美雪と申します・・・」


鷹矢と違ってサングラスをしていない聖の顔をみて体が固まる。

王子様って本当にいるんだ。


鷹矢と同じ感想を言ってしまいそうになって慌てて飲み込んだ。

キラキラと外灯に当たって輝いている金色の髪の毛は間違いなく生まれながらの色だと解る。

瞳の色も、不思議な緑色。

そして、整った顔。


まるで人形のような人だ。


「おい、固まってんじゃねぇよ」


鷹矢が肘で突っつくと夢から覚めたように美雪はハッとして辺りを見回した。


「あれ、あたしなんでここに着たんだっけ?」

「聖さんに見とれて我を忘れたか」


呆れた口調の鷹矢に顔をあかくする。


「・・・・ゴメン」

「誰でもそうなるよな。まったく、こんな漫画みたいな人間がこの世に存在するなんて神様も酷いことをするよなぁ」


愛紀は両手を広げて肩をすくめる。

「オレなんて、がんばって女を落とす勉強して。顔だって悪いほうじゃないんだが、聖さんと鷹矢と並んだらオレってかっこよくないのかも

ってたまーに落ち込むんだぜ」

そういって、白い歯を見せて笑った。

つられて美雪も笑ってしまう。


「本題に入ろう」


聖が言うと、愛紀と鷹矢は背筋を伸ばして頷く。


「例の写真の駅を調べたところ、使われていない地下鉄の駅ではないかという説が強い。どうせ、鷹矢のことだそこに行きたいんだろ?」


聖が言うと鷹矢はうなずく。


「手がかりが少ないので、判明した場所から調べようかと思ってます」

「うん。その駅に行くには、線路を歩いていくのが一番いいと思うけど列車が頻繁に通っているみたいだから行かれないんだよね」


面白そうに言う聖に鷹矢は苦笑する。


「秘密の通路へと通じている道を特別に教えてもらった。これは他言無用だよ」

そういって背広のポケットから鍵を取りだして美雪に渡す。

キーホルダーすらついていない鍵を受け取って美雪は聖を見た。


「なんですか?この鍵は」

「どんなドアも開く不思議な鍵」

「はぁ?」


首を傾げる美雪に慌てて鷹矢が間に入って頭を下げた。

「ありがとうございます」

「で、コレが地図」


5枚のA4のコピー用紙を見ると細かく書かれた通路にピンク色のマーカーで線が引かれていた。

駅までの通路を解りやすくしてくれているようだ。


「・・・・ちょっとまって、もしかしてここに今から行くの?」


ところどころに電車注意やら、細い道注意など書かれているのを見て不安な声をだした美雪に愛紀が気の毒そうな顔をした。


「大変だよなぁ。俺達は地下には行かないけど、地上でサポートする予定ではある」


「サポート?」

不思議そうにしている美雪に愛紀は懐からトランシーバーを取り出した。


「これで連絡を取り合う予定。ちゃんとしたヤツだから地下でも大丈夫だとおもうんだけど」

「・・・・地下でも無線って通じるんですか?」

携帯電話も怪しいのに。


「大丈夫、許可とっているから」


平然と言う聖に美雪は鷹矢を振り返った。

何も言うなよという顔をしてこちらを見ている。


「じゃ、行くか」


愛紀と聖が歩き出したのを慌てて着いていく。


「ちょっと、地下に行くなんて聞いてないんだけど」


隣を歩く鷹矢を睨みつけながら前を歩く聖たちに聞こえないように出来る限りの小声で美雪は言った。


「言ったじゃん。俺」

「スカートはいてきちゃったよ。着替えたいんだけど・・」


プリーツスカートにブーツ姿の美雪を見て鷹矢は困ったように頭をかいた。


「着替えなんて持ってきてない・・・よな」

「あたりまえでしょ」

「うーん。そんなに大変な道じゃないだろうから大丈夫だと思うよ」


「絶対ウソ!アンタ一人で、ラフな格好じゃない!スニーカーだし。スニーカーなんて普段はかないんでょ?」

「悪かったって!でも、普段のオレはこんな感じよ!?地下に行くからとか、けっこう歩くからってこんな格好なんじゃねぇーからな」


「何ケンカしてんだよ。お前ら本当に付き合ってないの?」


ポケットに手を突っ込んでニヤニヤ笑いながら振り返った愛紀に二人は同時に声をあげた。


「付き合ってない!」


「ふーん。アランもお似合いだって言ってたけど」


「アランってば、何勝手な事いってんの?」


頬を膨らませて言う美雪に鷹矢もまったくだと頷いた。

そんな二人を見て 愛紀は「お似合いじゃん」と呟いたが二人には聞こえなかったようだ。




雑居ビルが並んでいる通りを歩き、小汚いビルの前で聖と愛紀は立ち止まった。


「ここですか?」


鷹矢が言うと聖は頷いた。


「このビルから地下鉄の線路に通じる道にでれるみたいよ。後は地図どおりに行けばいいと思う」


ビルに入っていく聖に続いて、美雪たちも入る。

人の気配が全くしない建物だ。

一階から薄暗い階段を使って地下一階へと降りる。

エレベーターなどは無いようだ。


地下へと降り、すぐ右手の部屋へと入る。


「お疲れ様です」


ノートパソコンに何かを打ち込んでいたのをやめて慌てて立ち上がり頭を下げた人物を見て美雪は声をあげた。


「アラン?どーしてここにいるの?」

「ヘルプにきました」


「ヘルプ?」

アランも鷹矢もこの場にいるということは店は大丈夫なのだろうかと不安に思いつつ、改めて部屋を見渡す。

錆付いたディスクが4つ合わさって部屋の中心に置かれており周りにパイプ椅子。


資料室なのだろうか、埃をかぶった棚が並んでいる。

棚にはファイルが置いてあるが、倒れて中身が飛び出しているものもあった。

良く見れば床にもファイルが落ちており紙が散乱していた。

机の上にはパソコンが数台置かれており、見たことも無い器械も沢山置かれていた。

配線の束に足を引っ掛けないように部屋へと入る。


用意されたパイプ椅子に座って改めて部屋を見ている美雪に聖が言う。


「ここは倒産した会社のビルなんだ。僕が買い取った」


「買いとったぁ?」


思わず大きな声が出てしまい、自分の口を塞ぐ。

「す、スイマセン、驚いちゃって」

「この人は偉大なんだ。お前イチイチ驚いてたらキリないぞ」


どこから持ってきたのか黒いヒップバッグに道具を入れながら鷹矢は馬鹿にしたように笑っている。


「机と椅子はこのビルにあったものなんですけど、無線が通じるようにここに基地をおくんですよ」

「はぁ・・・」


アランがペットボトルのお茶を紙コップに入れて美雪の前に置く。

机の前で荷物を入れている鷹矢の横にも紙コップに入れたお茶を置いた。


「美雪ちゃん、ちょっといい?」


机に地図らしきものを広げて聖が呼ぶ。

「は、はい?」


状況についていかれなくなっている美雪はフラフラと聖の横に座った。


「今居る場所がここなんだ」


綺麗な指で指された場所には青いペンで基地と書かれていた。

そのまま指はマーカーで引かれた線をなぞっていく。


「この部屋から地下に通じる道がある。そこから出て行って、階段を降りていくと東京駅の真下に出るんだ」

「・・・はぁ」

「東京駅に着いたら、普段は使われていない従業員用の通路がある、その通路を通ってまた地下に降りる。そこまでいけば渡した地図だけで

も大丈夫だと思う」


「・・・」

不安そうな美雪を励ますように、聖が微笑んだ。

金色の髪の毛がキラキラと輝きながら揺れた。


「大丈夫。鷹矢は強いし、僕達も無線でサポートするから、地下で迷子になることは無いよ」

「迷子って・・・そんなに複雑な道なんですか?」


「迷宮っていわれているらしいぜ。オレも行きたかったけど負担になるからって断られたぜ」


面白そうに言う愛紀に不安になり鷹矢を振り返った。


「やっぱり、ここで待ってる」

「なに言ってんだよ」


鷹矢はギロリと睨みつけると美雪に鷹矢と同じヒップバッグを渡した。


「オレは霊と戦えるが、霊の声は聞こえない、お前は霊の声を聞くことが出来る」


「美雪さんも一緒に行かないとダメなんですよ」


アランは机の上に置かれたパソコンを叩きながら言った。

パソコンの画面は見たことも無いソフトが立ち上がっている。

すべて英語表示だ。


「美雪ちゃんが安心して行かれるように、機材を揃えたんだ。鷹矢一人だったらここまでしないよ」


美雪の肩をポンと叩いて聖はニッコリと微笑む。

緑色の不思議な瞳を見つめていると不思議と不安が無くなり美雪は頷いていた。

「このまま何もしなかったら8日後にしんでしまうかもしれないんだろ?」


そうだ、あと8日しかない。

だまって、死を待つなんてバカバカしい。

美雪は頷いて自分の手を握り締めた。


「死にたくないんで、行きます」

「僕達もサポートしますから。無線が通じるようにここに機材を運びましたし。GPS機能も搭載したんでどこまで追えるかわかりませんけど」


そういって、アランは無線機を美雪に渡す。

携帯電話より少し大きい黒い無線のボタンを指差した。


「話したいときはこれを押すんですけど、イヤホンをつけるんで、コッチのボタンを押してください」

そういって、イヤホンを渡す。

耳に引っ掛けるようにイヤホンをセットし小さいマイクを上着の襟につけた。

ザザッというノイズが一瞬交じり 耳からアランの声が聞こえる。


「美雪さん聞こえますか?」

「聞こえた!」


思わず喜んだ美雪にアランは眉を潜めている。


「ノイズ混じりますね。マイクも喉に付けるやつがよかったですかね・・・・外の音拾っちゃいませんか?」

「そこまでこだわる必要ないだろ?」


鷹矢も無線を耳につけてヒップバッグをベルトの上から腰に巻く。

普通の若者がする格好だが、鷹矢がするとどこかお洒落にみえるから不思議だ。


「あら、鞄は前にしたほうがお洒落よ」

「オレは秋葉に居るオタクか!」


美雪と鷹矢のやり取りを見ていた聖がクスリと笑った。


「本当に君達は仲がいいね」



「仲良くありません!」


ハモっていう二人にアランと愛紀は笑う。


「仲いいですよ」


愛紀は二人を指差した。

「ユー達付き合っちゃいなよ」


「うるせぇ!」


嫌そうな顔をしている鷹矢が面白いのか腹をかかえて笑っている。


「準備は大丈夫ですか?」


アランに言われて美雪は頷いた。


自分の鞄から財布と携帯電話、はんかち、ティッシュそして化粧品を渡されたヒップバッグに入れ替える。

無線機を入れているとアランが冷たいペットボトルのお茶と水、チョコレートと乾パンを渡された。


「こんなに入らないんだけど・・」

「一応、1日分ぐらいの食料を持っていってください」

「・・・・・」


念を押すように言われてますます不安になり美雪は言われたとおりヒップバックに渡された水と食料を入れた。

すでにパンパンになっているヒップバックを肩からたすきがけにして提げた。

鷹矢と同じ鞄なはずなのに、鷹矢の荷物は少ないような気がする。


「あんた、ちゃんと荷物持ったの?」


「お前より装備は持っているし完璧だけど」



「20時だ」


聖が腕時計を見ていった。


「作戦開始しよう」










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