逃した魚と罰ゲーム
「ずっとあなたのことを見てました。大好きです。付き合ってください」
村瀬くんは驚いたような表情をして、言葉を返した。
「あ、ありがとうございます。・・・よろしくお願いします」
緊張した面持ちで交際を了承していた。彼のことは好きではなかったが、どうして告白するに至ったか、その原因は数週間前に遡る。
―――――――――
「最後にジョーカーを持ってた人が罰ゲームね」
ある女子の声が響く。
数週間前、私たちはある男子グループとババ抜きで遊んでいた。そのゲームで負けたのが私。どんな罰ゲームにするか話し合うと、嘘告するということになる。その翌日、ターゲットを誰にするか決める話し合いが行われ、例の男子グループと話した結果、ターゲットは村瀬司くんになる。彼ら曰く『あいつは暗いし何も言わないから大丈夫』とのことなので、彼が日直の日、放課後に作業で残っているところを突撃して告白することになった。
―――――――――
「あ、ありがとうございます。・・・よろしくお願いします」
告白が終わったら、みんな出てきてタネ明かしをする予定だったが、教室の外で面白がっていたらしく、後日ニヤニヤしながら、
「付き合えばいいじゃん」
と言われてしまう。それは夏休み前のコトだった。
私は村瀬くんとあまり話したことはなかったが、罰ゲームとは言え表向きは付き合っているので、暇を見つけては色々とお喋りすることにしていた。そうしていくうちに、人となりを知るようになり―――決して明るいとは言えないけど、暗いわけでもなく、物静かで、静寂を愛し、それでいて面白い人―――惹かれていくのが手に取るように分かっていく。それから彼と付き合ってると思われるのは、なんとなく嫌だったので学校ではあまり会話することなく、一緒に登下校することもなかった。
村瀬くんも『ごめんね』と言って協力してくれる。静かで不器用なだけで、ホントは優しい人だと気づいたら愛おしく思い、罰ゲームであることに少しだけ罪悪感を感じるようになっていた。
そんなある日、村瀬くんとデートに行くことになる。彼に惹かれつつあったので『罰ゲーム』であることを忘れかけていた。
二人で時間をかけて色々と調べ、水族館に行くこととなり、そのそばにプラネタリウムがあったので、午後はそこに行く計画を立てる。そしてデート当日、私はお洒落をして出かける。村瀬くんが「かわいい」と言ってくれて、嬉しく思うと同時に私はその言葉を忘れることはないだろう。それに、村瀬くんがさりげなく手をつないでくれて、とてもドキドキした。私の方を見て『ヘヘヘッ』と照れくさそうに笑ってたのがかわいくて、思わず私も照れてしまったのを覚えている。
水族館の全順路を制覇し、プラネタリウムに行こうとしたが始まるまでに時間があったので、時間を潰すためしばらく駄弁っていたが、司くんが飲み物を買ってくると言って私をベンチに座るよう促す。彼が自販機に行ってるとき、大学生くらいの人たちに絡まれてしまった。タイミング良く司くんが戻ってきて、普段はおとなしいので大丈夫かなと思ったけど、
「やめてください、僕の彼女です」
って普段の柔らかい表情と違うキリッとした表情でナンパを止めてくれたのだ。
そしたら、私をナンパしてきた人たちが退散したので思わず見惚れてしまった。ホントにかっこいいと感じた。そして、その直後に司くんが
「はぁ~、緊張したぁ。メチャクチャ怖かったんだけど」
とか言って若干涙目になってるのを見て、
(かわいすぎかっ!!)
と感じてギャップでハートを掴まれてしまい、抱きしめて耳元で「ありがとう」と囁いた。それから、ご飯を食べてプラネタリウムを見に行く。プラネタリウムでは上映中ずっと手を繋いで、とても幸せだった。そして帰り道、駅に着いたら司くんは、
「また、りっちゃんがナンパされたらヤだから!!」
と言って、一緒に帰ろうと誘ってきたが、同級生に見られるのが恥ずかしくて断ってしまう。
夏休みになり、浴衣を着て花火大会に行き、他愛もない話をしていると、司くんがさり気なく手をつないで
「また来年こようね」
って言ったんだ。それで私は、
「うん!!絶対!」
と返事をして、大型テーマパークに行き、お揃いのキーホルダーを買う。司くんの家にお邪魔して、一緒に勉強をしたりテレビゲームで遊んだりした。夕飯も司くんの家で食べて、お母さんに
「地味な子だけどよろしくね」
と言われ、絶対に大切にしようと誓う。この頃には罰ゲームであることを忘れて、本気で司くんのことを好きになっていた。そして、ジェットコースターのように
充実した夏休みが終わり、学校が始まる。校内では例のグループと一緒にいたので、司くんと全くと言っていいほど絡むことはなかったけど、毎日の電話は欠かさずしていた。週末にはたまに学校の人にバレないように遠出をして二人で出掛けたりした。
そして十一月、私の誕生日。今年も例のグループで祝ってくれるとのことだったが、『今日は親戚が祝ってくれる』と嘘ついて、司くんとデートした。普段は割り勘なのにこの日は司くんが全部お金を出してくれて、
「バイトで貯めた」
と言い、私のために頑張ってくれたと思うとすごく嬉しかった。プレゼントについては何がいいか分からないからと
「一緒に買いに行こう」
と誘われ、ペアルックのシャツを買う。この日は間違いなく、人生で最高の誕生日だった。
周囲の人に隠したまま付き合い続け、その数日後には例のペアルックを着て某夢の国に行き、無理矢理カチューシャをつけさせたりした。あの時の司くんはテレテレしていてサイキョーにかわいかったなぁと思っている。
そして十一月下旬のある日、私は例のグループの男子に呼び出されて、
「まだあいつと付き合ってるの?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。このとき私は変なプライドが邪魔して、意地になってしまった。だから、よせばいいのに、
「もう別れたよ」
と伝える。このときの行動が悪手だと言うことには、まだ気付いていない。
それから時は過ぎクリスマスになり、司くんとデートをすることになったのだが、学校では話さないようにしてたので、現地で待ち合わせをすることにした。いつものように別々に学校を出て、デートスポットに向かおうとしたとき、ある男子に呼び止められる。例のグループの男子が私と遊びたいと言い、数人で誘ってくる。彼以外にもグループの男子がいて、断り切れずに流されてしまう。このとき『ホントは司くんと付き合ってるの』と言うべきだったのに、言わずにそのまま流してしまった。いや、バカにされると思ったから言えなかったのかもしれない。そして、ズルズルと、結局その男子たちと一日遊んだけど、驚くほど楽しくなかったので、途中で抜け出してしまう。今日は司くんと初制服デートだったから、『ホント何してんの?』って感じだ。
「家族と一緒になったからごめん。明日にしよう」
と司くんには電話で伝えた。残念そうにしてたけど了承してくれた。そして、翌日に全てがバレてしまう。
次の日、例の男子が私と遊んだことを、友達同士で話してて、それが司くんの耳にも入り、どういう訳か直接彼に問いただしたらしいのだ。
「僕の彼女と遊んだってどういうこと?」
みたいな感じで。そしたら、
「お前さぁ、あれは罰ゲームなんだよ!アイツがお前と付き合うはずがねぇ」
と言ったらしい。私はそんなことを知るはずもなく、司くんに話しかけようとしたら、
「今日は遊びたくないんだ。ごめんね」
と言ってきたのでどうしたんだろうとか呑気なことを考えていた。そんな風に思ってたら例の男子から、自慢するようなチャットが届いて全てを悟る。
その夜、私は急いで司くんにチャットした。
『告白は罰ゲームだったけど、付き合っているうちに好きになっていったこと』
『司くんの家に行ったとき、絶対に大切にしようと誓ったこと』
『変な意地張って付き合ってるのを隠してたけど、離れたくないこと』
色々書いて送る。でも返事はなかった。翌日、司くんは学校に来なかったので、直接謝るしかないと思った私は、学校が終わってすぐに司くんの家に行ったのだが、妹が出てきて、用件を言うも警戒心が強く門前払いされてしまい、自分を取り繕おうと必死であったが、取り付く島もなく撃沈してしまった。
それから、その日の深夜に
〈暗い僕と付き合うわけないですよね、浮かれて迷惑でしたよね。ごめんなさい、今まで楽しかったです。ありがとうございました。それと、明日からちゃんと学校に行くので、僕のことは気にしなくて大丈夫です。〉
とチャットが来る。私の反応は
『どうして司くんが謝ってるんだろう』とか
『なぜ謝らせてしまったのか』とか
『なんで怒らないんだろう』とか
『どうしてこんなにも優しいんだろう』とか
『これまでのデートのこと』とか、
色々思い出してしまい悲しくなってしまい涙があふれた。
しっかり自分の想いを伝えようと思って電話をかけるが、ブロックされているようで繋がらず、結局それがきっかけで司くんとは疎遠になってしまう。そして、そのまま高三になり、司くんと同じクラスになったので話しかけようとした。様々な思いが駆け巡り緊張してしまう。不自然になってしまった。実際に話してみると多少の違和感はあったが。思っていた程ではなかったので、私的には話し相手程度になれたとは思う。
それから、司くんと話をして分かったことがある。それは、彼と仲の良い子が罰ゲームのことを知らなかったということだ。司くん曰く『なんかそういうのって後から言うと、負けた気がするから嫌なんだよね。別に君の為じゃないから』とのことで、性格イケメンなのにどうして手放したりしたのかと、自業自得ながら落ち込んでしまい、なんとか友達になるまで信頼を回復させたように思う。
司くんと別れてから、彼に影響されて漫画とか新書を読むようになっていたので話題に困ることはなかったが、受験生なので司くんとは何も進展はなく、友達って感じのまま夏休みに突入する。
夏休み直前の面談で、『このままだと第一志望校に受からないぞ』と先生に注意を受けていたので毎日十二時間近く勉強していた。そうして、勉強しているうちに司くんと去年約束した夏祭りの時期になってしまう。今年は夏祭りに行くことはなく勉強しようとしていたのだが、司くんからお誘いがあり気分転換に羽を伸ばそうと思い行ってみる事にした。結果的に、いい気分転換になったので約束を忘れていなかった司くんに感謝しながら、勉強を続けた。それだけで受験勉強の励みになった。私は楽しみで眠れなくなってしまい浴衣を着て待ち合わせ場所に向かう。司くんは、浴衣を着て待ち合わせ場所で待機していた。世間話をしながら、夏祭り会場に行くと、嬉し過ぎてはしゃぎ倒してしまった。そして、今回恋人でないのが悔やまれた。夏祭りが終わって帰るときになり、ホントは帰りたくなかったが、受験生だから、勉強もしなくちゃいけないし、遊んでる余裕ないし、私たちは恋人ではなかったから、帰らなくてはならなかった。そして、司くんが『一年前の約束』を果たしてくれたことは、何よりも嬉しかった。
そんなことがあり、夏祭りが終わったので地獄のような受験勉強の日々が再開する。そして、全国的にも有名な模試でC判定を取り首の皮一枚つながった。夏休みが終わり学校に行くと、司くんがイメチェンをしており、肩のあたりまで伸びていた髪を耳が出るくらいまで切っており、さらに眼鏡がコンタクトに変わっていた。急に雰囲気が劇的に変わり驚いたのだが、司くんの顔はどちらかというと中性的で、かわいい顔立ちをしている。髪を切ってからは、女子にも男子にも告白されて困っているようだった。
秋になり成績が上がってきてたが、数学が苦手で司くんに教えてもらっていた。時は過ぎ去り一月になる。私はこの時までB判定に乗ることはなくギリギリで、司くんは夏からずっとA判定だったから、余裕で受かるラインだった。今度は私が誘い初詣に行く。表の理由は合格祈願、裏の理由はもちろん恋愛成就。
こっそり恋愛成就のお守りを買い受験が始まった。当日は滅茶苦茶緊張したけど、司くんがチャットで勇気づけてくれて、なんとか乗り越える事が出来たが得意科目の方があまり出来なくて『やらかした』と思ったけど自分の頑張りを信じて、合格発表の日を迎えた。一人では怖かったから、司くんと一緒に合格発表を見に行く。まずは、私の番号を探した。結果は合格。次に司くんの番号を探すがどこにも見当たらなかった。ずっとA判定だったのに信じられなかったのだが、
「おめでとう!」
と笑顔で言ってくれたのだが、全然うれしくなくて、その笑顔が余計にツラく感じた。
自分の努力が実って嬉しい反面、罪悪感もありつつ、煮え切ることのない思いを抱え、私は新天地へと踏み出した。
大学は離れたけど交流は続いた。しかし、恋人ではなく友達としての交流だったからそこまで強固な繋がりではなかった。あんなことをした私が本当のことを言ったとしても、受け入れてくれるはずがないと思い込み、そういう感じで疎遠になるくらいなら、今のままで十二分に満足だった。
そんなことを思っていた矢先、司くんがある女の子と親しくしている様子がソーシャルメディアで流れてくる。講義やサークル、小説の話とか色々していて、嫉妬に近い感情を抱いた。私が知ってる限りで、司くんが趣味の話をしてる女は私しかいなかったから、ヤな予感がしたのだ。その子と司くんはどんどん仲良くなっていき、動物園とか、水族館とか、二人で行った時の写真をソーシャルメディアに上げるようになっていく。
そんなある日、司くんから私に『僕、好きな人が出来たかも』と連絡があった。ショックが強かったけど取り乱すことはなく、彼の恋愛相談を受けるようになっていく。司くんはお洒落をするようになり、私はその子がうらやましくなって、ヤキモキした思いのままでいた。司くんは『付き合うことになった。色々とありがとう』と伝えてくれたのだが、それに対する私の想いは『司くんは私のモノじゃないんだ』というもので、悲しくなってしまい、思わず涙が出てしまった。
記憶を掘り起こせば全部自分が悪いのに、感情と云うモノは厄介で、理屈とは違うことを考えてしまう。
クラスの立場に縛られて、自分の気持ちを無視した私を許せなくて、最後は自分で決めようと思い、あの忌々しい報告から数日経ったある日、司くんに話がしたいと呼び出し、
『高二のときから好きだったこと』『本当は相談相手も嫌だったこと』
『付き合いたいこと』など全部話したが結果は完敗だった。
最後に私が、
「もし、嘘告じゃなくてちゃんと告白したら、今も付き合ってたと思う??」
とボソッて言ったら、
「それでも僕はあの子を好きになって、君とは別れてたと思うよ」
って返され、完敗だと思ってしまった。逃がした魚はホントに大きかったんだ。
司くんに彼女が出来て、対する私は綺麗な因果応報になった訳だが、大学も違うために顔を合わせる機会がなく、夜にツラくなる日々だった。当たり前だが昼間は講義などがあるため平気だったりしたのだが、他の男子と遊んでも全然しっくりこなくて、合コンとかも苦手になっていく。
私は司くんがホントに大好きなんだと実感した。そこで、少し変わろうと思い、腰辺りまであった髪を切り短髪にして、料理のレパートリーを増やした。それから、途中でやめたピアノの練習を本気でしたり、運動不足が気になっていたので、ランニングを始めることにした。
最初は『司くんを見返したい』と言った気持ちで始めたが、やっているうちに楽しくなってきてしまい、当初の気持ちが薄れてただの自分磨きのような形になっていった。そうして数ヶ月経った頃に、司くんが彼女さんと別れたのだ。理由は彼女さんの浮気で私は内心嬉しく思い、司くんに早く会いたかったが、滅茶苦茶落ち込んでいると思い、そっとしておいた方が良いと思った。それから、二週間ほどそっとしておいてたのだが、自分の中で『そろそろ、平気じゃないのか?』と決めつけ、意を決して『遊びに行こう!』と誘ってみたら、了承してくれたので、いくつか候補がある候補のうち初デートと同じ場所である水族館へ行くことにした。十五分ほど遅刻してきた彼は駅の出口を間違えたようで、
「待たせてごめんね。寒かったでしょ?」
と手には暖かい飲み物を持っていて、さりげない気遣いに、
(大人になったんだなぁ)
と感動した。そして、水族館に行って前と同じように水族館を回るのだが、今度は手を繋がずに回っていたのが印象に残った。そのあとお昼を近くのファミレスで食べて、そのときの会話が思いの外弾んで、楽しかったことを覚えており、今回はプラネタリウムに行くことはなく、そのまま解散することにした。司くんはカワイイけど、どこかカッコよさを滲ませているように思う。
例えば『車道側を歩いたり、割り勘を少し多めに出してくれたり、最悪の別れ方だったのに、そんなことを感じさせない気配りを欠かさないでいてくれる所』とか、とにかく気配り力がすごくて思わずキュンとしてしまう。
ホントにすごいと思ったが『いつ誰に弱さを見せているんだろう??』と気になってしまい、放っておけなくなってしまった。今回のデート(私の中で勝手にデートとカウントしてる)は、表向きの進展は何もなかったが、私の内面にはかけがえのないモノが残った。まぁ、そんなことを言えるほど人間が出来ている訳ではないけどね。だけど、私が彼にとって『辛いときの逃げ場に慣れたら』と少しだけ思ってしまった。そんなことがありながらも、二人にとっては、苦い思い出のクリスマスがやってくる。今度こそ、司くんと一緒にお出かけして、本屋さんに行ったり、観覧車に乗ったり、まぁ色々なことをしたわけで、あのつまんないクリスマスとは比べ物にならないほど楽しかった。ホントは夜まで遊びたかったけど、司くんは家族で集まってケーキを食べるそうなので私は夕方に帰宅した。自分的には周囲がカップルばかりで、落ち着かなかったけど許容範囲だったが少しだけ寂しく感じてしまう。
正月には初詣に行くことになり、司くんの大学の友達と私の大学の友達とでかなりの大所帯になって、当然ではあるが、司くんの友達には女子がいて心の中で餅を焼いてしまったのは秘密だ。ワイワイと進んで本殿を拝み、御神籤を買う。私は小吉で司くんは凶だった。
二月・三月と無事に単位を取り、二回生となる。それからは、二人で色々な所の桜を見に行こうと計画を立てることにした。ひとつひとつ見て回って、ある一ヶ所で司くんの大学のサークルが飲み会をしてて、話しかけられた時に彼女らしく振る舞ったのはいい思い出だ。
司くんの誕生日は私と一緒に、大型テーマパークに行く事になるのだが、司くんが思いの外はしゃいでいて、とてもかわいかった。そして、夏になりプールに行くことになる。その時は司くんが寝坊して一時間遅れてしまう。冗談っぽく「貸し1だからな」と言う彼は友達みたいで、この出来事が、私に火をつけた。『友達のままズルズル行ってもいいモノなのか???』と疑問を感じて、焦りに拍車がかかる。その日はお金が足りなくなりお互いに、『貸し1づつ』になったのだ。夏になり一緒にお祭りに行くと、高校生らしきカップルもおり「みんな若いね〜」なんて言いながら遊ぶ。
今度は二人とも私服で、手を繋ぐこともなかった。花火が終わり帰る頃になると、本当にこのままで良いのかなって感じた私は、人がまばらな河川敷で、本格的に逃がした魚の捕獲に乗り出す。
「ね、お互いの貸し今返し合わない?」
思い付いたように口を開く
「うん、そうだね」
同意したのを確認して、私は条件を詰めていく
「じゃあ、まずルール決めようよ」
私がそう言うと、司くんは
「分かった。じゃ、法律的にアウトなやつと、過度に人生に影響が出ることはなしにしよう」
と言い、私は更に付け加える
「それとそれと、断るのはなしってことで良い?」
彼は面食らった様子だったが了承する
「リョーカイです」
笑顔になりつつ、少しおどけた表情で、司くんは口を開いた
「先、言っていいよ」
私は司くんに早く言うように促す
「いやいや、りっちゃんから言ってよ」
恥ずかしいのか、早口になりながら伝えてきて、お互い何も言えなくなるがその空気を破ろうとして、しどろもどろになりながら伝える
「私、司くんがずっと好きで、その・・・・・だから、、付き合ってほしいんだ」
「ふぇっ!??」
司くんは驚いたのか素っ頓狂な声を上げ腰を抜かす。思わず私は腰を支えてる。そして、いたずらっぽく言った。
「断るのはなしでしょ?次は司くんの番だよ」
「同じこと言おうと思ってたんだけど、先に言われちゃったな」
頭を搔きつつ、口を開く
「そうだね。だから他のにしてほしいな?」
少しだけ語気を強めて言うと
「我と接吻していただけますか?」
「キスしてほしいてこと・・・・?」
分かりにくい言葉に確認の為、聞き返すと
「そーいうこと!!」
と言いながら、司くんはそっと私に口付けを・・・