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あいつが盗られた。  作者: 森のアカゲラ
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父。

 雪も解け、桜が芽吹く頃。


 須藤家と奈良医院に、祝電が届けられた。


 無事、男児の双子が産まれると。


 同じ頃、狭山の施設では一人浮かない顔の幼女が。

 

 「ママさん、小さいけど元気な赤ちゃんが産まれましたよ。」


 「牧子ちゃん、ありがとう。おばあちゃんは、うれしくてしょうがないよ。」


 「何、落ち込んでんのよ。姉さんが、おばあちゃんになるのは産まれる前から決まってた事でしょ。早く、真央におめでとうって言ってやりなよ。」


 てくてく歩く、保世。


 「真央、元気な男の娘達よ。おめでとう。」


 「ママ、今なんか聞き捨てならない言い方しなかった?でも、ありがとう。」


 「真央、大叔母ちゃんはうれしいよ。」


 「悦子~、やめてその言い方。」


 「真央、私もおばあちゃんね。」


 「牧子ママは、ボクだけのママだから。」


 「牧子ちゃん、おばあちゃんって…。」


 「どうしたの、ママ?」


 「もう諦めなよ、姉さん。」


 タバコを震える手で持ちながら、外に出て行く保世。


 「しばらく、放っておこうか。孫を見たら、又うるさくなるし。」


 「根森田とショコママの所には、連絡した?」


 「どちらとも、ゴールデンウィークに来るそうよ。正ね、合格したんだけど後一年向こうにいるんだって。義姉さんが、耐えられなかったみたい。嫁姑問題、拗れそうね。」


 「まだ、決まってないから。」


 「何の話、真央?」


 「真央ね、従兄弟の正のお嫁さんになるのよ。正のお母さん、厳しい人でね。」


 「お姉ちゃん!」


 「わっ、真央ってば女の子になってもモテモテね。」


 「そんなこと無いよ、でもボク幸せ。ありがとうね。」


 「真央、ゆっくり休みなさい。起きたら、又赤ちゃん連れて来てあげるから。」


 「うん、お休みなさい。」



 また、あの頃の夢を見ていた。


 最初は、優しかった父。


 母が入院している病院にも足繁く通ってくれて、小さかった私の面倒も人任せではあるが見てくれた。


 いつからか母の許にも行かなくなり、気がついたらボクはボロい倉庫に放り込まれていた。


 何の為なのか首にはがっちりチョーカーが巻かれ、檻の中で暮らす。


 カビの生えたパンと水が置かれた台と、用を足す為のバケツそれと薄汚れた布が一枚。


 乳児にしては、なかなか厳しい環境だ。


 時折、父と共に怖い人達が様子を見に来る。


 「ママ、どこ?ママに、会いたい。」


 ボクが言葉を喋れる様になると、殴る蹴るの暴力を浴びた。


 ボクは、喋るのを辞めた。


 そして、あの日ボクは身をキレイにされて外に連れ出され地獄を味わった。


 終われば、またカビたパンの生活。


 ちょっとだけ喋れた言語も一人でいるうちに、何も言えなくなった。


 泣いても、誰も来ないし涙も出ない。


 「真央、シャワー行って身体キレイにしようか?」


  身を固くして後ずさるボクに、悦子お姉ちゃんが不審がる。


 思い直して、お姉ちゃんに抱っこされる。


 「真央、親になったんだから自分の事は自分でしなきゃダメよ。」


 「アイ!」


 さして、くれないクセに。


 「姉さん、泣いてたわよ。」


 「おばあちゃんに、なるから?」


 「違うわよ、産まれた子供が自分にそっくりだからよ。」


 「ふぇっ、ママにそっくりなの?」


 「あんたは、母さんに瓜二つだからね。正と結婚したら、権現様になるんだろうね。」


 「うん…。」


 ボクは子供が産まれてから、あの人の事ばかり考えていた。


 赤ちゃんのお父さん、ボクの愛した人。


 男のボクを妊娠させて、愛を、与えてくれた人。


 会えない、でも会いたい。


 何、してるのかな?


 忘れなきゃ、ボクがこんなんじゃ周りが困ってしまう。


 こんなボクに、温かい手を差し伸べてくれる人に。


 「アッチ、熱いよお姉ちゃん!」


 「あら、ごめんね。病院のお風呂って、使いにくいわね。」


 髪を乾かしてもらい、新生児室に向かう。


 牧子ママに抱っこされたママが、赤ちゃんに笑いかけてた。


 なかなか、シュール。


 「ボクにも、見せて。」


 ママ、邪魔です。


 何で、赤ちゃんの前で幼児のケンカが始まるんですか?


 「二人共、ここに直りなさい!」


 【はい…。】


 ちょっと間、正座させられて説教されました。


 ママはイヤイヤしながら、悦子お姉ちゃんに小脇に抱えられて出て行きました。


 そしてボクはかわいい牧子ママに抱っこされて、かわいいわが子を見つめます。


 牧子ママが、泣いています。


 「どうちたの、牧子ママ?」


 「ううん、あの何も喋れなくて何も出来ない真央からこんなかわいい天使が産まれるなんて。」


 ありがとう、牧子ママのおかげだよ。


 ボクの破れたスカートを縫ってくれたり、お腹痛くなったらずっと添い寝してポンポンしてくれたり。


 ボクは、牧子ママを見つめたまま唇を奪った。


 甘い唾液を吸いながら、舌を絡め取る。


 《ドサッ!》


 「痛っ、牧子ママ?」


 ボクは、抱っこを外され強かお尻を打った。


 牧子ママの手を引っ張って、病室に戻る。


 そこには、延々と泣き続ける幼児が横たわっていた。


 ボのクは、それを除けて横になった。


 牧子ママが、ポンポンしてくれる。


 後ろで、ママがギャースカうるさい。


 先まで泣いてたのに、今度は怒っている。


 悦子お姉ちゃんが、飲み物を買って来てくれた。


 ママが横抱きにされて、悦子お姉ちゃんに飲み物を飲ましてもらっている。


 ママ、幼児退行しているっぽい。


 ボクが牧子ママに授乳してもらっていたら、ママがじっとこちらを見ている。


 「ママさんも、飲みます。」


 ぶんすか首を縦に振って、ママとおっぱいの取り合いになった。


 カオス!


 

 そして、ゴールデンウィーク。


 みんなに、会える。


 


 

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