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あいつが盗られた。  作者: 森のアカゲラ
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旅立ち。

 翌朝、久しぶりにトーマスに乗ってお家に帰った。


 今日も、町の人達に手を振られながら。


 もう、慣れた。


 うそ、この信号長いわ。


 早く、青になってよ。


 「ただいま、真央ほら上がって。」


 「お邪魔します。」


 「あらら、なんだい真央。よそよそしいわね、ばーばはそんな子に育てた覚えはないよ。」


 「ばーば、抱っこ!」


 「はいはい、じーじ真央が来たわよ!」


 「おう、真央。具合は、どうだ。痛い所は、無いか?どれ、じーじにも抱っこさしておくれ。」


 「どこも痛くないよ、じーじ。」


 「ねぇ、娘が帰って来たんですけど!」


 「怖いでちゅね、ママはあの日かな?」


 「はぁ、お父さん真央を返して!」


 「真央、おやつ食べるか。マルメロオレも、あるぞ。」


 「わーい、食べる。」


 じじばばの甘やかしが、止まらない。


 私に子供が産まれたら、自分で育てよう。


 パクパクお菓子を食べながら、母さんにクンクンされている。


 「何してるの、母さん?」


 「真央成分の、補給。」


 「話があるんだけど、聞いてくれる?」


 「どうしたの、真央と一緒に東京へ行くのかい?」


 「何で、知ってるの?」


 「保世ちゃんから、電話あったわ。」


 「そうなんだ、ダメ?」


 「ダメじゃないけど、ちゃんと真央の面倒看れる?」


 そっちか、娘と孫どっちが大事なの?


 勝てない勝負は、しない。


 「うん、荷造りして来るから真央を看ててね。」


 「ゆっくり、しといで。」


 「ママ、クマさん持って行きたい。」


 「あの絵本、持って行くの?」


 「うん、ダメ?」


 「わかったわ、いい子で待ってなさい。」


 「はい、わかりました。」


 「おっ、真央偉いな。だいぶ、行儀良くなったな。」


 「てへぺろ!」


 ダメな大人はほっといて、さっさと準備しよう。


 でも、感謝だな。


 変わりなく、真央に接してくれる。


 「準備、出来たわよ。真央、行くわよ。何?」


 「真央、ずっとばーばのおっぱい欲しがるのよ。ばーばは、出ないからあんたが来るまでずっと愚図ってて。はい、出る祥子?」


 「どういう、会話よ。嫁入り前の娘に、授乳させるって。」


 「あんたの子だろ、ほらママが来たわよ。」


 「ママ~!」


 「お父さん、あっち向いて!」


 「わし、産婦人科医なんじゃがな。」


 「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ。ンパ~、おいち!ゲフッ!」

 

 「真央、ケガはもう大丈夫か?じいじに、見せてごらん。」


 真央が、父さんの前で上着を捲り上げる。


 「下も?」


 「大丈夫じゃよ、もうすかっり治ったな。」


 「真央、あの時逆らえなかったのって赤ちゃんがいたから?」


 真央なら、田中本部長さんが言った通り片手でアイツらをひねり潰せたはず。


 「赤ちゃんがいたかどうかはわからないから、ただカラダの中から〈助けて!〉って聞こえたの。」


 「それが、赤ちゃんだったかもね。じゃあ、尚更産んであげなきゃね。」


 「私らも頑張るから、ムリするんじゃないよ真央。」


 「うん、ばーば。」


 「じゃあ、行ってくるわね。」


 「忙しないね、お昼ご飯くらい食べて行きなさい。」


 「えーと、お昼は何?」


 「ビーフドオムライスだよ、真央好きだろ。」


 「わーい、食べる!」


 「真央…。」


 


 

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