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あいつが盗られた。  作者: 森のアカゲラ
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夏の出来事。4

 明くる朝、母さんがやって来た。

 相も変わらず、のんきなもんだ。

 電話くれれば迎えに行くのに、バスでやって来たみたい。

 「悦子、真央は大丈夫かい?」

 一番の甘やかしさんが、来てしまった。

 「姉さんと、寝てるわ。母さん、朝ごはんは?」

 「信子が早起きして、用意してくれたよ。これ、真央にって。」

 ここにも、甘やかしさんがいたわ。

 「私、自分の部屋にお客さんがいるから適当にして。」

 「ほいほい。」

 母さんは、姉さんの部屋に入って行った。

 「悦子さん、お母様ですか?私、そろそろおじゃましますね。」

 「ゆっくりして、後で紹介するから。」

 「でもお母様も、そうなんでしょ?」

 「祥子ちゃんは、大丈夫じゃない。それに、私一人じゃ、怖いわ。」

 「えー、悦子さんが怖いって!」

 「自分が、抑えれるか不安なのよ。」

 「確かに、人間ですものね。」

 「頼もしいわ、祥子ちゃん。」


 小っこいのがぞろぞろ部屋から、出て来た。

 三世代の悪意が、勢揃いだ。

 「いいわよ祥子ちゃん、お茶は真央にやらせなさい。母さん、口出ししない!」

 台に上がって一生懸命お茶を用意する、真央。

 「はい、おばあちゃん。はい、ママ。」 

 「えらいね、真央。」

 はぁ、このばばあは。

 「母さん、この子が奈良医院の娘さんで祥子ちゃんよ。」

 「初めまして、奈良祥子です。」

 「いつも、お世話になっております。祖母の、節子です。」

 「姉さん、起きて!」

 「ううん、寝てないわよ。うーん、と。」

 「真央、何やってるの?祥子ちゃんも、甘やかさないの。」

 「あっ、はい…。」

 全く、緊張感のかけらも無い。

 「真央、身体はどうだい?赤子は、確かなのかい?」

 「うん、大丈夫。まだ、信じられないけど。」

 「そう、相手ははっきりしてるね。どんな人?」

 真央が、真っ赤になって何も言わない。

 祥子ちゃんに遠慮してるのか、ただ満足感に浸ってるのか。

 後者ね、馬鹿だから。

 「ダメだね、悦子教えて。」

 ほら、いつも面倒な事は人間任せ。

 信子姉さんが、かわいそう。

 「相手は、同じ学校の柏木君って言う男子。私の受け持っているクラスの、子よ。親は、しっかりしてるわ。多少、子供には甘いみたいだけど。真央の、初めての男よ。それ以外は、知らないみたいね。男に、関しては。」

 すごい真っ赤ね、真央!

 真央ママ、また寝てるわ。

 「相手さんと、会ったのかい。何と、言うておる。」

 「親御さんは、何でもしますって。当人は、学校辞めるって言ってるわ。」

 「そんなもんじゃろ。真央は、どうしたい?」

 「ボクは…、産みたい。一人でも、育てて行く。」

 「そうかい、一人でもな。一人で育てるんなら、許そう。じゃが、相手の男はいらないよ。」

 「えっ、そんな…。」

 「自分で、言ったんじゃないか。」

 「母さん、そりゃあんまりよ。」

 真央ママ、起きてたんだ。

 「あんたは、口挟みな!あんたの亭主みたいな男は、こりごりだよ。」

 真央ママ、黙ってしまった。

 真央のお父さんって、そんなひどい人なの?

 「おばあちゃん、希人は大丈夫だよ。」

 「あんたに、何がわかるの?男なんて、かわいい女には素直になるもんさ。」

 「ボク、可愛くないもん!」

 「お嬢さん、どう思う?」

 「えっ、私!はい、真央以上にかわいい子は見た事ありません。」

 「悦子、この子も魅了されているのかい?」

 「いいえ、私と同種よ。」

 「だと、真央。」




 

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