夏の出来事。3
真央の産みたい発言に、私は実感が湧かなかった。
幼児に言われても、何とも。
同級生だとしても、まだ高1。
本来なら、初恋やデートに浮かれている頃だ。
私の初恋は、見事に打ち破られた。
思い出は、もらえた。
真央なりの、優しさだったのか。
わかってた、この容姿では…。
「祥子ちゃん、大丈夫?」
「あっ、はい。」
不思議な、子だ。
奈良医院で初めて見た時には、活発そうで真央とは合わないと思った。
杞憂だった。
真央も、魅了を発してはいない。
それにしても、この子と言い牧子ちゃんもちょっと変だ。
真央が、母性本能をくすぐっているのかな?
真央は、どっちにしろ人間ではない。
ペット枠かも、しれない。
「ニャー。」
「何、甘えてるの?姉さん、真央を見習って食べ終えた皿くらい片付けなさい。」
こいつも、人間じゃなかった。
あまり、考えてもね。
母さんに、相談してみよう。
あまり、大ごとにしたくないし。
母さんの力を利用して、上手く行けば。
多少の寄進は、やむを得ないか。
姉さんにしろ、真央にしろ受け継いだ物への対価は払ってもらわなきゃ。
私は、人間に産まれて良かった。
この二人を見て、本当にそう思う。
厳しい事は言うが、苦しんでいるのもわかる。
今回の事は、飼い主としての私の監督不行き届きでもある。
信子姉さんも、大変だな。
あの母さんと一緒じゃ、気苦労が堪えないだろう。
真央が、尊敬してやまないのもわかる。
無理よ、あなたでは信子姉さんみたいになれないわ。
そもそも、人間に憧れても無理よ。
「祥子ちゃん、今日は一緒に寝ましょ。何、真央は自分のハウスがあるでしょ。」
「うん。」
「真央、ママと一に寝よう。」
「うん!」
「たまには、親らしい事するのね。」
「祥子ちゃん、ごめんね。本当は、真央と一緒が良かったでしょ?」
「ううん、悦子さんとゆっくりお話したかったので。」
「そうか、良かった。私達の事、少し理解してほしいの。」
「悦子さん達の事、ですか?」
「正確に言うと、姉さんと真央の事。」
「真央の事?」
「あまり、いい話では無いわ。知りたくなければ、聞かなくてもいいわ。」
「いえ、教えてください。」
「信じる信じないは、祥子ちゃんに任せる。」
「はい!」
早く、教えてよ。
お茶とお菓子も、用意したわ。
「まず、家の一族はちょっと変わっているの。実家は、あっ直子の所ね。あそこは黙っててもお金の湧いてくる変な家よ。詳しくは、教えられないけど。それは、私の母と姉さん、真央、に引き継がれた事に関係するの。」
「真央も、ですか?」
「本人はその気は無いけど、真央が次の当主だと周りは思っているわ。なぜなら、あの人達は人間じゃないから。」
「悦子さんも?」
「いいえ、残念ながら私は人間よ。」
「残念ながら…。」
「冗談よ、人間で良かったわ。あの、悪魔達といると。」
「悪魔…。真央が?」
「人に危害を加えるだけが、悪魔じゃないわ。黙って、相手に言う事をきかせる。これほど、悪意な事は無いわ。」
「真央は、そんな子じゃありませんよ。」
「今わね、それに私もそうだけど希に耐性がある人間がいるのよ。あなたと牧子ちゃん、とかね。」
「えっ、私ですか?一番、魅了されているかと思ってました。」
「そう思える事が、証拠よ。祥子だけに。」
「面白くないです、悦子さん。」
「えー、懇親のオヤジギャグだったのに。」
わからない人、信頼できるわ。




