目覚め。5
今日も、帰りに寄る所がある。
西根打刃物製作所。
マタギ山刀や、鉈などを取り扱っている鍛冶屋さん。
ボクは、居合いで使う真剣を取りに来た。
「真央ちゃん、出来上がってるよ。どうだい、注文通りだと思うんだが?」
鞘から抜いて、柄元から刃を見る。
「凄い!材料は、玉鋼?」
「あぁ、良くわかったな。真空炉を使ってって言うから、頼んでみたよ。どんな効果が、あるんだい?」
「硬度が、高くなるの。刃こぼれしないのが欲しくて。難しい事頼んで、ごめんなさい。」
「いい勉強に、なったよ。」
「ありがとう、おじちゃん。」
「高くついたけど、大丈夫かい?」
「うん、持って来た。」
「売れっ子作家の娘だけは、あるな。」
ボクのお金だし、娘じゃないし。
まっ、いいや。
国宝級のお宝が、こんな値段で買えるんだから。
トーマス、何でもしまえて便利。
次は、警察署に行って登録してもらおう。
すぐ、終わった。
師範って、便利。
署長さん、代わってから色々スムーズになった。
さっ、帰ろう。
誰だろう、あの人?
マタギの人かなぁ、見た事無い。
猟銃みたいなケース背負ってるから、猟友会の人だろうな。
んっ、浮いてる。
身体が、ちょっと浮いてる。
誰も、気づかないの!
ボク、疲れてるんだ。
早く、帰ろう。
ママが、いない。
そういえば、クーパーが無かった。
「悦子お姉ちゃん、ママは?」
「信用金庫に、行ったわよ。預金を移すのに、手続きするって。柏木君のお父さんって、あそこのお偉いさんなのね。」
へえ、だからお金持ちなんだ。
「なんで、預金移すの?ボクの、せい?」
「ううん、お金があまってるから銀行から一部移すって。」
へえ、ボクん家もお金持ちだった。
「お金あるなら、エアコン欲しいなぁ。」
「無理よ、姉さん冷え性だもの。」
ですよね~。
ママが、帰って来た。
「ただいま、これ信用金庫から粗品だって。」
今治の、高級バスタオルのセット。
へえ、センスあるじゃん。
「真央、柏木さんからあんたの事聞かれたわよ。お嬢様は、一人娘ですかって?うちのバカ息子が、ご迷惑をお掛けしてませんかって?うちの娘こそ、迷惑掛けて。一人娘ですよって言ったら、考え込んでたわ。」
「ちゃんと、否定してよ。」
「何を?あんた、姉妹いないじゃない。」
そこじゃない!
ったく、悦子お姉ちゃん追いて行ってよ。
うなずかないの、お姉ちゃん!
「あんた、明日診察でしょ?一人で、大丈夫なの。悦子、一緒に行ってあげなさい。」
「うん、わかった。診察、何時から?」
「朝一、8時半に出れば間に合うよ。」
「朝ごはんは?」
「食べれないから、いらない。」
「私も、病院行ってから食べよう。」
「悦子、私の分は?」
「知らない、どうせ起きてこないじゃない。」
「聞いた?冷たいわね。」
「えー、どうせ私は一人身の寂しい女ですから。」
「真央、夕飯ラーメン食べに行こうか?」
「いい、ママ一人で行って来て。」
「冷たい、何なの二人共…。」
「姉さん、吾作ラーメン行きましょ。真央も、いいでしょ?」
「うん、吾作ならいいよ。」
お姉ちゃんのタントに乗り込んで、街に向かう。




