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あいつが盗られた。  作者: 森のアカゲラ
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花火大会。

 お風呂に入ってると、真央が考え込んでいた。

 「どうしたの、真央?」

 「んとね、今日直子に会ったらお父さんの事思い出して。」

 そういえば、真央のお父さんの事は聞いた事が無い。

 「直子ちゃんと、何か関係あるの?」

 「直子のお父さんと、ボクのお父さんは一緒の事故で死んだんだ。」

 「そうなの。」

 「おばあちゃんは、たまに顔出すけど直子ん家と疎遠になっちゃって。」

 「でも、今日もチーズケーキ作ってくれたじゃない?」

 「うん、直子のお母さんは厳しいけど真っ直ぐですごくいい人なんだ。どちらが悪いとかではないけど、お互いに話づらくって。ボクは、お父さんの事があまり好きじゃなかったから。余計に、向こうのお家の人がいたたまれなくて。」

 「真央の、せいじゃないでしょ。聞いても、いい?何で、お父さんの事嫌いだったの?」

 「ボクがね、小さくて役に立たないからお仕置きされてて。庇ってくれたママも、暴力振るわれてて。」

 いわゆるDVって、やつか。

 「だから、剣道始めたの?」

 「うん、あまり役に立たなかったけど。ボクね、お父さんが憎かった。殺したいとも、思ってた。でも、いざ死なれると何だったんだろうって。いなくなってほっとした自分と、そんな事を思っているなんてと思う自分が。嫌な奴だよ、ボクは。」

 なんて言えば、いいのだろう?

 やっぱり、16才なんだって思う。

 真央は中学1年の後半で、一気に大学院を卒業した。

 ちょうど、お父さんが亡くなった直後だ。

 何を思ってたんだろう?

 私は、真央をぎゅっと抱きしめた。

 言葉も、かけれない。

 泣かない真央の心が、濡れている。

 かわりに、私が泣いてしまった。

 「泣かないで、ママ。」

 お風呂から上がって、二階に上がる。

 お母さんと祥太は、買い物にでも行ったのかな。

 誰も、いなかった。


 私は、この日女になった。

 真央は、とても上手だった。

 初めての私をちゃんと、リードしてくれた。

 私から、二回目も求めた。

 私の心は、いつもより穏やかになっていた。

 これで、何かが変わる訳ではない。

 でも、真央は一人じゃないって言ってくれた。

 そう、私も一人じゃない。

 明日も明後日も、私は真央のママ。

 まぶしいわ、その笑顔は。

 真央は、何も言わない。

 もう、あまり泣かないで。

 私が、泣きたくなるから。

 

 しばらくして、お母さん達が帰って来た。

 二人で、下に降りる。

 母さんの顔も、ちゃんと見れる。

 祥太が、真央に又貢ぎものをしていた。

 又、真央が私を見る。

 「もらっときなさい、真央。」

 「うん、ありがとう。」

 母さんの手伝いをしてると、「何か、いい事あったの?」って。

 鼻歌が、出ていたらしい。

 「うん、ちょっとね。」

 明日は、部活もお休み。

 花火大会が、楽しみ。

 真央の浴衣見たら、祥太喜びそうだな。

 私も褒めてね、真央。

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