部活、前日。3
「将軍野中学って、あの強豪のか?」
そりゃ、そうだ。
目の前の小っちゃい子供が県屈指の強豪校のキャプテンだなんて、誰が思う。
三浦はレギュラーだったから、戦った事があるんだろうな。
そういや、こいつは転校する前は松橋だった。
高校生になったら、須藤に変わってた。
将軍野の悪魔、確か須藤ってレギュラー組が言ってた。
こいつの事だったのか。
信じられん、見た事無い奴は皆そう思うだろう。
「しょこたん、帰る。」
真央が、アンパンマンのショルダーと水筒を肩からぶら下げた。
水筒の中身を飲み干す。
「先生、バイバイ。みんなも、バイバ~イ。」
走り出そうとして、ナラショウさんに捕まる。
「また、転ぶわよ。」
「真央、気をつけて帰りなさい。」
戸沢先生も、心配そうだ。
ナラショウさんに抱っこされて、玄関で靴を履かせてもらう。
男子部員は、ドン引きだ。
女子部員も、半分引いてる。
真央が出て行くと、ナラショウさんが帰ってきた。
色々、気になる点がある。
1つ目は、真央の剣道の実力。
2つ目は、本当に将軍野中学のキャプテンだったのか。
3つ目は、ナラショウさんの真央への執着。
4つ目は、松橋先輩をおじちゃんと呼んでいた事。
5つ目は、着替える場所とは。
1つ目は、明日からの練習もしくは新人戦のレギュラー決めではっきりする。
2つ目は、三浦が言ってたのとレギュラー組が言ってた事でほぼ間違いない。
3つ目は、ナラショウさん本人に聞いても答えてくれない。何となく察しはつくが、俺が恥ずかしくて言えない。
4つ目は、すぐわかった。松橋先輩の兄が、真央の亡くなった父親との事。つまり、松橋先輩は真央の叔父にあたる。
5つ目は、真央が小さくて一人でちゃんとできないから校長室を使うらしい。みんなの迷惑にならないように、配慮したらしい。それを聞いたナラショウさんが、自分もそこを使うと言い出した。今度は、全員ドン引きだ。ナラショウさん、美少女台無しだよ。そしたら意外にも、先生が許可した。なんなら、誰かに頼む予定だったとの事。マネージャーの宮野と大川が、ホットしていた。
練習を始めると、松浦がいつも以上に暴れ回っていた。
春日と稽古してる時なんか、ただ竹刀で殴りつけてるだけだった。
見かねた先生が注意すると、防具を外して着替えて帰ってしまった。
一の子分の森川が、慌ててついて行く。
松橋先輩が、先生にどうするか聞いている。
「放っとけ、邪魔しないならそれでいい。練習、再開しろ。松橋、ちょっと来い。」
先生が松橋先輩を、連れて行った。
俺は、松橋先輩の代わりに練習を仕切る。
女子部員、やる気ないなぁ。
休憩の時間になり、みんな水飲み場に向かう。
俺が帰って来ると、先生と松橋先輩に呼ばれた。
なぜか、三浦もいる。
「明日、真央が来たら練習の組み立てを変える。それについてわからなければ、全て真央に聞け。」
「真央に、ですか?」
「反発が、あると思いますよ。」
「例えば、松浦あたりか。どうだ、三浦?」
「暴れる、真央はど突かれる。」
「そうか、しばらく真央の事は伏せておけ。何かあったら、松橋頼むな。」
「いや、俺では。」
「お前のかわいい、甥っ子だろ?」
「はぁ…。」
「新人戦が終わったら、先生な手術する。しばらく、部の指導できない。代わりに、真央に顧問をしてもらうつもりだ。みんなで、支えてやれ。」
誰も、返事できなかった。




