部活、前日。2
「祥子、そいつを貸せ。」
真央を抱っこしているナラショウに、松浦が近づく。
「イヤよ、何するつもり?」
「いいから、よこせ!焼き、入れてやる。」
その言葉に、周りの女子部員が集まって来た。
「止めとけ、今日は我慢しろ。」
三浦が、松浦を制した。
「面白くねーな、覚えてろよ!」
向こうにいた春日に雄叫びを上げながら、蹴りを入れていた。
「しょこたん、ごめんなさい。」
「いいのよ、あんなバカ相手にしちゃダメよ。」
「うん、わかった。」
全く、わかってんのかね?
はぁ、松浦は何とかならんかなぁ。
「松橋先輩、当面真央は女子と一緒に練習させた方がいいんじゃないんですか?」
「そうだな、女子に頼んでみるわ。柴田、お前何気に心配症だな。」
はい、真央には借りがあるんです。
絶対、言えないけど。
「先輩、真央の髪なんですけどあれでいいんですか?」
「あぁ、戸沢先生に坊主頭はしなくていいと言われている。」
又、こじれそうな問題だな。
どこまで、庇いきれるのやら。
「お前、転校先でも剣道続けてたのか?」
「うん、一度諦めたんだけど。下級生達が、復帰しなさいってお迎えに来てくれたんだ。」
「そうか、いいやつらだな。」
真央は、中学に入ってすぐ転校してしまった。
運動神経皆無な真央が練習についてこれるはずもなく、いつも道場の外で体力作りをさせられていた。
それでも、続けていてくれたことは素直にうれしかった。
「真央、がんばるね。」
「なんで、今頃入る気になったんだ?」
「ボク、入学してすぐ体調悪くしたから。」
そういや、ゴールデンウィークからこの間の期末テスト前までずっと休んでたな。
「もう、大丈夫なのか?」
「うん、すっかり良くなったよ。」
女子部員に頼んでた松橋先輩が、こっちに来た。
「真央、しばらく練習は女子と一緒にしなさい。」
「よかったわね、真央。一緒に、がんばりましょ。」
女子部員も、反対は無い様でホットした。
「イヤだよ、ボク男子だよ。ちゃんと、練習できるもん!」
早速、ワガママ言い始めた。
空気は読めないし、こいつの悪いクセだ。
気が弱いのに、意地張りで強情なのだ。
まっ、駄々っ子とも言うが。
「どうする、達人?」
俺に聞くなよ、先輩。
「真央、今日は帰りな。明日まで、もう一回考えてくるんだ。」
こいつは一方的に言うと反発するから、扱いが難しい。
「うーん、変わらないと思うよ。じゃあ、帰るね。」
「あっ先生、お疲れさまです。」
「まだ、練習始めてないのか?」
「ちょっと、色々ありまして。」
「おっ、真央来てたのか?着替える場所は、わかったか?」
「うん、道具も置いてきたよ。ボク、女子の人達と練習しなきゃいけないの?」
「誰が、そんな事言ってた?」
「満也おじちゃんと、達ちゃん。」
「お前がしたいんなら構わんが、普通に男子でも相手にならんのに大丈夫か?」
「男子で、ガマンする。怪我させない様に、気をつけるよ。」
ガマン、怪我させない様にどう言う事だ。
「お前、ちゃんと練習してたのか?」
三浦が、真央に何か言い始めた。
「してないよ、ネコさんちゃんと練習したの?」
「あぁ、借りは返す。」
どう言う事?
「お前ら、知らないのか?こいつ、将軍野中学のキャプテンだったんだぞ。」
えぇー、あの全中三連覇のですか?
運動音痴の真央が、キャプテンって!




