夏休み。
翌朝、身体が重くて目が覚めた。
真央が私の上に乗り、しきりに揺すっている。
小っちゃい子は、早起きだ。
夏休み初日なんだから、ゆっくり寝かせて。
「ショコタン、ボク元気だよ。」
「本当ね、おやすみなさい。」
真央が布団に潜り込んで、おっぱいをねだる。
「お腹、空いた!」
「はいはい、じゃあ手と顔洗って来なさい。」
授乳さして、寝ときたい。
私も、洗面所へ向かう。
「祥子、学校行くの?」
「うん、真央が行くって。」
「お弁当は、いらないの?」
「午前中で終わるから、帰りにどこかで食べてくるわ。」
「朝ごはん、置いとくからね。ほ~ら、お着替えしましょうね。」
「母さん、真央は学校行くんだからね!」
「はいはい、真央の薬とシロップちゃんと持って行きなさいよ。怖いママでちゅね、ばーばが可愛くしてあげまちゅからね。」
本当に、ババになった。
私は道着に着替えやすいように、Tシャツとジーンズにした。
真央、青いわね。
ネコ型ロボットの着ぐるみ、半袖ショーパンだから暑くはなさそうね。
ポケット、パンパンだわ。
真央、おやつは200円までよ。
「えー、ダメ。」
上目遣いに頼んでも、ダメ。
しょうがないわね、半分カバンに入れといてあげるわ。
校長室に行くと、クーラーが効いてて涼しかった。
防具を付けてると、真央が自分の防具をずっと触っている。
「ダメよ、身体が治るまでは大人しくしなさい。」
上目遣いに見ても、今度はダメ!
わー、かわいい。
「ショコタン、痛い。」
堪らず、抱きしめてしまった。
さて、道場に行きましょう。
松橋先輩が真央を見つけて、寄って来た。
「真央、大丈夫か?しんどかったら、すぐ言うんだよ。」
「おじちゃん、レギュラー決まったの?先鋒は、誰?」
「先鋒は、俺だ。真央の代わりらしいわ。次鋒が工藤、中堅が三浦、副将は吉田、大将が柴田だ。」
「そっか、おじちゃん頑張ってね。」
「おぉ、任せろ!」
松橋先輩、今から緊張しちゃ駄目でしょ。
あれ、森川君がいない。
後は、全員揃ってる。
もちろん、あのクソ馬鹿もいないけど。
そう言えば、森川君ならレギュラーになってもおかしくないわね。
「先輩、森川君は?」
「あぁ、辞めるそうだ。」
まっ、どうでもいい。
「おじちゃん、ネコさんは自分で中堅って言ったの?」
「あぁ、言った。」
「あっ、ネコさん!」
「真央、済まなかった。タコは、年少行きだ。安心、してくれ。」
三浦君が、文章を話してる。
「ナラショー、ありがとう。真央のこと、頼む。」
「三浦君、松浦は本当に少年院送りなの?」
「あぁ、本人が望んでるそうだ。真央の仕返しが、怖いんだと。」
真央、良かったわね。
ちょっと、聞きなさいよ。
チョコボ○ル、おいしいの。
「宮ちゃん、美紀子、真央を預かって。」
真央が気持ち良さげに、宮ちゃんのお腹にもたれる。
戸沢先生が、来た。
「女子、なんで昨日は練習来なかった。」
「すいません。」
久美子が、代表で謝る。
トテトテ真央が歩いて、先生を見上げる。
「おっ、真央。外出ても、大丈夫なのか?」
真央が、私を指さす。
先生、納得しないの。
「あのね、昨日みんなボクと遊んでくれたの。悪くないよ。」
あざとい、真央あなた悪女になるわね。
「そうか、大会前だ。今日から、気合入れろよ。痛、たった!」
「先生、座ってて。真央が、指導するから。」
「ムリ、するなよ。」
「うん、松橋早く始めて!」
誰、誰なの?
ちょっと、怖い!
「レギュラー以外の男子は、女子と打ち込みして。先生、柔道場借りて見てあげてください。」
「よーし、みんなこっち行くぞ。」
「まずおじちゃんと雅丈、試合始めて。敏夫と達人は審判ね。」
「お前、真央か?」
「ネコ、次お前と雅丈な。格の違い、見せてあげて。」
「はい、雅丈はそのままね。敏夫は、面付けて準備ね。おじちゃんは、審判ね。」
うーん、こりゃネコさん以外厳しいな。
敏夫はこだわりを捨てたら副将じゃなくてもいいのに。
達人が大将じゃなく副将とかならウチも強いんだろうな。
松浦には、期待してたのに。
伝わらないか。
一通り終わったので、竹刀を持って真ん中に立つ。
「誰でもいいから、かかってきて。」
「真央、ムリするな。お前、防具も付けてないじゃないか?」
「ボクには、かすりもしないよ。そんなんじゃ、初戦も無理だね。」
「お前、何様だよ。」
工藤が、キレた。
「馬鹿だな、工藤。本当の事言われて、怒るなよ。」
「けど、柴田。」
「真央、病み上がりなんだ。今日は、止めときな。」
「うん、わかった。」
「真央、ちょっと教えてくれ。」
「何、ネコさん。」
結局、雅丈も素直に真央に指導を仰いでいた。
しかし、人格変わるなぁ。
あれが、将軍野の悪魔の片鱗かぁ。




