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あいつが盗られた。  作者: 森のアカゲラ
19/91

夏休み。

 翌朝、身体が重くて目が覚めた。

 真央が私の上に乗り、しきりに揺すっている。

 小っちゃい子は、早起きだ。

 夏休み初日なんだから、ゆっくり寝かせて。

 「ショコタン、ボク元気だよ。」

 「本当ね、おやすみなさい。」 

 真央が布団に潜り込んで、おっぱいをねだる。

 「お腹、空いた!」

 「はいはい、じゃあ手と顔洗って来なさい。」

 授乳さして、寝ときたい。

 私も、洗面所へ向かう。

 「祥子、学校行くの?」

 「うん、真央が行くって。」

 「お弁当は、いらないの?」

 「午前中で終わるから、帰りにどこかで食べてくるわ。」

 「朝ごはん、置いとくからね。ほ~ら、お着替えしましょうね。」

 「母さん、真央は学校行くんだからね!」

 「はいはい、真央の薬とシロップちゃんと持って行きなさいよ。怖いママでちゅね、ばーばが可愛くしてあげまちゅからね。」

 本当に、ババになった。

 私は道着に着替えやすいように、Tシャツとジーンズにした。

 真央、青いわね。

 ネコ型ロボットの着ぐるみ、半袖ショーパンだから暑くはなさそうね。

 ポケット、パンパンだわ。

 真央、おやつは200円までよ。

 「えー、ダメ。」

 上目遣いに頼んでも、ダメ。

 しょうがないわね、半分カバンに入れといてあげるわ。


 校長室に行くと、クーラーが効いてて涼しかった。

 防具を付けてると、真央が自分の防具をずっと触っている。

 「ダメよ、身体が治るまでは大人しくしなさい。」

 上目遣いに見ても、今度はダメ!

 わー、かわいい。

 「ショコタン、痛い。」

 堪らず、抱きしめてしまった。

 さて、道場に行きましょう。

 松橋先輩が真央を見つけて、寄って来た。

 「真央、大丈夫か?しんどかったら、すぐ言うんだよ。」

 「おじちゃん、レギュラー決まったの?先鋒は、誰?」

 「先鋒は、俺だ。真央の代わりらしいわ。次鋒が工藤、中堅が三浦、副将は吉田、大将が柴田だ。」

 「そっか、おじちゃん頑張ってね。」

 「おぉ、任せろ!」

 松橋先輩、今から緊張しちゃ駄目でしょ。

 あれ、森川君がいない。

 後は、全員揃ってる。

 もちろん、あのクソ馬鹿もいないけど。

 そう言えば、森川君ならレギュラーになってもおかしくないわね。

 「先輩、森川君は?」

 「あぁ、辞めるそうだ。」

 まっ、どうでもいい。

 「おじちゃん、ネコさんは自分で中堅って言ったの?」

 「あぁ、言った。」

 「あっ、ネコさん!」

 「真央、済まなかった。タコは、年少行きだ。安心、してくれ。」

 三浦君が、文章を話してる。

 「ナラショー、ありがとう。真央のこと、頼む。」

 「三浦君、松浦は本当に少年院送りなの?」

 「あぁ、本人が望んでるそうだ。真央の仕返しが、怖いんだと。」

 真央、良かったわね。

 ちょっと、聞きなさいよ。

 チョコボ○ル、おいしいの。

 「宮ちゃん、美紀子、真央を預かって。」

 真央が気持ち良さげに、宮ちゃんのお腹にもたれる。

 戸沢先生が、来た。

 「女子、なんで昨日は練習来なかった。」

 「すいません。」

 久美子が、代表で謝る。

 トテトテ真央が歩いて、先生を見上げる。

 「おっ、真央。外出ても、大丈夫なのか?」

 真央が、私を指さす。

 先生、納得しないの。

 「あのね、昨日みんなボクと遊んでくれたの。悪くないよ。」

 あざとい、真央あなた悪女になるわね。

 「そうか、大会前だ。今日から、気合入れろよ。痛、たった!」

 「先生、座ってて。真央が、指導するから。」

 「ムリ、するなよ。」

 「うん、松橋早く始めて!」 

 誰、誰なの?

 ちょっと、怖い!

 「レギュラー以外の男子は、女子と打ち込みして。先生、柔道場借りて見てあげてください。」

 「よーし、みんなこっち行くぞ。」

 「まずおじちゃんと雅丈、試合始めて。敏夫と達人は審判ね。」

 「お前、真央か?」

 「ネコ、次お前と雅丈な。格の違い、見せてあげて。」

 「はい、雅丈はそのままね。敏夫は、面付けて準備ね。おじちゃんは、審判ね。」

 うーん、こりゃネコさん以外厳しいな。

 敏夫はこだわりを捨てたら副将じゃなくてもいいのに。

 達人が大将じゃなく副将とかならウチも強いんだろうな。

 松浦には、期待してたのに。

 伝わらないか。

 一通り終わったので、竹刀を持って真ん中に立つ。

 「誰でもいいから、かかってきて。」

 「真央、ムリするな。お前、防具も付けてないじゃないか?」

 「ボクには、かすりもしないよ。そんなんじゃ、初戦も無理だね。」

 「お前、何様だよ。」

 工藤が、キレた。

 「馬鹿だな、工藤。本当の事言われて、怒るなよ。」

 「けど、柴田。」

 「真央、病み上がりなんだ。今日は、止めときな。」 

 「うん、わかった。」

 「真央、ちょっと教えてくれ。」 

 「何、ネコさん。」

 結局、雅丈も素直に真央に指導を仰いでいた。

 しかし、人格変わるなぁ。

 あれが、将軍野の悪魔の片鱗かぁ。


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