第12話 偉大なる邪神様
その後、シセルさんとレイナと共に奥へと向かった。
「ここは……」
「礼拝堂……みたいだね」
「あそこに誰かいますよ」
礼拝堂のような部屋の奥には、1人の少女がいた。
少女は修道女のような格好をしており、容姿だけならば15歳程度とかなり若く見える。
「よく来たな、偉大な勇者たちよ」
少女は高らかに叫ぶ。
健気な容姿とは違い、尊大な印象の声だ。
「勇者……? 何のことだ?」
「偉大なる邪神様の復活を止めようと、この場に訪れたのだろう。そんな貴様らの無謀な勇気に敬意を表し、我は貴様らを『勇者』と呼ぼう!!」
「そんな話はどうでもいいよ。邪神はどこにいるの?」
珍しくシセルさんが怒っている。
かつて討伐した邪神が復活させられたのだから、ムカついているのだろう。まるで自分の行いが、無駄になったように感じて腹が立つのだろう。
「ふはは!! 人類最強の娘よ、貴様だけは許さない!! 偉大なる邪神様を殺害した貴様だけは!!」
「質問に答えてよ。邪神はどこにいるの?」
「ふはは!! 教えるわけがないだろう!!」
「そう、じゃあもういいよ」
瞬間、シセルさんは消えた。
否、目にも止まらない速さで女の元へ駆けたのだ。
そしてシセルさんは剣を振るって──
「じゃあね」
女を両断した。
右半身と左半身、2つに分かれる女の身体。
血は漏れ出し、臓物は零れ落ちる。
だが──
「ふはは!! さすがだな!!」
女は生きていた。
ウネウネと体内から触手が蠢き、切断された身体を再生させていく。
溢れた血は触手が啜り、零れた臓物は触手が収め直す。
「邪神の呪いだね」
「ご名答!! だが、加護と言ってもらいたいな!!」
司祭は邪神の力を扱えるというわけか、
その影響により、驚異的な再生能力を誇っているのだな。
「お前の目的は何だ? 何故にシセルさんが倒した邪神を、再び蘇らせようとしている?」
「逆に問うが、貴様はこの世界が憎くはないのか?」
「……あぁ」
なるほど、彼女の目的がわかった。
つまり──
「貴族連中による悪政。虐げられる貧民。立場が下位の者に生まれてしまえば、這い上がることは困難な階級社会。その全てが醜いとは、思わないか?」
「まぁ、言いたいことはわかるが」
「我はそれが許せない!! ソレは間違っている!! 故に邪神様の手を借り、世界を一度リセットするのだ!!」
「つまり、僻んでいるんだろ? 邪神によって世直しをしたいと言いながら、上級階級の連中が憎いだけなのだろう?」
「だ、黙れ!! 知った口を聞くな!!」
どうやら図星のようだな。
顔を真っ赤にして、反論することは肯定と捉えられるんだぞ。
「偉大なる計画が理解できないとは、哀れな連中だな」
「一番哀れなのはお前だろう。破滅願望を持っているんだったら、お前1人だけが消えればいいんだ。世界を巻き込むな」
「黙れ黙れ黙れ!!」
「それに邪神を復活させても、すぐに俺やシセルさんに討伐されるぞ?」
「ふははは!! 対策をしていないとでも? 今回復活する邪神様は、以前までの数倍以上の力を持つ!!」
「へぇ、意味なさそうだけどな」
俺が敵わなくとも、シセルさんがいる。
数十倍強くなったところで、シセルさんの敵ではないだろう。
「ふはは!! 貴様らとの問答も終わりだ。時は満ちた!!」
女は手にナイフを取り、自身の首元にあてがった。
「それでは貴様ら──悪夢を満喫するが良い」
女は喉元にナイフを刺し、そのまま倒れた。
刹那、女の足元に巨大な魔法陣が形成された。
女の死体は魔法陣に吸収され、その代わりに出てきたのは──
【────】
形容するならば、巨大なムシ。
甲虫のような堅牢な外殻に覆われたモノではなく、むしろ芋虫のようなグニグニとした気持ち悪い肌が露出している。
カブトムシの幼虫を、5メートルほどまで巨大化させたモノ。
それが邪神の正体だった。
【作者からのお願い】
広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えていただけると、
作者のモチベーションが上がります。
また、ブックマークもしていただけると、幸いです。




