閑話 狂気の教団【3人称】
ここは薄暗いどこかの部屋。
3人の聖職者が、椅子に座りため息を零していた。
「吸血貴が敗れてしまいましたか……」
と、悲しげな表情をしているのは男性の聖職者。
歳は70にもなろうか。シワが深く刻まれた顔を、悲しみの表情でさらに濃くしている。
「仕方あるまい。なんたって、人類最強の女がいたのだからな」
と、嘆息を吐くのは男性の聖職者。
歳は30歳ほどだろうか。屈強な肉体で、ローブがパツパツになっている。
「……いや、吸血貴を倒したのは人類最強ではないぞ」
と、失望の声を漏らすのは女性の聖職者。
歳は10代だろうか。その小さな身体にローブが合っておらず、ブカブカだ。
「何? どういうことですかな?」
「まさか……最近仲間になったという、あのテイマーですか?」
「さよう。忌々しきテイマーが、吸血貴を葬ったのだ」
女性の聖職者は、深くため息を零す。
「しかし、そんなことが可能なのですか? テイマー如きが、偉大なる邪神様の力を得た吸血貴を倒せるとは……とても思えないのですが」
「まさか……『2つ目の職業』ですか……?」
「おそらく、そのまさかだろう」
3人は納得したような表情を浮かべる。
「なるほど……。しかし、それが事実だとすれば、厄介なことになりましたね」
「確かに。人類最強と『2つ目の職業』のテイマー、その両者にバレないように作戦を企てる必要がありますからね」
「……我に考えがある」
女性の聖職者は、ニコッと微笑んだ。
「最近、あのテイマーに恨みを持つ者が現れた」
「と、言いますと?」
「テイマーによって地位を奪われ、テイマーに並々ならぬ恨みを持つ者だ」
「それはいったい……誰なのですか?」
「テイマーの元仲間、名前はカナトという」
2人の男性の聖職者は、ようやく理解できたようだ。
女性の聖職者の考えが、理解できたらしい。
「なるほど、つまり……そのカナトとやらに力を授け、時間を稼がせるのですね?」
「時間を稼がせている間に、邪神様を復活させる算段と……そういう訳ですね?」
「さよう。さらに運のよいことに、テイマーに恨みを持つ者はカナトだけではない。カナトの仲間、2人の女も同様だ」
つまり、3倍の時間を稼ぐことができる。
2人の聖職者は理解した。
「それでは早速だが、作戦を実行しよう。すべては世界を良くするために」
「世界を良くするために」
「世界を良くするために」
3人は影となり、その場から消えた。
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