第31話 笑顔
カナト達への復讐を遂げ、俺たちは宿に帰ってきた。
「ねぇ、アルガ様……わたしと結婚しませんか?」
「は?」
ベッドに横になっていると、レイナがそう言ってきた。
この娘はいったい何を言っているんだ?
「おぉ、いいね! 結婚しちゃいなよ!」
「いやいや、何でですか……。意味わかりませんよ」
シセルさんも何故かノリ気だ。
……楽しんでいるだけか。
「おい、もしかして父親を解放してやったことへの、お礼のつもりか?」
「いえ、そんなつもりはありません! ただ……」
「ただ?」
「……アルガ様の強さに、惚れてしまっただけです」
レイナは頬を赤く染めている。
……あ、これは本気のヤツだな。
恋愛経験皆無の俺でも、なんとなく察することができた。
「いやいや、待て待て! それはチョロすぎるだろ!!」
「わたしじゃ……ダメですか?」
「いや、ダメとかじゃなくて……俺はお前の父親を殺したんだぞ!?」
「いえ、殺したんじゃありません。生の呪縛から解放してくださったのですよ」
「同じだろ!!」
「全然違いますよ」
レイナは俺に、ギュッと抱き着いてきた。
おいおい、柔らかなパーツが当たっているぞ!!
だが、レイナが結婚を求める気持ちも理解できる。
魔物は後世をより強くするために、強い個体と繁殖をしたがる生物だ。
レイナも俺のように強きものと、子を残したいのだろう。
「アルガ様もあのライバルたちに一泡吹かせて、栓が抜けたように快活としていますよね?」
「いや、まぁ……そうだけどな」
「だったら、ちょうどよくありませんか? これを機に新たな挑戦をしてみることも、アリだと思いますよ?」
「つまり……?」
「わたしと結婚してください」
「いやいや……」
正直何を言っているのか、よくわからなかった。
多分結婚するために、適当なことを言っただけなのだろうな。
「アルガ様、お願いします。結婚してください」
「いやいや、そもそも俺とお前じゃ種族が違うだろ!! 人間と魔物なんだぞ!?」
「? アルガ様も魔物ですよね」
「あ」
そういえばそうだった。
俺は人間を超越し、配合魔人と化したのだった。
「え、アルガくん魔物なの!?」
「えっと、その……話がややこしくなるので、後ほど説明しますね」
「絶対にしてね!! 気になるから!!」
あぁ、めんどくさい。なんてめんどくさいんだ。
配合魔人になった経緯を説明するのも、レイナに言い寄られることも。
何もかもがめんどくさい。
だが……悪くはない。
カナト達と組んでいた時は、仲間とこんな風に話すことはなかった。
ロクに会話はせず、事務的な話のみ。そんな毎日だった。
だからこそ、こんな騒がしい日常が……少し楽しい。
「もう、結婚してくださいよ!!」
「気になるなぁ……。アルガくんの話!!」
そう話す2人は、最高の笑顔をしていた。
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