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第2話 2つ目の職業

 次の日、パーティから離脱したことを伝える為、俺はギルドへとやってきた。


「次、番号札173番の方~」


「あ、はい」


 ギルド嬢の間延びした声が、俺の番号札を呼んだ。

 しかし、実に長かった。ギルドにやってきてから、既に2時間が経過している。 

 俺は追放されたことを報告しにきただけなのに、どうしてここまで待たされるんだ。

 そんな怒りを内に秘めて、俺は受付嬢の元へと急いだ。


「今日はどうなさいました?」


「えっと……パーティから離脱したことを報告しに来ました」


「かしこまりました。そうしましたら、冒険者カードの提示をお願いします」


「あ、はい」


 俺は内ポケットから冒険者カードを取り出す。

 俺の名前、レベル、ステータス。そして……加入しているパーティ名が記載されている。

 ……その名前を見ただけで、昨日の怒りが蘇ってくるな。


「では、こちらの『カナトパーティ』の記載を削除いたしますね」


「えぇ、よろしくお願いします」


「あ、後……こちらのギルドカードは2年前から更新されていませんが、この機会に更新されてはいかがですか?」


「え、あーぁ……そうですね。お願いします」


 カナト達との日々は充実した毎日だったが、同時に過酷な日々でもあった。

 休日は年に1度あるか無いか。当然ながら、冒険者カードの更新などできるハズもない。


「かしこまりました。そういたしましたら、こちらの水晶に手を(かざ)していただけますか?」


「えぇ、はい」


 俺は提示された拳大の水晶に、右手を(かざ)した。

 すると水晶の中に、オレンジ色の光が浮かんでくる。


「あの……これなんですか? 2年前はこんな水晶、無かったと思うんですが」


「最近導入された『ステータスチェッカー』ですね。以前まではレベルやステータス、職業は全て書類に記載していただいていたのですけれど、残念なことに偽る方が大勢いらっしゃったのですよ。そのことが冒険者様達の中でも問題になりまして、今ではこのように水晶に手を(かざ)していただきましてステータス等を読み取る形式に変わりました」


「へぇ……ちなみにこのオレンジの光はなんですか?」


「さぁ? わかりません。とにかく、この水晶で読み取った情報を、冒険者カードに転記させるだけですので」


 それでいいのか、ギルドよ。

 わからないって……、もっとちゃんと教育をしっかりしろよ。


「さぁ、これで終了で……す?」


「? どうかなさいました?」


「い、いえ。……少々お待ちいただいても、よろしいですか?」


「え、あぁ……はい」


 ドタドタと奥の部屋に向かう受付嬢。

 なんだろう、重大なトラブルでも発生したのか?

 

 そしてしばらくすると、受付嬢が戻ってきた。

 隣に身長2メートルはありそうな、屈強な男性を引き連れて。


「お待たせいたしました。わたくし、当ギルドのギルドマスターをやっております、ネミラス・ミラスルと申します」


「え、あ、ど、どうも……」


「まずはお先に、冒険者カードをお渡しいたします」


 渡された冒険者カードを確認する。


────────────────────


【名 前】:アルガ・アルビオン

【年 齢】:18

【種 族】:人間

【等 級】:E

【職 業】:テイマー・配合術師

【レベル】:5


【生命力】:15/15

【魔 力】:10/10

【攻撃力】:5

【防御力】:5

【敏捷力】:5


【汎用スキル】:なし


【特殊スキル】:なし


【固有スキル】:なし


【魔法スキル】:なし


【職業スキル】:《仲間術(テイム)》 LvMAX

        《配合術(ミックス)》 LvMAX


────────────────────



「……?」


 相変わらず貧弱なステータスだ。

 だが……見慣れない項目が存在する。


「なんですか、この『配合術師』と『配合術(ミックス)』って」


「申し訳ございません。我々も初めてお目にかかりましたものでして……恐らく名称から察するに、使役した魔物同士を掛け合わせることが可能な職業だとは思います」

 

「? それ、テイマーの基本じゃないんですか?」


 2匹の魔物を掛け合わせることで、新たな魔物を作成する。

 そんなこと、テイマーなら誰でもできることだろう。

 現に俺はテイマーになって3年が経つが、これは普通に行っていた。


「……失礼ですがお客様、テイマーになられて何年が経ちましたか?」


「えっと、ざっくり3年ですが?」


「テイマーとしての勉強は、学院で行いましたか?」


「いえ、独学ですが……」


「お客様の周りにテイマーのお知り合いの方はおられますか?」


「いえ、いませんけれど……」


 なんだ、何が言いたいんだ。

 受付嬢も驚愕に満ちた表情をしているし、一体なんなんだ。


「……単刀直入に申し上げますが、それは普通のテイマーでは行えません」


「……え?」


「普通のテイマーは魔物を使役するだけです。手に入れた魔物を進化させることで新たな魔物を誕生させることは可能ですが、掛け合わせる……ここで言うところの”配合”させることで新たな魔物を誕生させることなど不可能です」


「……え?」


 だったら俺がこれまで普通に行っていたことは、全て……『配合術師』としての能力だったというわけか?

 俺は村出身で周りにテイマーなどいなかったが、まさか……こんなところで真実を知ることになるとは。


「さらに申し上げますと……お客様は『2つ目の職業(セカンド・ジョブ)』をお持ちのようです」


「『2つ目の職業(セカンド・ジョブ)』?」


 またしても聞きなれない単語だ。

 配合術師の件だけでもお腹いっぱいなのに、まだ俺を驚かせたいのだろうか。


「ごく稀に……具体的には千年に一度ほどの確率で、2つの職業を所有する方が現れるのです」


「2つの職業……『戦士』と『武闘家』の2つに就いているみたいな感じですか?」


「さようでございます。2つの職業に就いています故、当然ながら2つの職業の恩恵を受けることが可能です。お客様が申し上げました『戦士』と『武闘家』であれば、『戦士』のように武具の扱いに長け、同時に『武闘家』のように徒手空拳にも秀でている。と、いった具合でございますね」


「なるほど……」


 そう考えると、『テイマー』と『配合術師』の相性はピッタリだな。

 魔物を仲間にできる『テイマー』と、その魔物を配合して新たな魔物を生み出せる『配合術師』。

 考えれば考えるほど、これほど2つの職業の利点が合致したモノは存在しないだろう。


「ありがとうございます。色々と教えていただいて」


「いえ、そんな滅相もない。わたくし共の方こそ、知見を広げさせていただきまして感謝しております」


「あはは、いえいえ。それでは、この辺で失礼しますね」


「えぇ、アルガ様。またのお越しをお待ちしております」


 ギルドマスターのネミラスさんと受付嬢に別れを告げ、俺はその場を去った。


 しかし……まさか、俺が千年に一度の逸材だとは。

 それに何人もの冒険者を見てきているであろうネミラスさんでも知らない、未知の職業『配合術師』に就いているとは。

 俺がこれまで普通に行ってきた魔物の掛け合わせが、”配合”と呼ばれる行為で他のテイマーでは不可能な芸当だとは。


 今日は驚きでいっぱいだが、とりあえず帰ったらさっそく試してみよう。

 所持している魔物も10匹ほどストックがいるのだから、貯蔵は十分だ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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