グーテとロウ
私は自己紹介をした後、ベッドに腰掛ける。彼は私が座る場所を確保するために移動してくれた。
「僕はグーテ・フォン・アナラーハナタ。第五王子だよ」
今まで秘匿されていた王子、か。ずっとひとりぼっちだったのだろうか。体をよく見ると、この年の少年にしてはあらゆる部分が細い。病弱だったのもあるか。
「お父様に『会ってほしい』。そう頼まれたんだね」
グーテは儚げに笑った。その笑みは自嘲している笑みにも見えた。だから、私はかつて日向を励ますためにしていたことをしてしまった。グーテが今にも消えてしまいそうで、怖かった。誰かがいなくなるのは、怖い。
「大丈夫。あなたは一人じゃない。私がいる」
グーテの頭を抱えるように抱き締める。彼は驚きすぎて固まっていたが、私はそのまま話し続ける。
「時々、遊びに来てあげる。あなた、体弱そうだから第一王子みたいに家に来れないでしょう?」
「いいの・・・?」
私はグーテから離れ、とびきりの笑顔をしてやる。それを見たグーテは突然号泣し始めた。私は慌ててどうしたのかと聞いた。すると彼は、大人としか話せなかったから同年代の友達ができて嬉しい。そう言った。ただそれだけのことで泣くとは。
「君、そういえばいくつ?僕は十二歳だよ」
「私も。儀式をして来たんだ」
「そっか。同い年なんだね」
それから私はお兄ちゃんのようにちょいちょいグーテに会いに行った。彼は私が来るとたくさんのお菓子や本を用意して待っていた。
そんな日常が何ヵ月か続いたある日、お父様にこんな話をされた。
「明日、第二王子とラズベル公爵家の令嬢の婚約発表のお茶会があるんだって。国王にロウちゃんを出席させろって言われちゃった。第五王子も出すらしいよ」
お父様は不貞腐れながら言った。まさか、第五王子まで出すんだ。最近は出歩けるようになり、正式に王子として発表された。彼にとっては初めてのお茶会。私にとっては前世の記憶を取り戻して初のお茶会。
「お父様、それ、出る。第五王子と一緒に出る。服もお揃いにしようかな。王族だから紫が入った服を着て来るよね。すぐに準備する!」
「ろ、ロウちゃん!それだとロウちゃんが第五王子の婚約者だって勘違いされちゃうよ」
「パパがロウちゃんを外に出したくないだけでしょう」
「ママ、余計なこと言わないで」
後ろはプチ夫婦喧嘩が始まったけど気にしない。第二王子の婚約者。そして、乙女ゲームのヒロインに会える!はっきり言って第五王子は言い訳だ。
私はこの上なく胸を高鳴らせながら、シアと共に明日の準備をした。
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「よかった。ミカちゃん楽しそうね」
「償いになったのかは怪しいが、よかった」
「彼とも再会できたのね」
六人の男女がテレビの前で感想を言い合う。テレビにはスキップをするロウ。もう一つのテレビには服の採寸をするグーテ。最後の一つのテレビにはヒロインが。
「ミカちゃん。この世界の真実に、気が付けるかな?君なら、俺達を解放してくれるよな」
神々の策略は止まらない。神はどこまでいっても神だった。自分のことしか考えず、人間はただの駒である。
本当は神様出すつもりなかったけど、短すぎたので書いたらこんな内容に。また設定考えなきゃ。ブックマーク、ありがとうございます!