儀式は事件が起こると決まっているのです
ちょっと消しました
私は太陽が昇るのと同時に起き上がる。全然眠れなかった。
謁見について考えていたら緊張して眠れなかった。眠れたとしても夢で日向に告白されたシーンを何度も再生された。
ここまで来ると何がなんでも日向に会いたくなってしまい、部屋の中の書物を読み漁ってしまう。
「こりゃ、重症だ。日向に笑われる。恥ずかしい」
日向のことを忘れたいとまでは思わないが、さすがに頭の隅に追いやりたい。
私は頭を抱えながらシアを呼ぶ。シアになら話してもいいかな。むしろ話させてくれ。
「シア、髪を結いながらでいいから聞いてくれる?」
「はあ、なんでしょう」
私はシアに前世の記憶の話をして、日向の話もした。シアは最初こそ私の言いつけを守り、手を動かし続けていたが、日向の告白の数日後、死んだことを話したら手を止めてしまった。時間ないんだけど。
「う、うっ、ひ、姫様。姫様が可哀想。哀れです。神様最低です。日向様もお可哀想」
号泣してました。ええーちょっと。そこまで悲しまれるとこっちも泣きそうになるよ。
「姫様は、日向様のことどう思ってるんですか」
涙を拭き、シアがそんなことを聞いてきた。踏み込むなあ。
「いや、まあ、その、嫌い、ではなかったよ?」
「なんで疑問形なんですか。好きか嫌いかで言ったら?」
「それは人間としてかな?」
「そんな訳ないでしょう。異性としてですよ。なんで避けようとするんですか」
シアは恋愛話になると口が悪くなると言うか、ズケズケものをいうようになるらしい。何て奴に相談してしまったんや!
「そろそろ時間ですね。儀式と謁見が終わったら、たっぷり聞かせていただきますから」
悪魔のような笑みを浮かべてシアは私を玄関まで押していき、馬車に押し込んだ。あ、これ、ダメな奴だ。全部白状するまで部屋から出してくれない。
「ふふふ、楽しみですねぇ」
私のテンションはダダ下がりで、馬車はそんなことを気にせず出発した。
馬車で二時間ほど揺られると、目的地に到着した。まずは領地内にある神殿でステータスの確認をする。ゲームでは光と闇属性で母と同じだった。果たしてどうなることやら。
「グリーム男爵、お久しぶりですね。ご令嬢のお誕生日、おめでとうございます」
神殿の入り口で、神殿の責任者が私達を出迎えた。ものすごくいい人そう。
「ああ、息災か?今日は娘を頼むぞ」
父は私を責任者に渡し、馬車に一度戻っていった。母は後から来るらしい。早起きが苦手だから。
「ロウ様、儀式の衣装に着替えましょう。他の子供達と同じ部屋でもよろしいですか?」
責任者が優しく問いかける。私は元気に頷いて肯定の意を示す。
案内された部屋に行くと、平民の格好をした女の子、少し身なりの良い服を着た女の子、儀式用の衣装に着替えている女の子が数十人ほどいた。
私が入ると、皆が注目する。一部の女の子は私に礼をしてきた。たぶん、大きい商会の子供だろう。礼をしなかった子達は平民。私は基本、屋敷から出ないから知らなくても仕方ない。
「皆さん、楽にしてください。今日は儀式を受けにきた子供です。皆さんと同じ目的で来たんですから気にしないで」
私がそう言うと、おしゃべりを開始した。私は更衣室に入り、鞄から服を取り出す。この衣装は父と母が用意してくれたものだ。国王が用意しようとしてくれたけど、さすがに親が用意しないと変な噂が立つため、謁見の時に着る、ということで妥協してくれた。
私は鏡の前でクルっと回る。黄緑色の服がふわりと広がる。自分で言うのもなんだけど、妖精みたい。幻想的だ。
「それでは、儀式の間に移動します。私について来てください」
神殿の人とおぼしき女性が部屋に入ってくるなりそう言った。私は急いで更衣室を出る。着てきたドレスが少しくしゃくしゃになっちゃったけど、いっか。
廊下を歩き、儀式の間に入る。六柱の神々の像が並んでいた。おお、壮観だな。
この神々がこの世界の想像主。私的には運営にしか見えない。あれ?この六人って資料集の最後に載ってなかった?制作チームだったはず。
「まさか、あの人達は本当に神なの?」
男子とも合流し、儀式が開始された。一度全員真ん中に集まり、祈りの言葉を捧げる。次に、一人ずつ中心に立ち、膝をつく。すると、像の何体かが淡く光る。光の加減は人によって変わり、光る像の数や光る像の組み合わせは千差万別。持っている属性に合わせて光るのだろう。光の強弱は魔力量と言ったところか。
オオトリは私みたい。まさか、貴族だから?差別!何て言っても仕方ないからやりますよ。どんな結果になっても責めるなよ。ったく。
私は中心に歩いていき、膝をつく。目を閉じて祈りの言葉を心のなかで唱えていく。数分後、皆が騒いでいる声が聞こえた。何事かと目を開けると全ての像が今までで一番強い光を放っていた。え、ヤバ。
はい、日向くんのこと、当分引きずります。学園に行くまで。