日向は何処
僕は、一人でトボトボと歩いている。いつもなら隣にミカがいたのに。ああ、会いたい。一度告白したら、改めてミカへの恋心を実感した。何度もメールを送ってみたけど、既読が付かねぇ。いやね、いいんだよ?あいつが何しようとすぐに許しちゃうし、尻拭いだって喜んでするよ。そうだ、こうなったらストーカーみたいに大学も、仕事も全部付いて回ってやろう。振り向かせてやろう。
そう意気込み、僕は家に入った。スマホを見ると、ミカから連絡が来ていた。
『ごめん、日向』
何に対してのごめんなのか、僕には分からない。僕の身体が急に冷えた。あれ?冬でもないのに。
僕はそれからご飯を食べたり、宿題をしたりと普通の学生らしい生活をいつも通り送った。翌朝、あれを見つけるまでは。
**********************
僕の両親は朝は早く、夜は遅く帰ってくる。だから、休日ぐらいしか顔を会わせない。
寂しいが、仕方ないと割り切ると、案外楽だったりする。
考え無しに登校していると、道に何かが転がっているのが見えた。少し近付くと、それが人の形をしていると分かる。酔っぱらいかな。一応、確認しとこ。
倒れている人まであと五メートルのところまで歩みを進める。刹那、足がコンクリートの道にくっついた。違う、僕の本能が拒絶しているのだ。これ以上は、近付くな、と。
「ミカ・・・・・・?」
何とか声を絞りだし、呟く。倒れているのは、ミカだった。頭からは血が流れている。僕は無理矢理足を動かし、ミカの頭の方に座り込む。口に耳を近付ける。呼吸音が、無い。ああ、死んだのだ。彼女は死んだんだ。僕の幼馴染みは、大切な人は、もう、どこにも。
「ああ、あ、あ・・・・・・」
泣けない。泣くに泣けない。サスペンスとかではよく泣いてるけど、あの人達は心に余裕があるのだ。目の前で大切な人の命の灯火が消えた後を見ると、心を守ろうとして、別のことを考える。まさしく、今の僕のように。
「警察に、電話」
鞄からスマホを取り出し、電話をかける。何て答えたかは全く覚えていない。しばらくして、たくさんの大人が来て、囲まれていた。「怖かったね」とか「もう平気よ」とか言われた。何がだ。何に対して怖いと思えばいいんだ。何がもう平気なんだ。ミカは、もっと怖かったはずだ。痛かったはずだ。僕はミカの体に抱きつく。大人達が引き剥がしてくるが、必死で抗う。やめろ、僕からミカを奪うな。なんで、なんで。
その後、葬式やらお通夜やらにも出たけど、隅っこの方で、ミカの笑った遺影を見ていた記憶しかない。
ミカのお葬式が終わった数日後、僕はミカの家を訪ね、部屋に入れてもらった。ミカが死んでから、部屋から出ることはなかった。それを責める者は誰もいなかったし。
「ミカの部屋は、そのままにしてあるわ。欲しいものがあったら、持っていっていいから」
僕はミカの母親の言葉には答えず、ドアを閉めた。ミカのベッドに倒れ込み、匂いを嗅ぐ。
「遅すぎたか」
ミカの匂いはほぼしなかった。残念。最後にミカの何かを感じとりたかったのになぁ。
ミカの部屋は緑と青で統一されており、清涼感があった。けど、もうすぐここは朱に染まるだろう。僕が、染めるから。
「キスぐらいは、してみたかった」
ミカ、待ってて。君を一人になんかさせないから。本当に、愛してるんだ。だから、部屋を汚すことを許して。君は、僕の全てなんだから。
ペン立てからカッターナイフを取り出し、刃を出す。カチカチと音が鳴り、刃は怪しく光る。それを心臓に向かって振り下ろした。ミカが、隣で微笑んでいるのを、見た気がした。
**********************
「はあ、すごいね、君」
「恋の力、恐るべし」
誰かの声がする。呆れたような声でそう言われ、イラっとした。ミカの声じゃない。誰だ。
「山田ミカに会いたいか?」
当たり前だろ。何のために後追い自殺したと思っているんだ。
「いいだろう。君を山田ミカの友人に転生させてやろう。ただし、時が来るまで、記憶は封印する」
僕は、誰だっけ?
皆さん、お久しぶり!評価諸々増えてて嬉しいです!月一更新目指します




