デート資金準備編
デートに誘う作戦を立ててから数日が経過した。
妹に変なメールを送っていた比嘉川からの接触もなく、授業を受け金城さんの弁当を一緒に食べ、放課後はゲームをしたりカズキと遊んだりして平和にそこそこ楽しく過ごせている。
入学式付近が色々ありすぎただけで、本来これが普通なのだが平和過ぎて逆に怖いと思ってしまうあたりだいぶ何かに毒されているのかもしれない。
今は放課後。
カズキの家にお邪魔している。
今日は珍しくカズキ以外の家族が遅くまで帰ってこないということでリビングを堂々と占領し、大画面で格闘ゲームをしているところだ。
俺の家よりカズキの家の方がモニターがデカくて迫力があっていつもより楽しい。
俺の家は父さんも妹もゲームするのでソフトもハードも種類が多いしよく羨ましがられるから、隣の芝生は青いってやつなんだろう。
「そういえば金城さんとの仲を進展させるサポートってどうなったんだ?」
必殺技が入り数秒間操作をしなくても良くなり余裕が出来たタイミングで最近の疑問をぶつける。
カズキは数日前にサポートしてやるみたいな発言をしたのだが、これといって何か行動を起こしたかと言われれば、特に何も無い。
むしろ放課後以外は教室で話しかけてくることも少なくなっているし。
「あー確かそんな事も言ってたなぁ。いやーおれは大変だったんだぞ? 誰がまいたか知らない二股騒動の火消し」
「それ、そんなに酷いことになったのか?」
数日前そんな話噂があると聞かされたが、翌日以降のクラスメイトは特に俺に直接聞いてくるようなやつもいなかったし、嫌悪感を出しているやつもいなかった。
だからてっきり自然に風化したもんだとばかり思っていたが。
「そうなんだよ。その噂が上がってすぐに比嘉川が否定したんだよ。でも変なことにいつの間にか二股から比嘉川を捨てて金城に乗り換えたクズ野郎みたいな噂に変わってんだよ。寝て起きたらな」
「え? クリスマスに俺から振ったのに?」
「それは詳しく知ってるおれもそう思ったけど、よく知らない変な正義感持った男子達はさ、最低だのクズだのって盛り上がってて、誤解を解くのに苦労したんだよ。入学そうそう彼女もちでなんかなんか皆いい印象持ってないし。サポートまでリソースが回ってなかったんだよ」
確かにここ数日放課後以外は話かけて来ないと思っていたらそんな苦労をかけていたのか。
だとすると俺も何かしらお礼をすべきだと思う。
しかし、ここで妹を使うというのはクズ兄ぽくて嫌だなぁ。
というか俺男子からヘイト買ってたのか。
通りで話しかけても反応のが鈍いわけだ。
悲しい。
「そうか事情も知らず急かすような発言をして済まないな」
「いや、いいんだ。これくらい」
「ひとつ言っておくと、俺にどれだけ恩を売っても妹の好感度はあんまり上がらんぞ?」
「いやそれはそんなに期待してない。だが感謝の気持ちがあるのなら今度マリちゃんとゲームを……」
「あいつ最近ダイブ式VRMMO? なんかそんなのにハマってるらしいぞ? 俺も少しやってみたが現実に帰りたくなくなりそうだから今はやらないようにしてるけど」
「それって最近金城デジタルクリエイティブってゲーム会社とか発売した引く値段するやつだろ?」
ダイブ式VRは五感をゲームと接続して、現実の体を動かすことなく、ゲーム内でアバターを動かして遊べる、ゲームの中に入って遊びたいそんな欲求を叶えた夢のゲームなのだ。
詳しいことは俺もよく知らない。
このゲーム1個買うと、年収が吹き飛ぶ人もいるぐらいの値段高い。
なのでほとんどはゲーセンで遊ぶか買うにしてもローンを組んで買うの2択で遊んでいるのは基本金持ちと社会人のみらしい。
「そうそう。うちの父さんそこで働いてて、1台試作機を貰えたから喜んで妹にあげちゃって」
「妹は妹でそのMMOのアバターが可愛いしオシャレも出来るとかで冒険にも出ずに装備買いまくってオシャレして金持ちのおっさんから貢いでもらってるらしい」
「それマリちゃん大丈夫なのか? 変なおじさんとかに付きまとわれたりとか」
「このゲーム買える奴なんてそれこそ社長とかだぞ? そんなに暇じゃないだろ」
プロジェクトのチーフの父さんで半月以上家に帰って来られないのだそれ以上の地位の人なら暇はないだろう。
「それはそうか。でもさすがにVRゲーム機は買えないよなぁ」
「まぁゲームするくらいなら上手いこと言っとくよ」
「本当か! 絶対だぞ?」
どうやら面倒な噂の対処をしてくれたみたいだし、伝えるだけなら妹の私的利用にはならないだろう。
「任せておけそれでこちらの本題なんだが……」
「それは手配しておこう。だがなレンタ。デートするならひとつ問題があるだろう?」
「金だよ金。お前確か今月もう2円しか持ってなかったよな?」
この前スーパーで安い缶のジュースを買ったらお釣りが2円でヒヤッとしたもう少し消費税が高かったら死んでたった笑い話の夜したんだったな。
「資金調達をしろと?」
「あぁ。うっかり映画のチケットが当たっても肝心の交通費がないんじゃ話にならない」
確かにそうだな。
せっかくのデートなのに現地集合現地解散では雰囲気台無しだ。
それに映画をみた後はカフェとかの落ち着けるところにはいって感想を言い合うというのがデートの基本だ。
金がないとそれもできない。
最悪5月まで待てばお小遣いが支給されるからそこまで待つことなしでは無いが、ゴールデンウィークは妹と金城さんを引き合せる約束をしている。
いくら彼女でもゴールデンウィークに何度もこっちの都合だけで呼び出すのは良くないだろう。
金城さんにだって予定はあるだろうし、家族の時間っていうのもあるだろから。
概ねカズキの言っていことは間違ってないと言える。
「そうだな早速家に帰ったら資金調達するわ」
その後きっちり格ゲーで連勝すると、気分よく帰宅した。
カズキはとにかくガードしまくるから崩しやすい。
下手にアドバイスして上手くなりすぎると困るから教えないが。
帰宅した俺を出向かたのは妹だ。
「お兄ちゃん遅いよ。今日も友達さんの所いってたの?」
「そうだ。そういうお前はいつ冒険にでるわけ?」
「あたし戦うの苦手だし、欲しい素材はなんか言えば取ってきて貰えるからレベル制限で装備できないって時以外はひたすらファッションセンス磨きしてる」
ゲームの楽しみ方は人それぞれだ。
ファッションに楽しみを見出すのも悪くは無い。
ゲームがシステム的に許しているのなら何をするのも自由それがゲームの良さだ。
そう言い聞かせつつ、晩御飯の支度を手伝う。
本日の夕食も妹と2人きり。
カズキなら泣いて喜ぶシチュエーションだろうね。
俺は今考えなければならないことがある。
それはデート資金調達だ。
短期的でそれなりにまとまった金を手に入れる方法。
親にねだろうにも、父さんも母さんも4月に入って新人の教育で、処理しないと行けない仕事が沢山回っているらしい。
なので最近また、帰ってくるのはいつも日付が変わったあとの事が多い。
父さんに関してはもはや泊まり込みが基本。
数日が前にふらっと帰って来て妹にゲーム渡したらそのまま新しいゲームの開発のために泊まり込みを初めてしまった。
そんな訳でそれ以外での方法を夕食の間も俺はそれを考えているのだ。
「お兄ちゃん何考えてるの?」
「え?」
「え? ってなんでそんなに驚いてるの? 顔に出てるし、手も止まってる。悩みなら話してみなよ」
「話してもマリじゃ解決できないぞ?」
「そんなの聞いみないと分からないでしょ?」
「そうか? 今度金城さんをデートに誘おうかと思ってるんだが、そのための資金がなくて困ってるってわけだ。ほらな、マリには解決できないだろ?」
「あたしがお父さんに頼んであげようか? それで一瞬で解決すると思うけど?」
確かに妹に激甘の父さんなら妹がおねだりすれば100万でも出す可能性があるけど。
「本当か?」
「もちろんタダでとは行かないけど」
「何させるつもりだ?」
若干恐怖を感じつつ問いかける。
上手い話には裏があるきっと宿題代わりにやれとかそういうやつが来ることだろう。
「それはあたしとも出かけてよ。もう1年以上どこも行ってないし。それとデートの日のお土産よろしくってのが条件」
「そんなことでいいなら全然問題ないぞ?」
「うん、任せておいて!」
確かに受験が始まってからいや、その前の彼女が出来てから妹とは一緒に出かけることが無くなった。
だから出かけるぐらいはお易い御用ってやつだ。
それに妹には振られてショックを受けた時や日々細々としたことで助けて貰っているから返せる時に返して起きたい。
だから断る理由がない。
翌日の放課後には俺の部屋の机に妹の字で追加資金と書かれたメモと共に2万円が置かれていた。
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