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噂とデートの計画

階段を上がり2階の俺の部屋に入ると、俺たちはそのままカバンを置いて定位置につく。

 俺はベッドの上でカズキは床にクッションを座布団代わりに座る。

 中学時代何度もお互いの家を行き来しているうちに自然と決まった位置だ。

 

 「なんでそんなに緊張してるんだ? トイレなら下だぞ?」


 しかしカズキは何故は何度も来ているはずなのだが落ち着かない様子でトイレでも我慢しているかのようにモジモジしている。


 「下には行かんし、トイレじゃねーよ」

 「別にトイレぐらい行けばいいだろ。漏らされる方が嫌なんだが?」

 「だって下には……それにもうすぐ」

 

 なるほど。

 好きな子と2人きりになるのは恥ずかしいのか。

 それとこれからお茶もってこっちに来るから緊張してると。

 確かにカズキが来る時に妹が出迎えるのは珍しい。

 カズキが俺の家に来る時は基本放課後猛ダッシュで帰って来るので部屋に入ってから妹が帰宅する事が多いからこうして会話する機会はあまりない。

 さっきは突然で意識する暇もなかったが家に来て落ち着いたところでその事に気づいて意識し始めたパターンのようだ。

 


 「チャラ男の癖に意外とウブだったんだな」

 「誰がチャラ男だおい、おれはまだ……。と、とにかくお茶が来たら目的を果たさせてもらうぞ?」


 カズキは、やや強引に話題を変えお茶が来るまでスマホをいじり始めた。

 何やらメッセージのやり取りをしているらしく、ずっとスマホのキーボードを打ち込んでいる。

 途中、首を傾げたりムッとした表情をしたり何やら急がしそうだ。

 しばらくスマホをいじっていたカズキが不意に顔を上げこちらを向いた。


 「なぁ? レンタ」

 「ん?」

 「お前二股した事なんてないよな?」

 「なんだそれ? 俺の恋愛遍歴は誰よりも詳しいだろ」

 「そうなんだが、なんかうちの学年の女子の間で須藤は金城と比嘉川に二股かけて比嘉川を捨てたっていう噂が流れ出してるらしいんだよ」

 「それ時系列おかしいだろ?」

 

 比嘉川と付き合っていたのは去年のクリスマスの夕方までだ。

 そこから俺は1週間ほど落ち込みその間カズキと妹に慰められそこから受験終わりまで勉強しかしてない。

 そして入学式当日に告白され付き合うことになった。

 どう考えても二股していたなんてありえるわけが無いというのは知っていればわかることだ。

 

 「そりゃレンタの恋愛事情を知ってるおれは、そうだけど、大半の人間はほとんど知らないからな。知ってるのはクラスメイトの前で比嘉川を振って堂々といちゃついたことしか知らない」

 「イチャついてねぇーし、そもそもなんでそれ知ってんだよ」

 「おれはクラスメイトだぞ? それにお前より交友関係は広いし。まぁいいや噂についてはおれが何とかしとくわ」

 

 確かにこのチャラ男、俺よりも友達を作るのが早い。

 現に俺は今のところ新たな友人には1人も恵まれていない。

 


 「お兄ちゃん、お茶持ってきたから扉開けて」


 俺が悲しい自分の交友関係を思い出しているところにそんな明るい声が聞こえた。

 俺が動くよりも前に立ち上がりにカズキが扉を開ける。

 その動作はめちゃくちゃ早くずっと構えていなければ出来ることじゃない。


 「あっ、わざわざごめんなさいお友達さん。もーお兄ちゃん、お客さんを働かせないの」

 「いえ僕の方が近かったので」

 「ほんとありがとうございます。これうちにあったお菓子ですけど」

 「さっき買ってきてるの見てただろ」

 「うるさ。こういうのはマニュアルがあるでしょうが」


 お菓子買ってきてるのにお菓子を持ってくるのについついツッコミを入れてしまったのが良くなかったようで妹は少し怒り気味だ。

 

 「僕、お菓子大好きなのでありがたく頂きます」


 そこに喧嘩を止めるように割り込むカズキ。

 ちなみに言うとカズキは甘いお菓子はあまり好きじゃない。

 中学のバレンタインのチョコは基本甘いものが苦手だからって言って断っていたはずだ。

 これが恋する男子です。

 好きな人によく思われるためな苦手なものでも好きだと言い張る。

 まぁそれでも妹はやらんけどな。

 俺が認めたとしてもお父さんはもっと厳しいし。


 妹が去り、俺の部屋に沈黙が訪れる。

 カズキは妹と話せた事が嬉しいようで、にやけ顔で天井を眺めていた。

 

 「ふふっ。ぐっふふふ」

 「きもいぞ」

 「少しは幸せに浸らせろ。お前は彼女ができて幸せかもしれないがおれはまだ。ってそんなことはいいんだよ。そう、その彼女だよ彼女金城。その尋問を忘れていた。ええい全部吐け。どうやって出会ってどう告白された?」

 「それがよくわからん。順を追って説明するすると比嘉川に呼び出された俺は、そのまま復縁を迫られて、返事に困っている所に颯爽と現れて付き合うことになったからって言い出したんだ」

 「もう付き合ってたのか?」

 「いや全然。自己紹介の時に少し話した程度だった」

 「じゃあいつ付き合い始めたんだよ」

 「それで、比嘉川が退散した後正式に付き合って欲しいって言われて色々あって付き合うことにした」

 

 この辺りの色々は既に意味をなさないので省略。

 もう比嘉川を見ても申しわけない気持ちもない。


 「じゃあどこまでしたんだよ? それが1番重要なんだが」

 「まだ何も。デートすらしてない」

 「お前ってやつは。比嘉川の時は付き合ったその週の休みにはデートに誘ってたというのに」

 「そりゃまだ入学してまだ2日目だし」

 「それで付き合ってるといっていいのか?」

 「別に良くないか? 弁当だって作ってもらったし」

 「それ聞いたぞめちゃくちゃイチャついたって」

 「べつにイチャついたつもりは無いぞ?」

 「じゃあその弁当を作ってもらったお礼にデートに誘え。男ならビシッと」

 「金がない」

 「このクズ野郎が」

 「半分はカズキのせいだぞ?」


 面白そうなゲームの動画ぽんぽん送ってきやがって。

 しかも丁寧に購入ページのリンクとセットで。

 そんなの買わないわけないだろ。


 「あー分かったそこはおれがさりげなく映画のペアチケットでも福引で当ててやるから」

 「それ不正だぞ?」


 金城さんに嘘はつけないことをカズキは知らないんだった。

 と言ってもこれは金城さんと表面上喋ってもわかるものじゃない。

 説明するのは難しい。


 「大丈夫だってバレないから。おれが自然にお前が金城を誘えるようにサポートしてやる。彼女とデートしたいだろ?」


 それはしたい。

 付き合ってる以上私服をみたいと思うのは高校生として自然な欲求だ。

 付き合うと決めた以上少しでも金城のことを知るべきだし。

 金城さんにどんな思惑があっても比嘉川との関係を断ち切ってくれた恩人だから。

 そんなわけで俺達は金城さんとデートするための作戦を始めることになった。


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