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姫がさらわれました!@活動休止  作者: 立里 心
姫も歩けば魔王にあたる
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裏路地と紳士②

タイト〜ル詐欺は続く〜よ〜ど〜こまで〜も〜


(´;ω;`)

再びやって来ました。そうです裏路地です。其処で私は荒れた呼吸を整えていました。そりゃあそうです。地に足がつかないというのは存外怖いものでしたから。


「落ち着きましたか?」

「えぇ、まぁ」


少し離れた所から青年が話しかけてきました。


「どうしてあんな無茶をしようとしたのですか」

「何のことです?」

「それですよ」


そう言って青年が指したのは私が家から拝借した短剣でした。きっとあの場で私が負けると思ったのでしょう。


「無茶では有りません、これは魔法の剣ですからあんなチンピラ達には負けないですよ」


私が自信ありげに短剣の自慢話をすると、青年は頭を抱えて溜息をつきながら説明してきました。


「あなたはその短剣にギリギリまで魔力を込めていたでしょう」

「だってその方が強いです」

「その短剣、相当良い物ですよ。それこそ伝説級の物です。そんないっぱいに魔力を込めて使ったら辺り一帯は焼け野原になりますよ」

「えっ!」


私は驚きと恐怖で短剣を手から溢しました。あの時、あの場所で、私が魔法を放っていたら一体何人の人が死んでいたか、そう考えると恐ろしく思えました。


青年は私の落とした短剣を拾うと私の手に戻してきました。


「こんな剣の本当の力を引き出せる人間は、よっぽど強い冒険者、もしくは王家かそれに近い貴族だけでしょう。いづれにしてもそれだけの魔力を持つあなたが使えないのは不自然ですねぇ」

「うぐっ」

「まぁ、強い力も使いようです。今後間違いを犯すことの無い様しっかりと学ぶと良いですよ」


返す言葉も有りませんでした。


青年はっと何かを思い出した様に手を打ちました。


「そういえば、こんな所で貴方と出会うことになるなんて正直驚きでした。やはり運命ですかねぇ」


青年は私と知り合いかの様な口振りでした。もちろん私は彼のことなど知りませんでした。


「誰方かと間違えてはおりませんか?私には貴方と以前顔を合わせた記憶が無いのですから」

「えぇ、これが初めてですよ」


可笑しな話である。


「例え初対面であったとしても、私には分かります。これは運命的な出会いだと!」


くっっっさい言葉!


「この奇跡、私と貴方の掛け替えのない縁でしょう、私が貴方を守ります。どうか私と歩みを共にしてはくれないだろうか」


歩みを共にする⋯⋯⋯⋯婚約!────何なんだ、何なんだこの人は。出会ったばっかりの人間に求婚するなんて、一体彼は何処に恥ずかしさを棄てて来たのでしょうか。聞いているこっちの顔が熱くなりそうです。


「おや、どうしました小刻みに震えて。体調でも優れませんか?」


青年は私に近づくと私のフードの中に手を突っ込んできて、その掌を私の額に当てました。


「あぁ、少し熱がありますねぇ。お祭りだからってはしゃぎ過ぎてはいけませんよ」


私ははっきりと分かった。この人、阿呆です。男性がそうやすやすと女性に触れるなんてことは無いし、人のことを祭りに浮かれて熱を出す子供と間違えるのだから。


だが、私は寛大な心で許すことにします。


「いいえ、大丈夫です。熱などありませんから」

「むぅ、そうですか」


青年はイマイチ私の言葉を信用していないのか、疑り深く私の背中をさすっていました。それより、何故この青年はこんなにも軽薄に私に接してくるのでしょうか。助平なのでしょうか。そのくせ、妙に所作が紳士的なのがどうにも鼻につきます。


私の背中をさすっていた青年の手がだんだんと下に降りてきました。背中から腰、腰からその下へと⋯⋯⋯⋯。


────触られた!青年が恍惚とした表情をしている気がするのは気のせいでは無いでしょう。あまりに突然の出来事に私は沸々と腸が煮えくり返るような思いです。


「この⋯⋯」


私は短剣を強く握り直しました。今度は焼け野原を作らないよう少しだけ魔力を込めて、


「スケベ男っ!」


私が剣を横薙ぎに振るうと、その刃からはまるで大きな幕のように炎が吹き出ました。


「あっ⋯⋯」


牽制のつもりだった炎は予想以上に強く、私は驚きで短剣を振るう途中に手から離してしまいました。


一瞬、青年の安否と私の保身が頭の中でせめぎ合いましたが、愚かにも私の保身が勝ってしまい、勝手ながら青年の安否を頭の片隅で祈りながらその場から逃げることにしました。




建物と建物の間、そこで一人の少女によって炎に包まれる事となった青年、彼は憐れにもその一生を終える────と、いう事は無くその場にただ呆然と立ち尽くしています。


彼は自分の頬を撫でると、その手に付着した己の血を眺めた。先程の少女によるものだ。まさか自分に短剣を振るうだろうとは彼は露ほどにも思わず完全に油断をしていました。


「やってしまいましたね⋯⋯」


青年は忌々しげに自らの『手』を見つめました。彼にとって顔に傷が出来た、などという事はどうでも良く、その手が少女の腰のその下を触ってしまった事がどうしても許す事が出来ませんでした。


「こればっかりは⋯⋯どうしようもないのでしょうか」


呆れの様な、諦めの様な深い溜息を吐くと、青年は少女の落とした短剣を拾い上げました。


「嫌われた⋯⋯でしょうか、本当は本人承諾の上でが良かったのですが、もうあの手しか無いですかね」


青年は誰に向けてでも無く一人でそう呟くと、少女が逃げていった方向とは逆、裏路地の奥の方へと消えていきました。


前話を投稿して思ったのですが、文章による表現って難しいですね。。・゜・(ノД`)・゜・。

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