第17話 拳から始まる誓い
当のライダが煤けた服に発射済みの短銃をぶち込んで戻ってくる。戦いの疲れとは明らかに別な、険悪な表情で、喧嘩売りにいくみたいに迫った。後ろから続いてくるハルトたち三人、次第に顔を寄せ合って、ライダがどんな行動をとるのか要らぬ心配をする。
「どうするかな」
「抱きしめるかな」
「いやまずビンタだろうよ。女の子同士の激動の末、大体決まってる」
「たしかに、あんなに肩を怒らせてるし。上手く仲直りできるといいけど」
「さあ・・・」
もっとも、一連の二人のやり取りから最後は上手くまとまるとは思っている。クリエが如何に捻くれた感情で行動していたことへの批判はあるにせよ、互いは受け入れ合うのだろうと、そうでなくてはおかしい。
ただ、新たな始まりの第一歩は、想像より些か激しかった。ライダの行動を目の当たりにして一同固まる。
「うぐ・・・」
クリエは何も言い始める前に鉄拳によって殴り飛ばされた。格闘技の選手でも顔を顰めそうな強烈なパンチである。歯が折れることはなかったが、止まっていた鼻血が再び流れた。ライダは覆い被さって胸ぐら掴むと、今日何度目かの涙をまた流して目を剥く。
「なんでこんな危ないことをしたっすか!危うく死ぬところだったっすよ!好きなら好きって、なんで素直に伝えないっすか!」
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・私、ほんとに不器用にしか考えられなくて」
「不器用で済む話っすか!バカっす、アホっす、救いようの無いバカでアホでマヌケで、ええと、バカっす!」
「その通りよ。大切な短剣や船まで、危険に晒して・・・」
「短剣や船のことはどうでもいい、なんて言えないっす。取り戻せてよかった、賊に渡さなくてよかったって、そう思うっすよ。でも、だけど、私は、クリエがあんな危ない橋を渡ってたことに怒ってるっす!わからなかったっすか、悪党連中と取引してたら、命まで失うかもしれないって、思わなかったっすか!」
「・・・ごめんなさい」
「ごめんじゃないっすよほんとうに!」
振り上げられる拳の、クリエは当然の制裁だと感じていたので、受ける気で顔をまっすぐ上に向けた。目は瞑り唇はきゅっと結んでしまうものの。だが予期していた衝撃はなく、代わりに頬へ熱気を纏う柔らかさが、ついでに濡れて耳に息が吹きかかった。
「よかったっす・・・クリエを取り戻せて・・・」
「ライダ」
「もうこんな無茶しないって誓ってくれるっすね?私の側で健康に幸福に立っていてくれるって、誓ってくれるっすね?クリエまで喪ったら、わたし・・・」
ライダの顔は、怒気が詰まりに詰まって弾けた後の、柔和になるどころかくちゃくちゃになって、クリエの平和な幸福を求めて子どもみたいにすがっていた。急に愛らしくなって頭を抱き寄せる、目を細めて、髪を撫でた。
「誓うわ。ライダが、私に恋をさせてほしいって言ってくれたから」
傍らに寄り添うもう一つ、龍眼の短剣が、ロレンスが、鞘の中に勇ましく昇る竜の瞳の宝石が、優しく光っていた。微笑むように。彼女たちの心の中に。




