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副・救世主は悩ましく  作者: 小山モーゼル
第二章 救世始
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第18話 罠

「これでドントール団も終わりだ。あと残ってるのは、ドントール、お前だけだ」

「わかったよ、あんたたちは強い。警察も軍隊もできないことをやってのけたんだからな。しっかし若いんだなにーちゃんたち。惜しいな、その力。一儲けできるってのに」

「興味ない」

「そうか?俺は小さな盗賊団だったのをここまで広げた。こんな世の中だ、力と度胸さえあればどうってことない。俺とあんたで手を組めば国にだって刃向かえるだけの力が手に入るだろう。それでも興味ないか?手を組むならここにある品の半分はくれてやる」


 居丈高な命乞いなのか本気でハルトを翻意させることができると思っているのか、誰にも判らないが、ただ不快感の増大を招くだけで一同苛立ちを覚える。業を煮やしたケーイチは拳銃の安全を外した。


「めんどくせえ撃っちゃえ」

「待てケーイチ。どうせもう逃げられないんだから。ドントール、何を言おうが、何をくれようがお前とは手を組まない。ただ捕まえるだけだ」

「そういうと思ったよ。じゃ、無理は言わねえ。大人しく捕まるとする」

「そうしてくれると助かる。抵抗して捕まるよりはまだ罪が軽い」

「それでも極刑は免れんだろうな。散々悪事を働いてきた。ところで、正義の味方の隊長さんは、やっぱり白い服着たあんたか?」

「隊長・・・?」

「そうなんじゃないまとめ役だし」

「異論はないわ」

「私たちはハルトくんに付き添ってきたもんね」

「付き添ってだなんて。みんな平等に仲間だよ」

「しかしお仲間の言葉じゃ、隊長さんはあんたみたいだな。あの技、あんたが使ってるのか?遠くから敵を狙える。ああ、銃を使うお前さんじゃないが」

「悪かったなド悪党」

「そうだ、打撃魔法を使ったのは僕だ」

「じゃ、一番厄介だったのはあんたなんだな・・・」

「なに?」


 ハルトの疑問符の直後、ドントールは拳銃を発砲した。半身を覗かせていただけだったから見えず、またダラダラと喋る彼にその場で呆れて、誰も取り囲もうとしていなかったのが仇になった。弾はハルトの右肩に当たってめり込み、骨が砕かれる。


「ぐああっ!」

「野郎!」


 ケーイチは即座に撃ち返したがまたも馬車に隠れたドントールは素早く馬に飛び乗ると逃走を図った。拳銃では少し距離を取られてしまえば命中は期待できず、更に馬は右に左に移動しながら離れていった。ラスナとエミリアは倒れるハルトに近づいた。


「ハルト!」

「ハルトくん怪我を診せて!」

「うう・・・なんともないと言いたいけど、かなり酷い。こんな痛み初めてだよ」

「弾が入ってる・・・弾はすぐに取り出せるけど、骨の修復には少し時間がかかるよ。まずは痛みを和らげるから」

「大丈夫かハルト、これじゃあ魔法は出せないか」

「左腕は平気だけど、射程が落ちてしまう。でも痛みが引いてきたし、今から馬で向かえば」

「だめだよ!動かしちゃだめ!痛みはどうにかしたけど今治してる最中だから!」

「となると、自然と俺とラスナがケリをつけることになる。大丈夫、なんとかするさ」

「いや、私だけで決着つけてくる」


 カービンを背中から取ったケーイチを制して、ラスナは凛と言った。彼女はハルトの枕元に跪くと彼の手に自分の手を添える。ハルトは、今回の戦いでラスナには既にスパイという危険な役目をさせてしまっていることもあって、顔色を変えた。


「だめだ!あんな卑怯なやつ、何をするか。それにラスナにはもう危険な役目をさせてるし!」

「アレよりはこっちの方が簡単、私の本当の仕事だから。任せてよ、簡単にやられはしないわ」

「だけど!」

「そういうわけだハルト君。ここはラスナに任せよう。エミリア、鎮静ついでに寝かせといてやれ」

「え?あ、はい!」

「ち、ちょっと待っ・・・」


 エミリアは鎮静の術を追加し、ハルトは間も無く寝息を立て始めた。見届けたラスナは馬に跨った。


「やっぱり援護についていく。また乗せてくれ」

「あんたはいーの、重いし。すぐ追いつかなくちゃならないんだから」

「そうか?それもそうか。じゃ、これ持っていけよ」


 ケーイチは拳銃を全弾装填し直して安全を確かめるとラスナに渡した。彼女は怪訝な顔をして受け取り、月にかざしてみたりした。


「重いわねえこれ。使ったことないしいらないわ」

「そう言うな、威嚇くらいにはなる。近づいて撃てば馬くらいには当たるかもしれない。左の突起を下まで下げたら引鉄を引くんだ。10発撃てる。ほんとに銃撃ったことない?」

「父の拳銃を撃ったのが一度だけ」

「なら、大丈夫だろう。さあ行け、逃げてしまうぞ」

「わかってるって、いってきます!」

「あっ、それ御守り付いてるんだから、無くすなよ!」


 最後のケーイチの言葉には答えずラスナは走り去った。よほど良い馬らしく、それにラスナはドントールより軽いからみるみるうちに視界から消えた。

 ケーイチは煙草をくわえて疲れた背を伸ばした。


「エミリア、ハルトの経過は?」

「順調だよ。骨も集まってくっつき始めてる」

「ならよかった。エミリア、今日はお疲れさん」

「ケーイチくんも大変だったね。ラスナは大丈夫かな」

「大丈夫大丈夫。ハルトを撃った奴だ、必ず仕留めてくる」


 煙を吐くと風が吹き、高く昇ると月明かりに紛れて消えた。相変わらずこの世界を照らす月は巨大だった。

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