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副・救世主は悩ましく  作者: 小山モーゼル
第二章 救世始
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第14話 爆発

「本当に初めてなんか?お前みたいにキレーな(スケ)が」


 ルーグはいざコトに及べるとなると、性欲がそうさせるのか足取り些かしっかりとし、横に固くラスナを抱いていた。ラスナはラスナで、この破廉恥野郎をこれから存分に叩きのめせると、額の血管を膨らませながら最後媚を売る。


「そうよ、ルーグさんみたいなつよーい男の方に捧げるため、ずっと大事に取っておいたの。ああこれからが楽しみ!」

「へっへっ、そんなに楽しみか、なら思い出にキツく残るくらい可愛がってやるからな」

「私も思い出に残るくらい()()()()()()()()かな」

「ほう、手管はスーミに仕込まれたか」

「ううん、自前よ」


 幹部の居室が並ぶ棟に誘われて、ルーグの部屋には乱雑に、所狭しと強奪された調度品が豪奢で目を見張った。粗末な部屋には似合わない美しい絵画にティーセット、高級ワインウィスキーの空瓶がゴロゴロと。


「どうだいこれもすごいだろう」

「ほんと、呆れちゃうくらいすごいわ」

「これからもっとすげえもんを見せてやる。こっちに来な」

「いやーん、私初めてなのよ、ランプを消して。月明かりで十分よ」

「洒落たこと言うじゃねえか。ほら」


 ランプの火を吹き消し、窓から月光が射し込むだけとなった。ルーグはベッドに座って服を脱ぎ始め、背に立つ少女の殺気には気づかない。ラスナは怒気燃える顔に、少々下品だが拳を鳴らした。ルーグはこれまでの人生でよく聴いてきた喧嘩前の音に動きを止め、ようやく不審を抱き振り向こうとした。


「おいなんだ今の音。まるで拳を・・・」

「その通りよこのヘンタイ!」


 一発喰らわせて、酔ってできないだろうが反撃の隙を与えず首を絞め、壁に何度も頭をぶつけた。強靭な首でまだ言葉を絞り出す余裕がある。


「て、てめ、なにを、騙した・・・」

「ハジメテっていうのは本当よ、あんたなんかにあげないってだけで!あ、そうだ」

「ごぶっ!」


 まだ中身のあるウィスキー版を取ると逆さにして口に突っ込み注ぎ込む。内臓全てを焼き尽くし、空になった瓶を頭にお見舞いした。反対の壁に投げ飛ばすのも忘れない。ルーグの身体は上を下への大騒動、ぐっちゃぐちゃのグチャについにノックアウトされて口から泡を吐き、反吐まで気絶したまま溢れさす。ラスナは吐瀉物を目撃して、自らも沸き上がる吐き気をなんとか抑えつつ部屋を出た。ランプの側にあった移火の束も忘れない。


「まったくあのスケベ、まだケーイチの方がよっぽどマシよ。さて、武器庫に行って火を点けなきゃ」


 ケーイチから伝えられた武器庫への順路を明確に辿り、廊下の影から歩哨を確かめた。二人、彼らは酒を供されなかったのか酔ってはいないらしく、腑抜けた顔で立っていた。マスケット銃を持っていてお誂え向き、牢への土産はあれでよかろう。


「たいへんたいへん!ルーグさんが!」


 飛び出したラスナは気を引くべく大袈裟に慌てるフリをした。歩哨は顔を知っていて彼女が幹部の情婦として連れて来られたと疑いを持たず、我らが第二幹部に何があったのかと、小銃を両手に持ち直した。


「どうした!」

「私、ルーグさんについて部屋に行ったら、誰かが窓から入ってきて、それで襲いかかってきたの!なんとか私だけは逃げ切れたけど彼が危ないわ!」

「なんだと!おい、行くぞ!」

「わかった!」


 歩哨はラスナは放っておいたままルーグの部屋へ向かおうと走り出した。武器庫歩哨の任務があるのに二人して駆け出したのは迂闊なのだが、これまでこのアジトに襲撃をかける大胆な奴は、団創設以来一人もいなかった。非常時には仕方のないことだがラスナにとって両方とも背を向けてくれたことはありがたく、哀れな二人は即刻餌食になる。


「えい!」

「ぐえっ!」


 華奢に見える身体に秘められた大きな脚力で高く飛び上がると、ラスナは両脚で歩哨のうなじを打撃した。相当強く急所を打たれたためすぐに気絶し、ルーグほどの首回りは持たなかったようだ。素早く小銃と弾薬、鍵を取り外し、吊るしてあった長剣も手に入れた。


「粗末な剣ね。ま、なんとかなるでしょ。それじゃ鍵を開けて、移火を・・・」


 武器庫を開けると火薬弾薬の樽が並び、剣に小銃が大量に立て掛けられている。火薬樽を片っ端から倒して周り、中身をぶちまけ、武器庫の外まで一筋火薬を撒いて十分距離を取った。最後火薬筋の端に火を点けた。これでよし、もう武器には目もくれず一目散に逃げる。間も無く大爆発の轟音がアジト全体を揺らした。


 武器庫の爆発を合図にすると取り決めてある。アジトの外100デール付近で身を潜めていたハルトとエミリアは火の手を確認すると馬に飛び乗った。エミリアの背にはカービンや大剣他ケーイチとラスナの武器等が背負われている。


「うまくいったみたいだ、いくよ!」

「はい!」


 落ちないようにしっかりとハルトの胴に腕を回し、数分そこらかからずして正門前、慌てふためく歩哨は騎兵の突撃に気づくとすぐに撃ってきた。だがそれよりも早く、ハルトの背中越しからエミリアの腕が伸びていきなり石壁が出現する。切り出したばかりのような綺麗な壁に銃痕の模様づけ、歩哨は何が起きたのかわからない。エミリアの出現させた石壁の手前に馬を停めると二人は壁の上に飛び乗った。


「エミリア!」

「それ!」


 今度は頑丈な木箱がいくつも階段状に現れた。歩哨はまたもや驚き、突如製錬された階段を駆け上がる敵の姿を茫然と見逃した。我に帰って二人と同じように石壁と階段を登ろうとしたが、手を掛けた瞬間全ては消える。エミリアは作り出すだけではない、作った物を消滅させることもできた。


「ありがとう、疲れてない?」

「平気だよ、今階段上った方が体力使ったかな」

「毎度エミリアの力には驚かされるよ、さあ二人を助け出して討伐しよう!」

「うん!」


 勇んで二つの影がアジトに躍り込んだ。アジト内の混乱は一層増していく。

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