第1章『2』
「もう1ヶ月かぁ…」
入学から1ヶ月が経ち、大体の人は部活に入り活動している。
僕は未だにサッカー部に入る勇気もなく、ずっと悩んでいた。
「…遥っち、変な顔してんねー?」
「…わ、!ごめん…」
「1ヶ月って…もしや、彼女?!」
「違うよ…!」
「えー、まぁいいや、報告書早く終わらせよー」
「そうだね…」
僕は今、同じクラス委員長の清水日向さんと報告書を書いている。
クラス委員長の役目で、毎日放課後に1日のクラスの様子をまとめて提出するものだ。
「運動部は元気だなぁ、私みたいな美術部はあんな動けないよ…」
外ではサッカー部が練習試合をしている。
僕はその光景を、毎日羨ましそうに眺めるしかできない。
「あ~!洋平!お前やっと帰って来たか!」
「ごめんって、今日から頑張る」
「頼むぞ~、期待の新人なんだからさ!」
起きな声がグラウンドに響き、教室まで聞こえてきた。
久々に参加する様子の男の子が加わり、練習試合が再開した。
「…凄い。」
一目で見ただけでは分からない筋力、キック力は想像を超えた。
彼が蹴ったボールは他の人の脚を抜け、味方へと上手くパスが回る。
その間にゴール前に移動すればパスが回り、そのまま勢いよくシュート、ゴール。
綺麗だ。他の誰よりも輝いていて、美しくて、何より…
「おーい!遥っち!」
「…へ?」
「さっきから何ぼーっとしてんのー?」
「え、あ、なんでもない!報告書終わったし、僕が提出しておくね!」
「そう?じゃあ、お願いねー」
清水さんが教室を出て、またグラウンドを見る。
「あの人、誰なんだろう…」
僕は、その人に恋をしてしまった。