第6話 敗北とリベンジを決意します
クラナが戻ってくるまで暇なので周りを眺めて待っていた。すると依頼板の前で依頼内容を吟味している女性冒険者に目が止まった。
女性冒険者はウェーブがかったロングヘアーをしているのだが、頭の上からは犬の耳が飛び出しており、時折ピクピクッと動いている。そして腰下にはフサフサな犬の尻尾がリズミカルに揺れている。
犬の獣人さんだな。この町でも獣人さんは珍しくない。隣国が獣人の国なので交流も盛んに行われている。
俺が目を止めた理由はケモミミだからでは無い。確かに生でケモミミを見れてテンションは上がりました。しかし、俺の目を奪ったのには別の理由があるのだ。
彼女の装備は下は短パンに上は革の防具と軽装なのだが、何よりも革の胸当てが前へと飛び出している。
「バ・・爆乳だな・・・」
俺は思わず呟いてしまった。
その革の胸当ては絶対に特注品だろとツッコミたくなるほどだ。
これは俺のエロチートの出番だな。
よし!っと軽く気合いを入れると俺は周りに聞かれないように小さく唱える。
「・・解・・析・・・」
『対象とのレベル差が大きいので解析に失敗しました。』
非情なアナウンスが流れた。
ここまでのワクワクと盛り上がった気持ちは一瞬にして粉砕されてしまった。
「そんなバカな・・・もう一度だ。」
俺は諦めない心で再度小さく唱える。
「・・解・・析・・・」
『対象とのレベル差が大きいので解析に失敗しました。』
再び無慈悲なアナウンスが流れた。
俺は立ったまま茫然自失としている。
まさか俺のエロチートに弱点があったなんて・・・
俺はあまりのショックにしばらく動けずにいた。
「ガルドさん、お待たせしました。」
クラナが袋を持って戻って来る。
俺は名前を呼ばれてハッと我に帰った。
レベル差ってどれくらいまでなら解析できるんだ?
俺は非戦闘職のクラナなら大丈夫ではないかと考え。近づいてくるクラナに聞かれては困るので、心で念じてもスキルが使えないかやってみた。
クラナを見ながら解析したいと心で強く念じる。
『・・解・・析・・・』
『対象とのレベル差が大きいので解析に失敗しました。』
おっ!念じるだけでもスキルを使えたぞ!
しかし、またしてもこの結果か・・・
「こちらが8個分の素材です。中身を確認されて行かれますか?」
クラナはカウンターに袋を置いて微笑んでくれる。
「いや、クラナはしっかり者だから中身の確認はいいよ。」
俺はそう答えながら代金を財布から取り出しカウンターに置く。正直、数えるのとか面倒だしね。
「ふふふ、ありがとうございます。」
クラナが会心の笑顔を見せてくれる。
とっても可愛い。
「それよりもクラナ。聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「はい。なんでしょうか?」
「クラナってレベルはいくつぐらいなの?」
俺はレベル差の検証がしたくて直球で聞いてしまった。
「私のレベルですか?今は15だったと思いますけど。私のレベルがどうかされましたか?」
しまった・・・レベルを聞く理由を考えていなかったな。そしてクラナのレベルは意外と高かった。
「いや、俺もゴブリンを楽に倒せるぐらいにはなった方が良いのかなって思ってさ。」
俺は咄嗟に理由を捻り出した。
「そう言えば昨日は大変でしたね。ゴブリンに襲われた挙句に雷に打たれるなんて・・・」
クラナが哀れみの目を俺に向けてくる。
「そうなんだよ。それにしてもクラナは意外とレベルが高いんだね。戦闘職じゃないのに10を超えているなんて、すごいんじゃない?」
俺は疑問に思った事を聞いてみた。
「そうですね。私達ギルド職員は冒険者の方々と接する事が多いですので、少々のトラブルなら自分で身を守れるようにとギルドマスターが時々指導してくれているんですよ。」
クラナは少し困り顔で答えてくれた。
確かに、ギルドには酒場も併設されているし、冒険者の中には荒くれ者のような輩もいる。備えておく方が賢明だろう。
「そうかぁ。爺さんもちゃんと考えているだね。」
「ふふふ、ガルドさんもマスターに鍛えてもらいますか?」
クラナが悪戯っぽく笑う。
「え、遠慮しておくよ。俺はゆっくりとマイペースに鍛えるから・・・」
子供の頃、爺さんに少しだけ指導されたのを思い出した。あんなスパルタな訓練は俺には無理だ。
「ふふ、気が変わったら言って下さいね。」
クラナになら指導されたいものだ・・・
「まぁ、変わらないと思うけどね。爺さんにはヨロシク言っておいて。」
俺は素材の入った袋を受け取るとクラナに見送られながらギルドを後にした。
「レベル上げしないとなぁ・・・」
このままでは折角のエロチートが宝の持ち腐れになってしまう。
俺はレベルを上げてからクラナにリベンジする事を勝手に決意した。