第49話 遺品
木箱に魔力を流すと一瞬だが虹色に淡く光ったように感じた。
「おっ、空いたのか?」
木箱の蓋を開けてみる。
すると中には腕輪と小さな羊皮紙が入っていた。羊皮紙は手紙のようだ。
ガルドへ
この木箱の秘密に気付く程には成長したようじゃのう。
お前が更なる成長を願うのならば、この腕輪を使うと良い。
今のお前ならば使い方は分かるじゃろう。
お前の成長を願ってはおるが、強き力には、それ相応の危険も秘めておる。
その事を忘れるでないぞ。
「爺ちゃんの手紙だ。」
爺ちゃんとの思い出が懐かしいな。
こんな物を遺していてくれたなんて、うちの爺ちゃんもなかなかカッコイイ事をしてくれるね。
さてと、この腕輪は何なのだろうか?
使い方は分かるだろうって事は。
『解析』
魔導の腕輪
常に特定の属性魔力を流し続ける魔導回路が仕込まれた腕輪。
「なるほど。」
解析でどの属性か分からなかった事と爺ちゃんの手紙からすると、たぶん光属性なんだろうな。そうだと嬉しいけど。
腕輪に魔玉をセットする。
見た目に変化は無いが、持っている手には魔力の波長を感じられた。
「これが光属性の魔力かな?」
しかし、光属性の魔力の波長は習得出来なかった。
絶対魔力感を持っている俺にも、この波長は理解出来ないのだ。
何と言うか、ふわふわと不安定で掴み所がない感じなのだ。
プリズムのように色が変わり、ノイズで音程が乱されているかの様に感じられる。
「これを習得するのは骨が折れそうだな。」
一朝一夕では無理そうなので、気長にやっていくとしよう。
腕輪は無骨なデザインだが、おそらく銀で作られており、表面には魔導文字が刻まれておりカッコイイと思う。
左手に腕輪を装備する。
しばらくはこれを付けて生活する事にしよう。
「さてと、夜も遅くなってしまったし、寝ようかな。」
この散らかったガラクタ達は。
明日、サラにも片付けを手伝ってもらおう。
「うん。そうしよう。それじゃあ、おやすみ、トラちゃん。」
その夜は、懐かしい昔の夢を見た気がした。
次の日、サラに怒られたのは言うまでもない。
爺ちゃん直筆の手紙を見せてやり、機嫌を直してもらい。
ガラクタ達の整理を手伝ってもらった。
「師匠、これは何ですかね?」
「何だろ?解析してみて。」
丸い鉄製のボード、ラウンドシールドみたいな品をサラが抱えている。
「師匠!これも魔導具みたいです。風の魔力が動力のようです。」
「へぇー、動かしてみるか?」
魔玉を手渡すと、サラは中央の魔導回路にセットした。
「じゃあ、起動させますね。」
すると、円形のボードから風が吹き出される。
サラが手を離すと、地面から僅かに浮いている。
「師匠!浮いてますよ!!」
「あぁ、しかし埃が凄く舞うな。」
埃が目に入りそうなので細目で見ていた。
「あっ、ここに足のマークがありますよ!この上に乗るんですかね?」
「やってみるか?」
サラが恐る恐るボードの上に乗る。
「師匠!見てください、浮いてます!!」
「うん。浮いてるね。」
「凄いですね、これ!って、キャ!」
サラはバランスを崩して見事に転んだ。
豪快に尻餅をついて倒れた拍子にワンピースはめくり上がり見えてしまった。
そう、パンチラである。
男子の憧れ、ラッキースケベの王道。
あのパンチラである。
爺ちゃん、良い物を遺してくれてありがとう。
サラは慌ててワンピースの裾を整えて、赤面したその顔を俺へと向ける。
「師匠、見ました?」
「ん?なにが?目に埃が入ったよ。」
「本当ですか?」
「うん。何かあったのか?」
「べ、別にそれなら良いんです!」
「そっか。」
「この魔導具は危険なので封印しておきましょう。」
サラはそそくさと片付けの作業に戻った。
目を瞑れば先程のパンチラが回想出来る。
ん?そう言えば、サラは褌ではなかったな。
「そう言えば、サラはいつ買ったんだ?」
「えっ?何をですか?」
「さっきの下着だよ。王都にいた頃から持っていたのか?」
サラの顔が真っ赤に染まっていく。
恥ずかしさなのか、怒っているのか。
それとも両方なのか。
「っか。」
「ん?何て言ったんだ?」
「師匠のバカーーーー!!」
サラの咆哮が響き渡った。
この後にサラの機嫌を直すのに1日かかりました。
もちろん残りの片付けも1人でやりました。
工房の掃除もしました。洗濯もしようとしたけど、阻止されました。
夕食に奮発したハンバーグでやっと機嫌を直してくれました。
年頃の女の子って難しいよね。




